僕が小学生の時読んだ、いわゆる「児童文学」です。1969年(!)の作。
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望遠鏡での彗星さがしに夢中な達也少年が、謎の少女ミカや、漁師の息子洋一、ボートレーサーの杉本さん、ミカの叔母さんの美人歯科医、など多彩なキャラとからみつつある事件に巻き込まれていく話なのですが、設定、ストーリー、どれも素晴らしい。

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時代は戦後復興がかなり進んで、世の中が豊かになり始めた頃でしょうか?
杉本さんなんか元日本軍のパイロットで、戦争で片足を失い、戦後トラックの運転手を経て、モーターボートのレーサー、という経歴ですからね。

しかし、それよりも特筆すべきは、望遠鏡・彗星捜索などに関する考証の確かさです。
達也少年は作品中で反射望遠鏡の鏡面研磨を始めるのですが、それが何と口径5cm!
この点について作者の那須田稔さんにメールでお問い合わせしたところ、お返事がいただけました!
それによれば、この作品の執筆当時、作者の地元静岡で観測されていた池谷薫さんや関勉さんにいろいろ教えていただいたと結果であるとのこと、さすが、納得です。

これは僕の推定ですが、この5cmの望遠鏡はおそらく中村要氏の設計によるハーシェル・ニュートン( D=50mm、fl=800mm ?)



を想定して、池谷さん、あるいは関さんがアドバイスしたのではないかと思います。

・・・・・あ、よくみたら「ハーシェル」じゃなくて「ハーセル・ニュートン」ですね(笑)。

当時、はじめて望遠鏡を作る人が、それを反射鏡の研磨から始める場合、鏡材が普通のガラス屋で買え(作中では直径5cm、厚さ1cmのをミカが勝手にガラス屋に注文していた)、主鏡も球面鏡でよく、副鏡を楕円に整形する必要がない、小口径の「ハーシェル・ニュートン」あたりが現実的な選択になったのではないでしょうか(ただ、現在では鏡面研磨をする人は少なくて、望遠鏡を自作する場合でも反射鏡は買うことがほとんどですので、5cmといった「小口径」の反射望遠鏡が作られることは滅多にないですけど)。


この他にも、星や望遠鏡に関する内容はポイントでさらりと出てくるくらいですが、非常にうまく使われており、作品を説得力あるものにしています。

残念なことに今はもう絶版で、中古でも手に入らないかんじですが、そうやって忘れ去られていくには惜しすぎる佳作です・・・・・と思っていたら、先述の那須田さんのメールによれば、近日再版されるとのこと!

40年の時を越えて甦る名作!・・・・・星の好きな方はぜひご一読ください!
(・・・・ってまだ出てないので、出版されたらまたお知らせします! )

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しかし、こうなると「 口径5cm ハーセル・ニュートン 星と少年仕様 ! 」 あたりも作りたくなってきたな・・・・(笑)