前回、FMA135にてSV505Cの電視観望をおこないましたが、赤外ピンボケと途中の天候不良によって十分な検証を行うには至りませんでした。今回は反射系の対物にて電視観望をおこなってみます。
まずはこれ。ケンコー・ニュースカイステージ改です。

これは76mmF3.7のニュートン式にいろいろ改造を加えたものですが、口径は70mmに絞ってあり、電視観望ではいろいろなレデューサーをつけて使ってます。今回は0.77×相当のレデューサーをつけてF3にした仕様。架台はAZ-GTiによる自動導入追尾、CMOSカメラはSV505C、画像処理はSharpCap4.0という組み合わせです。
この日は晴れているものの透明度が悪く時折雲も通り、肉眼で2等星が見えるか見えないか? という条件でした。
まずは北アメリカ星雲を対象に、ノーフィルターから。
北アメリカ gain250 4s 40stack no fiilter
北アメリカ星雲じたいはうっすらと見えますが、はっきりしませんね。SV505Cはピクセル2.9μmなのでそのままでは高感度にはならない感じですが、やはり赤色光の感度はあまり高くないようです。さらに、これはセンサーではなく光学系の問題ですが少し星像が膨らんでいる気がします。赤外ピンボケを防ぐために反射にしたのですが、レデューサー部分で赤外ピンボケが発生してしまったのでしょうか?
そこで、UV/IRカットフィルターを入れてみます。
北アメリカ gain250 4s 40stack uvir cut fiiter
さらにSVBONY CLS フィルター、これは赤外域はカットせず可視光を一部制限して光害の影響を減らすフィルターです。
北アメリカ gain250 4s 43stack svbony cls fiiter
続いてQuadBPフィルター
北アメリカ gain250 4s 40stack Quad BP fiiter

QuadBPのようなデュアル・ナローバンドフィルターを使った場合、HⅡ領域がかなり強調されてくるはずなのですが、そんな感じはないです。やはりHaあたりの帯域での感度はそんなに高くない、と考えるべきでしょうか。
CometBPフィルターではどうか
北アメリカ gain250 4s 40stack Comet BP fiiter
星像をシャープにするためには帯域を絞るフィルターを使う必要がありそうですが、IMX464センサー最大のメリットである赤外感度の高さを生かすには、何とかノーフィルターのフルバンドで使いたいのですよね。というわけで、赤外ピンボケの原因? であるレデューサーを外したらどうかな? とか考えました。
この後、北アメリカ方面が曇ってしまいましたので、止むを得ず、晴れていた南天に移動して取りあえずM8をレデューサーあり、CometBPフィルターのままで
M8 gain250 4s 40stack Comet BP fiiter
ここでレデューサーをはずし、fl=280mmの「直焦点」。さらにノーフィルターにします。
M8 gain250 4s 20stack no fiiter fl=280mm直焦点
やはり。レデューサーを使わなければ星像もそんなに膨らまないですね。赤外ピンボケはレデューサーによるものと結論付けてよいでしょう。IMX464では、通常問題にならないレデューサーの赤外ピンボケが圧倒的な赤外高感度によって顕在化している、と考えることもできますね。
しかし、北アメリカみたいな天頂に近い対象とは違って、南天に低いところのノーフィルターではやはり光害を拾うようでバックグラウンドがムラになっています。CometBPフィルターの光害カット効果がよくわかります。
さて、それでは、赤外ピンボケを起こさない光学系に、ということで鏡筒をSP140SSシュミット・ニュートンに交換してみます。

先のニュースカイステージ改のレデューサーは×0.77と、縮小率としては少し「欲張った」仕様だったのですが、SP140SSの方は×0.87(合成fl=435mm)とそれなりに最適化してあります。こちらでは、ノーフィルターで星像がどうなるか?
M31 gain250 4s 40stack no fiiter fl=435mm
次、M33。
M33 gain400 4s 82stack no fiiter fl=435mm

おお、これも手ごたえ十分! M33からGainを400に上げてみました(最大Gain:650)。Gain250と比べるとバックグラウンドにムラが出やすく、スタック枚数を多くしなければ、それが抑え込めない感じでしたが、あの淡いM33 をわずが4秒露出でこれだけ出すことができるとは・・やはり赤外感度の高さは本物ですね!
さて、それでは秋の銀河シリーズ行きます!
M74 gain400 4s 133stack no fiiter fl=435mm
NGC253 gain400 4s 272stack no fiiter fl=435mm

これは電視観望としては、NGC253の暗黒帯がなかなかよく出ている方だと思います。この日は透明度は今一つでしたが、シーイングが非常に良く。その辺もいい影響を与えてくれたかもしれません。
ここで、思い出したように輝線スペクトル天体のNGC7293を。
NGC7293 gain400 4s 44stack no fiiter fl=435mm
NGC891 gain400 4s 101stack no fiiter fl=435mm
ステファンの五つ子 gain250 4s 60stack no fiiter fl=435mm
M77 NGC1055 gain250 4s 108stack no fiiter fl=435mm
NGC1052他 gain250 4s 250stack no fiiter fl=435mm

表示されるだけでもこれだけ出てきます。「局部銀河群」でしょうか、それぞれ違った形で個性が感じられて非常に面白いです。しかも18等に近いクラスの銀河まで当たり前に捉えるとは・・・電視観望とは言え、その天体検出パフォーマンスは侮れないです!
NGC936 941他 gain250 4s 210stack no fiiter fl=435mm
というわけで、最後の方は「SV505Cで巡る局部銀河群の旅」になりました(笑)。fl=435mmのSP140SSと1/1.8”センサーのSV505Cとの組み合わせでは、いくつかの銀河を視野に納められるとともに、わずか4秒の露出で、これらのやや視直径の小さな銀河でも形の違いがわかり、非常に楽しかったです。このクラスが観望対象にできると非常に数が多くなって時間が追いつかないほど(笑)。
SV505Cはピクセルサイズが2.9μmとやや小さく、可視光域の感度は「中くらい」(ASI294MCに比べると明らかにHⅡ領域の描写では劣る)なのですが、赤外を含めるとピクセルの大きいCMOSカメラを遥かに上回る微光天体の検出能力を示したように思われます。加えて2.9μmなりの高画素数がありますから、これが銀河の細かな描写に寄与している感じでした。
SV505Cはメーカーの位置づけとしては「プラネタリーカメラ」なので、赤外感度の高さは惑星のL画像をシーイングの影響を受けにくい赤外域で撮影するためのものだと思いますが、目的外使用であるDSOの電視観望に使った場合、少なくとも銀河の描写に有利性があるということは言えそうです。
ただ、それを実現するためには基本的に反射光学系を使わなければいけないので、屈折光学系で可視光域を中心に使うような電視観望には向いてなさそうですね。同じ1/1.8”センサーでそういう用途だと可視光の感度が高いASI385MCの方が適性が高いでしょう。
自分が今まで使ってきたCMOSカメラの中では、これまではASI462MCが最強に銀河への適性を示していましたが、完全にそれと同等かひょっとしたら上回るかも知れない性能を示しています。個人的には銀河専用、と位置付けても、お釣りの来るくらいのパフォーマンスですね!
SA505C、さらに検証を続けます!
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