自分は星を始めるにあたって、やはり図鑑などに載っている美しい星雲・星団の姿を見て、こういうのを実際に望遠鏡で見てみたいなと思ったものでした。
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で、中一の時にミザールのH-100型を買ってもらい、月を見て感動、木星や土星もずいぶん小さいな、と思いながらも何とか制覇、で、本来の目的の星雲に移って行くわけですが、どうにも見えない。こんなはずではないが、と思って調べたところ、どうやら図鑑の天体写真は長時間露光により、あのような姿に写っていることを知るわけです。さらに藤井旭著「天体写真の写し方」を買って、その天体写真の世界の型にはめられていきます(笑)
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(右は当時のバイブルのひとつ、リック天文台の「新天体写真集」)

さて、その後、双眼望遠鏡や大口径ドブソニアンによる眼視が中心となりながらも、少し天体写真を再開したのが2016年ごろでしょうか。そのころの作例がこんなかんじ↓
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( 14cmF2.9 fl=405mm ISO1600 2分露出を4枚合成 明るさ・コントラスト・彩度調整 バックグラウンド補正 ビクセンSP赤道儀によるノータッチガイド EOS KISS X2)

もちろんこの程度ではフォトコン入選なんか絶対無理、ぐらいにアマチュア天体写真家の作品は驚異の進歩を遂げていました(上のリック天文台の写真集もはるかに凌駕するレベル)。で、どうやればそういったトップクラスの画質を得られるか考えて見るに、もちろん高価な機材も必要でこれは何とか購入するとしても、合計露出時間が数10時間とかいうレベルになっている+事後の画像処理に要する時間も尋常ではない、という状況を考え合わせると、時間的制約の多い自分には実行が難しい分野になっているな、とやがて悟るわけです。

その後、電視観望という強烈な「時短要素」を持つ自分にピッタリのジャンルに出会い、あっと言う間にそっちにハマって行くことで個人的には一件落着(?)し、現在に至っています。
ami 8s 43stack
(電視観望による網状星雲。8秒露出を43スタック。画質は天体写真に及ぶべくもないが、約5分でこの画像が得られ、天体写真と比較すると投入する時間と労力が段違いに少なくて済む)

しかし、やはり天体趣味で一番人気のある分野は天体写真であることは、自分が星をはじめた40年前から現在に至るまで変わっていません。

そこで現在のように、相応な機材投資とたゆまぬ努力が必須となった天体写真に、名だたる写真家のみなさんがどのようなモチベーションで取り組まれているかに興味が出てきました。

ちょうど、天リフ超会議、ガチ天の一日目が終わった後のZoomでの懇親会で天体写真を撮る理由について、さる高名な方の意見を聞くと
「天体写真の方法論を通じて人と交流するのが楽しいんであって、人とのかかわりがなければたぶんやってない」との事。
さらにその方が「天才」と認める、新進気鋭の天体写真家の方も
「仲間とああでもない、こうでもない、と交流しながら技術を向上させていくのが楽しい」
とのことでした。
自分も常々、「星を通じて知りあえたた方々が一生の宝」と公言していますので、なるほど! 天体写真もやっぱり人なんだ! と一定の納得をしました。

そして、それを裏付けようと思い、Twitterでアンケートを実施。

タイトルは
あなたはなぜ天体写真を撮るのですか?


選択肢は
①天体写真仲間と試行錯誤しながら向上するのが楽しい
②自己ベストの撮影結果が得られた瞬間が最高
③フォトコン入選など他者基準をクリアするのが楽しい
④写真を人に見せたりWeb上で称讃されるのが最高


ま、いわば①の優勝を想定した出来レース(笑)
101名もの方が回答してくださいましたが、その結果が・・・・
あなたはなぜ天体写真
なんと、②の自己ベスト派が過半数を超える圧勝!
③がほとんどいないのは入選経験者の絶対数が少ないだろうから当然として、①も④もどちらかと言えば少数派だということがが明らかになりました。皆さんあくまで自分を基準としておられるのですね。
さらにですよ、この4つの中からは選択できないという、言わば「自由回答」の方々が続々とコメントを入れてくださるという、全くの想定外の事態に!
自分のステレオタイプな理解が思いっきり破たんする結果となりました(笑)。

せっかくですので、コメントでいただいたそれらの貴重な意見、天体写真家の皆さんのモチベーションを列記したいと思います。

あなたはなぜ天体写真を撮るのですか?

撮影地でコーヒー飲んだりカップめん啜ったりするためですね!

何と、撮影を肴にコーヒーやカップめんを楽しむのが目的!


撮るのがすきであって、結果はあまりどうでもよく過程が成果。仕事では許されないやつ。


結果からの開放、自分はあくまで好きに撮っていきますよ、と!


んー、どれか選ぼうかとしましたが、どれも違ってて選べなかったです。撮影をやっていた10年前であれば「目の前の景色を残しておきたくて撮影」かな。
今は360カメラθでのちょい撮りだけなので「過ごした時間の記憶を呼び覚ますための記録」かな。(天体写真ではないと言われそうw)


深い意味での「記念撮影」、やはり瞬間、瞬間がプライスレスな価値をもつ自分だけの時間ですね!


以前、撮影してた頃の気持ちで投票してみましたが、三番目の「フォトコン。他人基準?」の項目が0(コメントいれてくださった当時)なのが不思議ですね。

3番目が少ないのは、やはり単純にフォトコン入選者の方の閲覧がほとんどない、って話のような気がします。


どれか選ぼうとしましたが、実はどれでもあってどれでもないかもです。では何かな〜と考えましたが、私は広い宇宙の何処かにいるであろう地球外知的生命体の存在を夢想しながら…かもしれません…(^_^;)ナハハ。

我々は決して宇宙における孤独な存在ではない、の体感のためですね!


探査機の画像を通してしか間近に見ることができない世界が、確かに実在することを自分の機材で確かめることができる喜び…でしょうかね。

自分で確かめないとリアリティがない、その手段を持つことの幸せも感謝の一言!


正直に告白すると、画像処理をしたいから、だったりします。

これはプロの視点ですね。素材のデータから最高の結果を出すためのストイシズムが感じられます!


うまく該当するのがありません

ほんと申し訳ありません、わたくしの貧困な発想のテンプレート選択肢でした。


麗なものを画像として残したいから。誰かのためではないかな?

自分のためではなく人類の共有文化としての天体写真を残す!


デバッグのためww

プロの視点その2。実験主義とも言えますね、運用や機材パフォーマンスの検証としての天体写真。それ以上でもそれ以下でもない、と、シブ過ぎ!


果てしなく遠く、途方もなく巨大な光景を自分の目で見て、自分の手で撮ることがただ楽しいからです

自らの手で主体的に宇宙にかかわることを純粋に感じる、ですね!



さて、さらに眼視派の方からもご意見が!

自分自身に、 Q.なぜ天体写真を撮らず、Naked eyeで光子を捉えるのか? と問いました A.遠くからやってきて消えそうな光が愛おしく思えるから との回答に至りました

眼視派の根幹とも言えますね。センサーやディスプレイを介さず、宇宙からの光子を直接自分の網膜で捉えるというライブ感最重視!


天体写真を撮らない自分にあてはめると「なぜ天体観望をするのですか」になるのかなと思って考えてみたのですが…分かりませんでした。(えー…)

これこそ最高の自然体。「そこに星があるから!」


どうでしょう、この骨太なポリシーの数々。天体写真(眼視観望)へのモチベーションは天文ファンの数だけある、という印象でした。本当にこういう多様性がこの趣味の奥深さを作っているのだと思います。

やはり天体写真は永遠に不滅です!

これからも天文趣味で一番人気のジャンルとして末永く続いていくことでしょう。

あ、それから、他にもいろんなモチベーションをお持ちの天体写真家の方がいらっしゃると思うので、コメント欄に入れてくだされば大変勉強になります!