30㎝のフローライト・・・そんなものが実存するのか? という疑問を吹き飛ばすようにそれは忽然と御園に現れました!
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東京から参加の眠り猫さんの30㎝F10フローライトです。

まず、驚異の30㎝フローライトレンズですが、これは何と20世紀末ソ連崩壊のどさくさで放出(?)された30㎝フローライト硝材を21世紀初頭に入手され、さらにドイツで研磨してもらったもので、もともとは3枚玉で話をすすめていたものの仕上がって来たら2枚玉になってた(眠り猫さん談)そうです。

鏡筒はIK技研製、当初赤道儀に載せていたそうですが、2018年に昭和機械製の架台にリニューアルされた様子が天文リフレクションズでも特集されています。

上の記事にもありますが30㎝F10、3mあまりの鏡筒にもなりますと人力では無理なのでクレーンで吊っての組み立てになります。米国とかでは時々ありますが日本ではほとんど見たことがないですね。少し時間が戻りますが、スターフォーレスト御園での釣上げの模様はこんな感じでした。
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手前の銀色のはドローチューブ、白いのは鏡筒ですね。あまりの巨大さと、これらの望遠鏡部品とクレーン一式、がスバル・レガシィ・アウトバックに搭載され、しかも組み立て撤収も一人でおこなうという運用方法にも驚愕! しかしその代償は大きく、組み立てに数時間を要するということでした。

本当に見ているだけで大変で、正直、自分でしたら一回の組み立てで心が折れてお蔵入りする自信があります(笑)

さて、その大変な組み立ても終わり、眠り猫さんはいったん休憩して土星が昇ってくる午前2時過ぎから稼働されるということでしたので、それまでの時間帯はいろんな望遠鏡を見て楽しみ、午前2時過ぎぐらいに、utoさん、ほそさんとともに訪れました。

高度は低いものの土星がスターフォレストの屋根の上に姿を見せています。眠り猫さんの観望スタイルは独特で、低倍率から少しずつ倍率を上げて行ってそれぞれの見え方を味わっていってもらうというもの。今回はDSPに向けて、きたかるさんが製作された”ラベンデュラ120mmプロトタイプ”にての25倍から始まります。
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(これは昼間の画像です)

おお、とにかく明るいですが、土星は小さい(当たり前)
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あと、カール・ツアイスとか、値段を聞くのも恐ろしいような高級アイピースが次々とローテーションされ倍率が上がって行きます。

ちょっと聞き逃したのですが、最終的には何かの5mmで600倍だったでしょうか?
おう、これなら土星がかなり大きく見えるし、とにかく明るいぞ・・・と思ったまでは良かったのですが、なんだかおかしい・・・カッシニの隙間でさえ見えないしピント合わそうとしてもどこで合うか分からない・・・これはよっぽどシーイングが悪いのか? で非常に残念でした。

いったん眠り猫さんに礼を言って芝生広場に戻り、ほそさんの50㎝”白ドブ”
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utoさんの45㎝”light_bucket18”
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で土星の像を確認、確かにシーイングが悪いけどピントの山はちゃんと掴める・・・30㎝ではなんで? と疑問が残ったまま1日目の晩は終了。

翌日の昼間、フリーマーケットが終了してから、すぷーんさんと共に訪れたところ、眠り猫さんより「ドローチューブがたわんで下ってたようで未明の土星は光軸が合ってなかった。製造元(IK技研?)に問い合わせて手前のアイピースアダプターの方でスケアリング調整する手立てをおこないました」と伺い、あーよかった、やっぱり昨日(と言うか今朝か)のあれは30㎝フローライトの実力じゃなかったんだな、と一安心。

ここでスターフォレスト御園定番の「鉄塔」を見せてもらいます。
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この時は、調整の甲斐あって「鉄塔のボルトまで見える」(眠り猫さん談)という状態。また土星が昇って来た翌日未明に拝見に伺う旨伝えて、いったん失礼しております。

DSP2日目の晩は「晴れたと思えばべた曇り」の繰り返しで、途中モリアオガエルの産卵観察で盛り上がったりしてたのですが、午前2時頃utoさんらと共に再び30㎝フローライトの場所へ。

眠り猫さんスタイルで倍率が少しづつ上がって行くのももどかしく(笑)、最終5mm600倍で土星を見せてもらいます。

あれ!? 昨日と同じや! カッシニの隙間でさえ見えないのだが・・・で、惑星観望については、またまた釈然としない状態。

せめて何らかの形で30㎝フローライトのパフォーマンスを、と思い、もう少しシーイングがマシと思われる天頂付近のM57環状星雲やベガ(ディフラクションリング狙い)をリクエストさせていただいたものの、「天頂の方に向けるとピントの合わせなおしが結構な”重労働”で・・・惑星専用機ということでやらせてもらってますので・・・」との事。こちらも不発となるとともに大型機材の運用の難しさを改めて教わることとなりました。以上にて、万策尽き果てて離席(泣)

どうやら、この時は相当にシーイングが悪く、直後に亮さんの25cmをお借りして土星を見たところやっぱりシーイングの影響でカッシニとかは見えませんでした。

というわけで諸々の条件が重なり、30㎝フローライト本来のパフォーマンスを味わうには至りませんでした。その残念さはまさに「断腸の思い」ですが(笑)、これはまた次の機会のお楽しみ、ということで。

30㎝撤収の様子です。
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再度クレーン登場! やっぱり大変や。とても自分にはできる気がせん(笑)。

噂によれば、DSP一週間後の週末に行われた福島の「第10回 星の村天文台星まつり」にも眠り猫さんの30㎝フローライトは登場したようですね。星の村ではベストのコンディションで見られたでしょうか? 条件がiいい時は「まるで絵画のように見えます」(眠り猫さん談)だそうですから・・・

しかし、これほどまでに運用が大変な機材の観望機会を頻繁に提供するバイタリティとホスピタリティには心より敬意を表したいと思います。

眠り猫さん、ありがとうございました! また30㎝を拝見できる機会が持てましたらよろしくお願いいたします!