すぷーんさんの自作伸縮式鏡筒です。
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六角形の3つのユニットがアルミパイプで連結されていて伸縮が可能な構造となっています。

主鏡はD=100mm、fl=831mm、「その筋の人」(笑)ならこの数字だけで分かると思うのですが、flがこういう細かい表示になっている場合はまず間違いなく自作鏡面です。
すぷーんさんが面の整形をおこなっている模様はTwitter上で拝見しておりましたが、修正行き過ぎて球面に戻り、またやり過ぎてリセットというのを数時間インターバルでおこなう苦労が他人事ではなく、まさに手に汗握る思いでした(笑)。

しかし、そのかいあって1/8λ相当の高精度鏡を完成され、実用に供しておられます。星を見せてもらいましたが、F8.31の口径比も相まって、さすがに納得の鋭像! 自作鏡が像を結ぶ充実感は研磨の苦労を味わった人にだけ許される醍醐味と言えますね。

さて、この鏡筒ですがどうして先の方にこんなにパイプが余っているかと言うと、

D=70~165mm, FL=350 1600mm の範囲で様々な主鏡に対応できるようにしてある

からです(!)

実はすぷーんさんは中部大学の学生で、大学の課外研究活動(中部大学天文台)

の学生サポーターとして望遠鏡製作をしており、その一環として彼を含めた9名ほどが鏡面研磨に取り組んでいるのですが、それぞれが自作した鏡をテストできる汎用鏡筒が必要ということで製作されました。

これがその学生たちによる研磨途中の鏡材です。
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どうです? この無限の可能性を秘めて横たわっている鏡材の数々は。ちむどんどんしてきませんか?(笑)

さて、わたくしがそうしてこのような画像を持っているかと言うと、実はDSP会場に向かう途中で、中部大学に寄り道してきたからなのです。
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で、何で寄ったかと言うと、死蔵し続けていたハッブルオプティクス製45㎝F4.1ミラーをお譲りするべくのお届けのためです(笑)。わたくしは果たせませんでしたが、おそらく来年のDSP2023では中部大学の皆さんによる、いろいろな面白機能を備えた45㎝望遠鏡が拝見できると思います。今から楽しみですね。楽しみと言えば、中部大学で最近入手した60㎝の鏡材(ホントは1mやりたかったとか)も見せてもらいました。

60㎝の凹作等はこれでおこなうようです。
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さすがに60㎝完成までには少し時間がかかるかとも思いますが、こちらも期待が膨らみます!

さて、向こうの方では何気なくC11が分解されて横たわってます。
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これでシュミットカメラを製作する予定らしいのですが、補正板のスペックが分からなくてパワーのマッチした球面鏡の製作がスタート出来ないそうです。
「やったことないけど主鏡と補正板を重ねてフーコーテストすることで測定しては?」と無責任に(笑)発案しておきました(もしC11の補正板のスペックをご存知の方がいらっしゃいましたら是非お知らせください!)

この後、中部大学天文台のドームの方も見学させてもらいました。

入り口入るといきなりTOA150のお出迎えです!
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タカハシの2本の鏡筒と共に同架された、SVBONY SV48P、9cmF5.5が「同格」を主張しているようでほほえましいですね(笑)
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この望遠鏡は天文台副台長の先生の私物とのことでした。

さて、ドーム内のメイン望遠鏡は・・・
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ミューロン300! 渋! これは渋い!

設置した方のコンセプトが只者じゃないですね。徒に大口径カセグレンを求めるのではなく、シーイングによる条件の歩留まりを優先した中口径、さらにドール・カーカムであるミューロンは副鏡が凸球面で光軸中心を持たないために、副鏡が非球面のクラシカル・カセグレンやリッチークレチアンと比べ光軸調整がやりやすく、良いコンディションに保ちやすい。

加えて、ドームの1階で見た望遠鏡を支える鉄柱がミューロン300にはオーバークオリティ―とも言えるぶっとさ!
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これはもっと望遠鏡がもっと大口径にスイッチしたとしても対応可能な剛性に見えますね。
はっきり言って、ここまで使う立場で構築されたシステムはあんまり見たことないです。
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ミューロン用と思われる段ボール製のバーティノフマスクもいいですね! 残念ながら精度の高いオートフォーカサーの導入で今は使ってないそうでしたが(笑)。

こちらはスコープテックコーナー
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タカハシカラー? と言われた例の奴も(笑)。

防湿庫には各種CMOSカメラやアイピース
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この辺の小物も非常に充実していましたね!

というわけでDSPと言うより、中部大学天文台の紹介になりましたが、すぷーんさんを始め、今後この環境から若手アマチュア天文家が輩出されていくのでしょうか?

私見になりますが、望遠鏡自作こそ若いアマチュア天文家には最適の分野ではないかと思っています。チャレンジと創意工夫による問題解決、これほど楽しいことはありません。特に中部大学天文台では、ベテラン天文家でもあまり取り組まなくなった鏡面研磨がおこなわれているところも素晴らしいですね。この分野が充実してくることで市販されない特殊光学系製作への期待も高まります!

望遠鏡自作はもう滅びるのみかと思っていましたが、その未来は意外と明るく、想定外のうれしさがありました。

ATMはまだ終わらんよ!