電視観望でも天体写真でも長焦点の対物を使った方が天体の細部を表現する上では非常に有利なのですが、flが長くなればなるほど導入・追尾その他諸々に要求される精度が跳ね上がるため、システムや個人の運用方法によって使用可能な焦点距離の上限というものが定まって来ます。自分の環境ではVIRTUOSOやAZ-GTiでの電視観望における運用限界はfl=600mmくらいまでと体感していました。

しかし、VIRTUOSO架台がプレートソルブ機能の導入で一挙にパフォーマンスを上げており、これまで以上の長焦点での運用に耐える可能性も出てきました。今回はそれを検証していきます。
IMG_3463
20cmF10のC8シュミットカセグレンfl=2000mmを試します。組み合わせるCMOSカメラは4/3”センサーのASI294MC。17.3×13mmなので2000mmでの実視界は0.5°×0.37°となります。この狭さだとノーマルのVIRTUOSOやAZ-GTiでは対象天体の導入が非常に困難です。

まずはM31。当然のことながらSynScanで指定しただけでは導入はできないので、魔法のコマンド「プレートソルブ後、マウントと同期(R)」で一発導入!
m31 4s gain300 150stack
(m31 4s gain300 150stack no filter)
とりあえず画角の狭さに起因する導入の問題はクリアしたようです。
中心部の強拡大気味になってますが、暗黒帯の構造なども出てき始め、まずまずの見応え! 

しかし、この後M33とかNGC7293とかNGC253とか順番に行ってみるわけですけど、
・・・? プレートソルブでも導入できない? いやいや、普通に恒星を指定すると完璧に視野に入ってくるなあ・・・そうか、これはあれか、

F10だから暗くて見えないだけか・・・

例えば前回使ったF3.1と比べると明るさは約1/10になっているわけなので、暗い天体は無理かも。当然と言えば当然の結果と言えるでしょうか。

そうなると輝度の高いもの限定になります。もう遅い時間でオリオンも昇ってきていたので、8月に冬を先取り、でM42.m42 4s gain300 130stack
(m42 4s gain300 130stack
no filter

ここで次の問題発生。VIRTUOSOの追尾が少しずつズレて露出を4秒以上にできないし、ブラックアウトも激しくなってきました。たとえば上の画像は少しトリミングしているのですが、実際のフル画面はこういう状態。
m42 4s gain300 150stack
ただでさえ画角が狭いのに視野の左側が欠けて来てるのが痛いですね。実際の日周運動とは違う方向(ここでは画面の右方向)に追尾ミスしてるということになります。おそらく架台の水平やアライメント設定のわずかなずれ、重量級鏡筒搭載でのたわみによる水平・垂直の直交が変化、などが総合してこうなっているのではないか、と。
でも、これらは例えばfl= 400mm程度の焦点距離では全く問題にならないレベルなのですよね。
やはり、2000mmでの運用は相当シビアだということでしょう。

それにVIRTUOSOお約束のバックラッシュ(ただしこれは自分が勝手に素人調整しているのが原因かも知れません)吸収にも時間がかかり、導入直後の星野は2秒露出でも下のような状態。
nagare
こんな流れた星ではプレートソルブが認識しませんから、それなりの点像になった画面を得なければなりません。速くバックラッシュを吸収するべく手動でモーターを上下左右に操作してみましたが法則性はつかめず、結局止まるまで待つことになり、それに5~10分。導入で時短できても追尾が始まるまでに大いなるタイムロスが発生します。

何とか他に電視観望可能なのはないかな? でM78
m78 4s gain300 70stack
(m78 4s gain300 70stack
no filter
かなり苦しいですね(笑)。

さて、今回はあーでもない、こーでもない、っていろんなセッティングとか操作方法を試していた結果、午前0時から午前4時30分までの成果がわずかに上の3画像です。これじゃ時短どころか(笑)。とにかくネックは日周運動の追尾が(高いレベルで)うまくいかない、ってことですね。まあ、経緯台で追尾している時点で結局視野が回転するので、落としどころの妥協点を持ってこれなかった、ということだと思います。体感的にこの「VIRTUOSO・プレートソルブ・システム」の適正焦点距離はfl=1000mmくらいまででしょうかね?

まあ、もともとコスト削減の権化みたいな素晴らしいパッケージングで激安価格を実現しているVIRTUOSOにfl=2000mmの経緯台ノータッチガイドを求める時点で

相当に無茶な要求

ですので、この結果は仕方がないかと(笑)

あと、AZ-GTiで同じ事(fl=2000mm運用)が可能かどうかやってみたいとは思っています。ちょっとバランス崩れが心配ですが・・・

**おまけ**
この日は非常にシーイングがよく、C8による眼視(SVBONY 7-21mmズームアイピースの7mm側 286倍)で、木星(強烈な彩度とウジャウジャ)・土星(カッシニ全周楽勝)・月面(ハイライト部のクレーターも良く見える)なども楽しめました。
↓全然シャープに写ってないけどiPhoneでのコリメートで撮った写真
tuki2