先日の小海星フェスで最大の衝撃と言えばやはりカール・ツァイス・イエナ(CZJ)の、C50/540望遠鏡・E50/540望遠鏡で見せていただいた月面ですが、

それまで見たことのないような月面の表現に驚いたものです。

で、もちろんこの望遠鏡が欲しくなるのですが、何分かなり以前の製品ですのでタイミングが合わないと入手することは困難のようです(手放しても良いと思っている方おられましたらご連絡ください)。特にE50/540の方は滅多に出ないとの事。そこで上の記事にもあるように、「ハーシェル・ニュートン(中央無遮蔽) + BelomoやNikonのルーペアイピース(シュタインハイルの3枚玉)」であの見え味を再現することはできないかと考え、
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(Nikon10×ルーペのアイピース 最近はBelomoよりこちらの方が多いです)

手持ちの5cmF17ハーシェル・ニュートンでそれなりの手ごたえを得ました。
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しかしこの5cmF17は製作してまだ10年ですが、早くも自作鏡のメッキがかなり劣化しています(残念ながら依頼した業者が信頼できいない筋)。
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(白い点はかびではなくアルミの腐食と思われます)

相当に反射率が低下しているはずですが、驚くべきことに月面や木星は非常に鮮やかに見えます。しかし、光量が劣る土星では「解像はしてるみたいだけど暗すぎてよくわからない」状態になっていました。

また鏡筒の構造にも色々甘いところがあり、これは手直しするより新規製作した方がいいかな? という感じで、その時に思い及んだのがAli Expressで2000円台で販売されている、D=76mm fl=900mm F11.8の鏡です。

ハーシェル・ニュートンは比較的小口径でFの暗い鏡を使うことで軸はずし状態でも星像をレイリーリミット内に収める、というものですが、76mmF11.8のままではおそらくその条件を満たすことができません。しかし、最悪でも5cmF18、上手くすれば6cmF15くらいまで絞れば実用になるはずです。

ここに

Aliの鏡を使ってカール・ツァイス・イエナのパフォーマンスに迫る望遠鏡を作る

というロマンが発生します(笑)

さらに、絞りの形を下図の水色の部分のようにすれば

主鏡絞り
(この図では斜鏡やプリズムで90°光路を曲げてないとした場所に接眼部を置いてます)

コマを発生してシャープネスを阻害する黄色の部分の光束をカットしつつ、光量を最大限に確保することができるはずです。この「変形絞り」が像に悪い影響を与えるようであれば、通常通り円形の絞りにシフトすることもできますしね。

さらに、光量確保と言う意味で、斜鏡ではなく10mm角のプリズムを使うことにしています。
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ホルダーもプリズム用にモデリング。
接眼部画像1+2
反射鏡は最高でも95%、良くても90%くらいの反射率ですが、プリズムは理論上100%の全反射な上に経年劣化がないのも大きなメリットですね。ガラスブロック通過で収差が発生するのがデメリットですが、Fが暗いため入射角が浅く、また10mm角という小型のプリズムを使いますので、その影響は最小限に抑えられると想定。

ちなみに、中村要のオリジナル・ハーシェル・ニュートンもプリズムを使用しています。

というわけで「ロマンを載せて」AliからD=76mm fl=900mmの鏡が届きました。
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うむ、スペックどおりの印字。実測したところ、鏡の径は78mm、メッキ面の径は77mmだったのでちょっと得した気分。

さて、このスペックの鏡、「きれいな球面」に決まっているのですが、一応フーコーテスターにかけてみます。
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さて・・・
Fiuugs9VQAEm4DW
どおゆう・・・こと?
中央の焦点距離が889mm、周辺が895mmと、6mmも焦点位置が違う二重球面じゃないかね!
さすがにFが暗くてもこのレベルは使えない・・・いったい、どうしてこんなことに・・・このスペックの鏡は普通にストロークしてたら球面になるのに・・・いや、いったん球面にしてから中央をゴッソリ彫り込んだ?

しかも、「中央穴」の部分も中心に行くにしたがって深く(焦点距離が短く)なっており、この部分は全く使えません。だから周辺絞るなどやっても不可。
こう言う異形の鏡、たとえばダウエル製品だったとしたら喜ばれるんでしょうけど(笑)

いったん返品の手続きを取ったのですが、元が安いため返品しても送料引くと1000円くらいしか返って来ないためアホらしくなって、結局その手続きもキャンセル。
いやいや久々に大陸クオリティを満喫しましたわ。
しかし、この鏡が使えないと今回の製作自体断念せざるを得ませんし、そもそも、AliでCZJに挑むというもともとのコンセプトがあきらめきれず・・・・

半日くらい考えてましたが、結局、わたくしの出した結論は

さらにD=76mm fl=900mm の鏡を3枚発注する

という攻めの姿勢を貫くもの(笑)

この製品の中にはまともな球面のものもあるのか? あるとしたらその歩留まりは? あるいは全て二重球面に作られているのか? などに少し興味が出てきたものです。まあ最悪、合計4枚の二重球面を所有することになる、という悲喜劇の可能性もありますがね。まあ、言うても1枚2500円やしね。いや、経費の問題じゃないか(笑)

とにかく、リスクを冒して攻め込んだシベットの、明日はどっちだ!?