5㎝F17ハーシェル・ニュートンの主鏡、あまりにもメッキの劣化が激しかったので再メッキしたのですが・・・
打痕
なんかゴミついてるなー、ブロアで吹き飛ばして、と・・・? 飛ばん? まさか・・・ルーペで拡大してみます。
打痕拡大
あ、これゴミやない、傷や! その瞬間、この鏡を磨いた時の数十時間の光景が走馬灯のように頭によぎりました(笑)・・・いや笑い事じゃない。傷というか打痕のようにくぼんでいて、これ自体もメッキが乗ってキラキラしているので、メッキ前の傷は間違いないです。

これ、例えば普通のニュートン式ならスパイダーの影の下に持って来る手もあると思うのですが、無遮蔽が最大メリットのハーシェル・ニュートンなのでそれもできません。一瞬、磨きなおすか、とも考えたのですが、これだけ深いくぼみだと凹作のときの#80とかの砂に戻らないといけないでしょう。もう、一から別の鏡を磨いた方がいいレベル。さらに自作鏡でスペックが特殊なので、代替えに市販を買いなおすこともできない・・・完全に詰みました。

しかし、今さらどうしようもないので鏡筒に入れます。迷光防止のための機構をいろいろとモデリングして3Dプリントしてあるのです。

まずは6㎝の鏡を5㎝にする主鏡絞り
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同心円状のバッフルで迷光を防ぎます。

接眼部対面にはライトトラップ
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プリズムの先にも絞り
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さらにドローチューブ先端にも絞り
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10×10㎜の小径プリズムの採用や絞りの累積により、イメージサークルが約0.7°とかなり狭くなりましたが、中心視野でのコントラストを最優先して思い切り尖がった仕様にしたわけです。で、これらを組んでいくわけですが、やってて全然楽しくないのですね(笑)

まあ、そらそうか。かなり時間と労力をかけ重箱の隅をつつく勢いで凝りまくった数々の迷光防止機構をあざ笑うかのように、大本営とも言える主鏡部分で傷がキラキラと迷光を発しているわけですから・・・

わしは月面のキラキラを見るためにこの望遠鏡を作っているのであって、主鏡をキラキラさせたいわけではない!(笑)

このように表面の傷が光っている場合、その部分をマジックで塗ったほうがいいのでしょうか。でもせっかくの無遮蔽が・・・考えれば考えるほど現実に打ちのめされていきます(笑)

とはいうもののせっかく晴れているので、とりあえず現状で惑星での見え方を確かめておかなければいけません。
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ES5×バーロー+Nikonルーペアイピース、170倍です。
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シーイングは3/5くらいでしょうか。冬場としてはいいほうに思えました。

結論から言うと、今までより明るく、コントラストも増していますね。

これまで暗くてよく見えなかった土星もそれなりの明るさとしっかりした輪郭で見えています。西に低いのでカッシニの空隙はあるかな? くらいでしたが条件を考えるとまずまず。木星はそれよりずっと明るく、模様の濃淡やうねりもわかります。火星も表面模様の濃淡とオレンジ色が鮮やかでした。また、バーローを外してNikonルーペアイピース単体の34倍で見ますと、木星の縞模様が実に濃く見えました。この調子ですと、月面も今まで以上によく見えそうです。

しかし、心の底から喜べません。もちろん、

主鏡の傷がなければもっとよく見えているのではないか

と思ってしまうからですね。おそらく同スペックの傷のない鏡とサイドバイサイドで見てもわからないくらいの違いだと思うし、傷ありでも「これまでで最高」ぐらいによく見えますよ。

でも「自分は究極を求めて思いつく限りの様々な機構をこらしました。主鏡に傷がありますが実用上問題ありません」では全く面白くないのです。うーん、やっぱり完全無欠の鏡で一から作り直さないと「究極」とは言えないな・・・

と言うわけで、おそらく2022年最後の製作が相当不本意なことになってしまいました。2023年は気を取り直し、さらに妥協を廃した別件のハーシェル・ニュートンで、おつりが来るくらいの究極を目指してやんヨ?!(笑)

大丈夫だ、お前はこの敗北よりもっと強い。これからはお前の時代だ
(ルカ・モドリッチ W杯クロアチアvsブラジルPK戦の一人目で止められたロドリゴに対し)