Nikon TC-E3ED Telephoto Converterです。
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箱の「年季」からしてどっかの在庫品でしょうかね。オークションにて送料共2千円ちょっとにて入手しております。

これはもともとビデオカメラ等のレンズ先端にねじこんで望遠の役割を果たすもので、光学系としては「ガリレオ式」になっています。TC-E3 EDの場合倍率は3×ですね。

14年くらい前からこういったテレコンを2連装にし、倍率2×前後の超低倍率双眼鏡を作るのがアマチュア天文家の間で流行し、これを「テレコン・ビノ」と呼んでいました。
KIKUTAさん(たぶん「テレコン・ビノ」の名付け親)のサイトでその頃の作例を見ることができます。

当時、「テレコン・ビノ」のような仕様・用途の双眼鏡はそれまでは、唯一、笠井の「ワイドビノ」があるのみで、一部のマニアに唯一無二の支持を受けていました。ワイドビノは、もともとオペラグラスであったロシア製の小さな双眼鏡に笠井トレーディングが星座観察の用途を見出して輸入・販売したものですが、その先見の明には驚かされますね。ワイドビノは現在では「ワイドビノ28」という名称でリニューアルされたものを入手することができます。


で、当時なぜテレコンレンズを流用した「テレコン・ビノ」の自作がそんなに流行ったかと言うと、ワイドビノ並みの性能が圧倒的に安価に製作できる(CD-20Tを使った場合材料費2000円程度)、もしくはシャープネス・良像範囲・見かけ視界などでワイドビノを上回る性能が得られる(Nikon TC-E2を使った場合)などのメリットがあったからです(わたくしもいろいろ作りました)。

特にNikonのTC-E2を使ったテレコン・ビノは圧倒的な高性能を示し、現在に至るまでこれを超えるテレコンは出てないと思います。

(ただ、現在では笠井に「スーパーワイドビノ36」というのがあってこれがTC-E2に遜色ない性能だそうです)

さて、少し前置きが長くなりましたが、そこでTC-E3EDです。名称から言って究極のテレコンと思われたTC-E2の上位互換? という期待が高まります。
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このテレコンはもともとカメラde遊ingさんが見出してきたもので、これを2つ連結したテレコン・ビノを実際に製作しておられます。

ただし、TC-E3EDは外径が75mmくらいありますので、そのまま横に並べても目幅75mm。よっぽど目幅が広い人でもないと合いません。ただ口径75mmの3倍ですので瞳径は25mmあり少し光軸は外れますが、光量だけでいえば目幅55mmくらいでも使える計算になりますね。これを実際に覗いた感じはどうなるかはカメラde遊ingさんが報告されています。

そこで自分は、このTC-E3EDを「テレコン・ビノ」ではなく単眼鏡の「テレコン・モノ」として使ったらどうかな、と考えました。

個人的に、約1.8倍(実測)のCD-20Tを一つだけ持って「テレコン・モノ」として使うことがあるのですが、これでも肉眼よりかなり暗い星が見えるので、光害地でも星座がたどれるんですよね。ビノより圧倒的にコンパクトなのでポケットに入れて置けるし、最近では「モノ」で使うことが多いです。

で、やっぱりこう言ったものは倍率が高いほど限界等級が上がるので、3倍だと1.8倍よりかなり暗い星が見えるのじゃないか? と期待を持ってのことです。

さて、「テレコン・モノ」として常用しているCD-20TとTC-E3EDの大きさ比較。
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相当大きいですね。コンパクトと言う意味ではCD-20Tの圧勝ですが、それを上回る限界等級の向上があるか? 晴れ間を見つけて実際の星で確かめました。

結論から言うと

TC-E3EDのほうが少し星の数が増える

という、期待通りと言うか、ごく当たり前の結果(笑)でした。

ただ見かけ視界はCD-20Tの65°前後に比べ、50°くらい? と少し狭いです。
星像はシャープでこの辺はさすがNikonですね。このシャープさも限界等級向上に寄与すると思います。
倍率は公称通りの3×ぐらいになってるようですね。

以前、KenkoのKAT-300(3×)でテレコン・ビノを作ったのですが
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これは公称3×であるにもかかわらず実測2.5倍程度です。これとTC-E3EDとの比較では違いがよく分からなかったです。もっともKT-300はビノになっている有利さも有るかも知れません。

まあ、今回は雲の間から微光星を見ようとした検証方法なので実際のテレコン・モノ(ビノ)の用途とは少し違いますね。普通だと星座が見えないような光害地で、星座がたどれて感動するかどうかが個人的な評価の基準です。その意味では「3倍、50°」だと見かけ視界17°くらいだから、大きい星座だと収めるのには少し厳しいかも。

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さて、当方ブログを訪れてくださる方には釈迦に説法かと思いますが、せっかくの機会(?)ですので、テレコン・ビノ(モノ)が受けやすい誤解を少し挙げて見たいと思います。

×口径50mm(TC-E2の場合)の集光力で暗い星が見える

TC-E2の場合2倍ですので瞳径が25mmとなり、観察者の瞳が7mmまで開いたとしても集光力は14mm相当しか期待できません。ただしそれでも限界等級は上がりますし、瞳径が大きいことで覗きやすく目幅にも寛容になります。

×瞳が7mmまで開いても集光力は14mm相当でしかないから50mmの口径なんて意味がない

ガリレオ式の場合、対物が大きいほど見かけ視界が広くなりますので、口径は集光力には貢献しませんが見かけ視界を拡げるという部分で機能します。