完全に毎週月曜日更新が恒例となった、「週刊SharpCap」ですが、もちろん11月1日にも更新され、8315となっております。完全に、更新→晴れ→検証が強迫観念の域までに達している当ブログですので、もはや自らの意思とは関係なく望遠鏡がセッティングされるわけです(笑)。
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今回もASI482MCの検証に使用した光学系はSP140SS改、14㎝F3.1 シュミットニュートン、架台はAZ-GTiになります。
この日は、雲のない快晴、月もない条件でしたが透明度がかなり悪く、限界等級も2等が見えるか見えないかくらいでした。

金星をモニターしながら暗くなるのを待ちます。
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結局待ちかねて薄明が残っているにもかかわらず強引にM8です。とりあえずGainは抑え気味の300で。

M8 Gain300 4秒露出 63stack QBPフィルター
M8 Gain300 4秒露出 63stack QBPフィルター
対象も西に低く、さらに薄明が残った状態でしたが、QBPの威力でそれなりに浮かび上がってくれました。

で、おもむろに”通常モード”のGain450に上げます。
M8 Gain450 4秒露出 30stack QBPフィルター
M8 Gain450 4秒露出 30stack QBPフィルター
はい、出ましたね。高輝度部分の飽和。高Gainの時のお約束です(笑)。

冷静に(?)あまり輝度の高くないM16に移動。
M16 Gain450 4秒露出 62stack QBPフィルター
M16 Gain450 4秒露出 62stack QBPフィルター
これも予想通り、こういう対象なら破綻しません。

一応Gain300に落として階調が豊かになるかを比較。
M16 Gain300 4秒露出 60stack QBPフィルター
M16 Gain300 4秒露出 60stack QBPフィルター
Gainを下げても強調をうまくやれば高Gainとあんまり変わらんですかね。ならGain低い方が高輝度部分が飽和しない分汎用性が高いってことでしょうか。
ただし、輝度の低い部分を持ち上げて強調する作業は高Gainのほうがやりやすいですので、迷うところではあります。

網状星雲みたいな対象ではやっぱりGain450でやった方が強烈に炙り出せました。
網状星雲 Gain450 4秒露出 100stack QBPフィルター
網状星雲 Gain450 4秒露出 100stack QBPフィルター 直前のダーク
けっこうきめ細かい構造が見えて来ているんじゃないかと思います。

ここで、ふと思い立って画像処理アプリをASILiveに切り替えて見ました。
網状星雲 Gain高 5秒露出 100stack QBPフィルター ダークなし ASILive
網状星雲 Gain450 5秒露出 100stack QBP ダークなし ASILive
ASIliveだと超新星残骸の描写は少し弱くはなりますが、コントラストを上げることでかなり強調はできますね。ただ、ダークフレームのキャプチャや減算の方法が分からなくて、上下に盛大なアンプノイズが残ってしまいました。しかしASIliveを使う気があんまりないので、今一つ突き止める気も起こらず(笑)

こないだ本体周辺の薄いガスを電視観望で初めてゲットして盛り上がった7293。
NGC7293 Gain300 8秒露出 30stack QBPフィルター
NGC7293 Gain300 8秒露出 30stack QBPフィルター
今日は南の方薄雲ってるみたいで今一つ。ライブスタックも早々に切り上げました。

安定の高輝度天体、M27。
M27 Gain450 4秒露出 90stack QBPフィルター
M27 Gain450 4秒露出 90stack QBPフィルター
条件が悪くてもそれなりに行ける定番中の定番ですね。

さてここで、本日のメイン、M33に行きます。前回、AZ-GTiの追尾不調でスタック枚数を延ばせなかったので、今日は基本ポリシーの「時短」は取りあえず置いておいてじっくり時間をかける予定。

まず、10スタックではこんな感じですが
M33 Gain450 16秒露出 10stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 10stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 30stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 30stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 64stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 64stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 127stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 127stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 220stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 220stack QBPフィルター
このようにスタック枚数が増えるにしたがって、SN比が上がり強調処理もやりやすくなって細部が浮かび上がってきます。
最後はもう少し中央拡大して終了。
M33 Gain450 16秒露出 225stack QBPフィルター
M33 Gain450 16秒露出 225stack QBPフィルター
これで所要時間1時間。当方のポリシーである「時短」からは離れますが、準リアルタイムの電視観望でM33をここまで浮かび上がらせることができるというのは、一種隔世の感がありますね。

それにしても、デュアル・ナローバンドでありながら、そこそこの露出をかけさえすれば連続スペクトル天体でさえもここまで浮かび上がらせるQBPフィルター(Ⅱ)のパフォーマンスも恐るべし、と言えましょう。

ここで調子に乗って、この勢いで銀河シリーズ行くぜ、とばかりにM74。
M74 Gain450 16秒露出 66stack QBPフィルター
M74 Gain450 16秒露出 66stack QBPフィルター
あれ? 全然ダメなんやけど? で外へ出て空を見上げて見ると、もはや1等星しか見えない見事な薄曇り(笑)。というわけで本日終了となりましたとさ、めでたし、めでたし(?)

今後は、482の高感度パフォーマンスにより、電視観望でこれまでより一段階進んだ天体の表現ができたらいいな、と思っています!


**追記**

このように私自身の電視観望史上最高の画質をもたらしてくれているASI482MC、記事のタイトルとは双反するようですが、

ASI482MCをSharpCapで使用してDSOの電視観望をおこなうのはまだお勧めではありません。

その理由は

1 Gain500以上で2秒以上露出をかけるとホワイトアウトする

2 Gain450では高感度CMOSっぽい挙動を示すが、450の状態で高輝度天体を見ると明るい部分が飽和する。Gain300程度では使いやすいが暗い部分の強調にかなり微妙な操作が必要でとても疲れる

3 Gainが同じなら露出時間を変えてもダークフレームが使いまわせるが、少しでもGainが違うと盛大にホットピクセルが発生。さらに気温が2~3℃違うとたちまちダークが合わなくなる。実質的に過去のダークが使用不能なので、頻繁にダークを撮影して更新する手間が必要

など、もの凄くクセが強くて使いずらい状態だからです。もちろん基本的にSharpCapに起因する現象かとは思います。何人かの人に純正のASILiveで使ったときの挙動で語るべき、とも言われました。しかし、かと言ってASILiveで実際に482を使った実用例が示されているかと言うと、そんなことは一切なく、アイテムを提供する側が誰もASI482MCの挙動に責任を持っていないのが現状ですね。これを何とかしようとしているのはサードパーティであるSharpCapだけだと思います。
ま、482は惑星用カメラだから目的外使用しといて文句言うんじゃねえ、と言われればそれまでなのですけどね(惑星用カメラの割にはピクセルサイズが大きくて画素数が少ないですが 笑)

Player-Oneの新製品ラッシュが「圧倒的完成度+目的外使用への応用力」で提供され続けている現状を見ると、ASI482MCはあまりにも「生煮え」の状態でリリースされた、と言わざるを得ません。以前、ASI462MCを買ったときには素晴らしい期待通りの性能に大喜びしたものですが、もうZWOに対してその信頼感はなくなってしまいましたね。

もしASI482MCをASILiveでものすごい性能を発揮させるメソッドが提供されたら、わたくしの考えもたぶん変わると思うのですが、誰もそんな面倒くさいことはやんないでしょう(実は提供されていてわたくしが知らないだけの可能性もあります)。正直、他のCMOSカメラでの挙動が482では一切応用できないので実機を実働させた情報でないと全く意味を持たないのです。

ASI482MCはの個人的な評価はまだ「買ってはいけない」です。Gain600の状態でのラフな使い方でも実用性を持ってきた日がはじめて「お勧めCMOS」となる日だと思っています。しかしその日が来るかどうかはSharpCapの開発次第。頑張ってください、今後も期待しております!