ASI482MCについて、本日のテーマは2つ

1 SharpCapでの最適Gain
一般的にCMOSカメラではGainを上げれば上げるほどノイズが増え諧調がなくなります(しかしながら各CMOSの個性によってはそう言いきれない部分もある)が、かといって低いGainで使うと淡い部分を炙り出すのが難しくなりますので、電視観望においては「ノイズが目立たない範囲でできるだけ高いGainを使う」ことが重要になってきます(例えばASI294MCでは最大Gain570でもそれなりに使えますのでかなり有利)。
そこで、ASI482MCにおいてGainをいくつで使うのが電視観望において最適か?

2 ASIStudioにおけるパフォーマンス
SharpCapはZWOからすれば「社外ソフト」にあたり、純正としてはASIStudioというアプリが存在します。これを使うのがおそらくZWOの推奨だと思いますので、純正アプリでのパフォーマンスをSharpCapと比較・確認する必要があります。


検証に使用した鏡筒はSP140SS改F3.1、架台はAZ-GTiです。月齢16、さらに水蒸気が多く透明度はかなり悪いです。また雲が多く晴れたり曇ったり。晴れ間を狙っての検証になります。ちなみに、SharpCapは前回の8173から8185に更新しています。


さて、それではまず、1の最適Gainから。前回、Gainをいろいろ変えて見て200あたりだとノイズはかなり少なくなるのが分かったのですが、これだと低照度部分のデータは存在するものの画像処理で持ち上げる操作が難しく、その結果、見かけ上「低感度」のように見えてしまいます。482には294を超える高感度パフォーマンスを求めているため、何とか294の常用Gain「500」と同じぐらいの値で使えないか? と考えました。

そこで、まずはGain500にて
M17 1秒露出 gain500 110スタック QBPフィルター
m17 1s gain500 110stack qbpfilter
1秒露出でこれだけ写るのですから、やはり高感度なのかなとは思いますが、バックグラウンドの粗さがちょっと厳しいですね。
これはM31でも同様
M31 1秒露出 gain500 100スタック QBPフィルター
M31 1秒露出 gain500 100スタック QBPフィルター
Gain500のまま2秒まで露出を延ばしてみます。
NGC7293  2秒露出 gain500 52スタック QBPフィルター
NGC7293  2秒露出 gain500 52スタック QBPフィルター
やっぱりGain500はバックグラウンドのノイズが多くて実用性がちょっと? ですね。
さらにNGC7293が露出不足な感じもしましたので、この後Gain500のまま4秒露出まで伸ばしてみたところ、画面全体がサチレーション? を起こして真っ白にホワイトアウト。よく意味の分からない挙動を示してしまいました。

そこでGain400まで下げて4秒露出。
NGC7293  4秒露出 gain400 30スタック QBPフィルター
NGC7293  4秒露出 gain400 30スタック QBPフィルター
これなら破綻しませんね。ならもっと露出も延ばせるかな? で8秒。
NGC7293  8秒露出 gain400 33スタック QBPフィルター
NGC7293  8秒露出 gain400 15スタック QBPフィルター
ライブスタック中に雲が通ったのか、ちょっとバックグラウンドがムラになりましたが、Gain400なら8秒露出でも破綻しないようですね。

じゃ、少し刻んでGain450の4秒露出はどうだろう?
NGC7293  4秒露出 gain450 20スタック QBPフィルター
NGC7293  4秒露出 gain450 20スタック QBPフィルター
おっ、落としどころはここかな? ではそのままスタック枚数を増やして中央拡大。

NGC7293  4秒露出 gain450 131スタック QBPフィルターNGC7293  4秒露出 gain450 131スタック QBPフィルター
450がギリギリ使える最大Gainになるでしょうか。しかし500と450で挙動が全く別物になる、という新たな謎が生まれています。

ともあれ、ASI482MCの電視観望における最適Gainは450と暫定的に決定!(あくまで個人の感想です)
M27  4秒露出 gain450 50スタック QBPフィルター
M27  4秒露出 gain450 50スタック QBPフィルター
バックグラウンドのノイズ、DSOの階調とも、まあまあ、ですかね。

***

ここで雲が拡がってきて、検証はいったんブレーク。
雲越しに月を観望
tuki2
さて夜半過ぎに再び晴れました。

***

ここで、ZWO純正アプリ、ASIStudioにスイッチします。
ASIStudioは非常にシンプルな操作で分かりやすいですね。ただその分細かい設定ができず、Gainに至っては「高・中・低」の3段階のみ。しかし、この「簡単操作」で482の高感度パフォーマンスが余すところなく発揮されればむしろSharpCapからこちらに乗り換えてもいいくらいの勢いですが・・・どうだ!?

網状星雲  30秒露出 gain高 8スタック QBPフィルター ASIStudio
網状星雲  30秒露出 gain高 8スタック QBPフィルター ASIStudio
えっ? コントラストのパラメーターを最高まで上げても薄っす! 30秒露出でこれだけ?

ちなみにSharpCapに切り替えると・・・
網状星雲  4秒露出 gain450 35スタック QBPフィルター SharpCap
網状星雲  4秒露出 gain450 35スタック QBPフィルター
4秒露出なのにこっちの方が断然写っている! ちなみにこれのスタック枚数を増やしていくと・・・
網状星雲  4秒露出 gain450 100スタック QBPフィルター
網状星雲  4秒露出 gain450 100スタック QBPフィルター
底辺に赤いアンプグローみたいなのが出るんだけど、まずまずの鑑賞価値。

ばら星雲も、ASIStudioだとこんな感じになってしまいます。
ばら星雲  10秒露出 gain中 20スタック QBPフィルター ASIStudio
ばら星雲  10秒露出 gain中 20スタック QBPフィルター ASIStudio
Gainを中にしたら上下のノイズや全体のちりめんノイズがますますひどく・・・

これがSharpCapだと
ばら星雲  8秒露出 gain450 10スタック QBPフィルター
ばら星雲  8秒露出 gain450 10スタック QBPフィルター
ノイズももっと素直な感じですよね。スタック枚数を増やすとこうなります。
ばら星雲  8秒露出 gain450 176スタック QBPフィルター
ばら星雲  8秒露出 gain450 176スタック QBPフィルター
まあ、これもまずまず。電視観望においてはSharpCapの圧勝ですね!

しかし、ひょっとしたら、わたくしのASIStudio操作スキルが低いだけかもしれません。ZWOにはぜひともASI482MCがカタログデータどおりの高感度・低ノイズを発揮するASIStudioでの最適パラメータと作例を公開してもらいたいところですね!

というわけで、ASI482MCのSharpCap使用における個人的最適Gainは450、露出時間は4~8秒に決定しております。そのセッティングでいくつかの天体を電視観望しました。

M33  4秒露出 gain450 150スタック QBPフィルター
M33  4秒露出 gain450 150スタック QBPフィルター
やっぱり今日は透明度悪いですね。淡い部分全然出てくれなかったです。さらに下の方の赤いノイズも健在・・・

NGC253  4秒露出 gain450 100スタック QBPフィルター
NGC253  4秒露出 gain450 100スタック QBPフィルター
中央拡大で下の赤いノイズを回避(笑)。バックグラウンドのムラは月光が鏡筒内に入ってのものか?
NGC891  4秒露出 gain450 140スタック QBPフィルター
NGC891  4秒露出 gain450 140スタック QBPフィルター
おなじく中央拡大。

馬頭星雲  8秒露出 gain450 117スタック QBPフィルター
馬頭星雲  8秒露出 gain450 117スタック QBPフィルター
何とか階調を出そうとしたけどこれが限界。この辺でダイナミックレンジの狭さがだんだん印象付けられてきました。

勾玉星雲 8秒露出 gain450 70スタック QBPフィルター
勾玉星雲 8s gain450 70stack qbpfilter
淡いですね。これでもかなり強調してるんですよ。こういうのを見ると「今一つ高感度じゃない」って思ってしまいます(笑)。

それでは、輝度差の大きいあの天体はどう出る・・・?
M42 8秒露出 gain450 20スタック QBPフィルター
M42 8秒露出 gain450 20スタック QBPフィルター
あー、もうこれは予想通り。全然階調出せないです。


というわけで、ASI482MCをSharpCapで使う場合、Gain450でそれなりのパフォーマンスを示しますが、期待された高感度や低ノイズは体感できず、さらに階調も乏しいというのが現状です。

今後、ひょっとして画像処理アプリやドライバの更新によって性能が向上する可能性はありますが、自分にとってCMOSカメラはブラックボックスのため、完全に他力(笑)。果報を寝て待つしかない状態と言えます。

面白くないけどしばらく放置して様子を見るしかなさそうですね・・・はからずも、主体性を持ててこそ趣味は面白い、というのを教わることになりました(笑)