76mmハーシェル・ニュートンの製作中なのですが、

肝心の76mmF11.8主鏡のちゃんとした球面鏡が入手できずに止まっております。上にもあるように76mmの鏡を3枚、Aliにて1枚約2,500円で発注したのですが、注文をその業者に一方的にクローズされ(向こうが発送しなかったことによる注文キャンセル)、それを指摘したら再オーダーせよとのことで、しかしすでにその鏡は1枚約3,300円 に値上がりしているという状態です。当然こんな理不尽は承諾できなく、以前の価格で買えるよう交渉中ですが、なかなか要領を得ず、長期戦の様相を呈しております。まあ、Aliあるあるですね(笑)。

と言うことで、待つ時間を無駄にするわけにもいかないので、現有の5cmF17ハーシェル・ニュートンを手直しすることにしました。

本来、中村要の設計した「ハーセルニュートン式5センチ反射天體望遠鏡」は軸はずし主鏡の光束をプリズムで筒外に導くものですが、自分の5cmでは普通の斜鏡を使っていました。この位置に鏡・プリズムのどちらを使うはそれぞれ一長一短なのですが、ハーシェル・ニュートンのようなF値の大きい光学系ではプリズムのデメリットが最小になるので、オリジナルに模するという意味も加え、斜鏡をプリズムに交換します。

まず、今使用している斜鏡ですが、かなりメッキの劣化が進んでいて、
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これを反射率(理論上)100%のプリズムに交換することで光量アップを見込もう、というわけです。

プリズムは1cm角の小型のものを使うことでガラスブロック通過の収差発生を最小にします。
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これを納めるプリズムホルダーと、光軸修正装置、接眼部に取り付ける部分などをFreeCADでモデリング。
5cm接眼部1+2
相変わらずモデリングには時間がかかるのですが、だんだん調子に持ってそれなりに複雑なものを志すようになって来ました(笑)。

モデリングさえ仕上がれば後は3Dプリンターがやってくれます。
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とくにこういう小さめのものは3Dプリンターの恩恵が大きいですね。
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(後で気付いたのですがこ上の画像はプリズムの向きが180°反対でした 笑)
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こういう小さな斜鏡金具的なものを手作業で作ると結構大変です。
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5cmハーシェル・ニュートンの鏡筒に取り付け、プリズムの位置をセンターに調整。
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レーザーで光軸調整。
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ハーシェル・ニュートンはもともと軸はずしなので、光軸調整と言うよりは「コマ収差が最小になるように主鏡・プリズムの角度を調整」という作業になりますね。セオリーはありませんが、自分はこういう方法でやっています。

ちなみにこの方法では最初のプリズム(斜鏡)調整の際に主鏡から反射してきたレーザー光で目を射る危険性がありますので、自己責任で行ってください(当ブログでは一切の被害を補償できません)

さて、どうかな。
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この5cmハーシェル・ニュートンは木星や月面など光量の豊富なものは倍率を上げても良く見えるのですが、土星などのようにやや暗いもので100倍を超える倍率を使うと「シャープなんだけど暗くてよくわからない」という状態になります。これが少しでも防げれば、ということでプリズムに交換したのですが、果たしてその効果は? でCartonOr6mm-A142倍で西に低くなった土星を見てみます。

うん、シーイングが悪過ぎてカッシニ確認もへったくれもないが、確かに少し明るくなっているように思える。これは小さく成功しましたな(笑)。もちろん木星や火星のような明るいものは楽勝です。また、プリズムのガラスブロックを通過することによる収差も全くわかりません。

さて、月が昇ってくるのを待って
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月齢20ちょっと前くらいの月面。
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(Nikon10×ルーペアイピース34倍、iPhoneによるコリメート撮影) 

月齢は小海にてCZJE50/540で見せてもらったとき

に近いのですが、あの時みたいに「ホットピクセルのような月面のキラキラ」は見えませんね。もっともシーイングが相当悪いのでそれのせいかもしれません。

下の画像は、まだ斜鏡の時のコリメートですが、この時は比較的シーイングが良く、CZJE50/540で見たのの6掛けくらいにはキラキラが見えていた気がします。さらに欠け際でない明るい部分の細かいクレーターもたくさん見え、なかなか壮観でした。
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こうやって比較すると、わずか34倍のお手軽コリメートとは言え、シーイングが良い時の方が圧倒的に細部が描写されるのがわかりますね。キラキラはシーイングがあまりにも悪すぎると見えない、という仮説を立てることができるかも知れません。

いずれにせよ76mmハーシェル・ニュートンの再開まで少しかかりそうなので、5cmの方のリファインをもう少し続けて見ようと思います。