utoさんの「Light Bucket18」45cmドブソニアンです。
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今年は新たに「クロスボウ・プラットホーム」ポンセットマウントが追加され、天体の追尾が可能になっています。
さらに、Light Bucketの特徴である星図台に、カメラを置いての追尾撮影も可能に。さらに用途が広がっています。

このクロスボウ・プラットホームは、軽量コンパクト・大型ドブ搭載可能・リーズナブルと三拍子そろったアイテムで、今全米で大人気になっているようです。

これは、8月に行った、オレゴン・スター・パーティでの一コマ。オライオンのブースにも置かれていました。

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電源は何と、単3電池2本。これで15時間もの駆動ができるようです。驚異の燃費と言えましょう。

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一日目の夜、日没からしばらくはそこそこ晴れたのですが、程無く曇り、参加者の皆さんは早々に「懇談会モード」となりました。
しかし、皆さんが食堂やロビー、各バンガローで討論している間も、わずかながら晴れ間が出たり曇ったりしていたのでした。

これを見逃さなかったのがutoさんです。
「少しでも星が見られる限り、見られるものは全部見る」、というストイックな「utoイズム」に引きずられるように、当方も外へ。
さすがの猛者たちも芝生広場には誰もおらず、晴れ間を探して「Light Bucket18」でいろいろ見始めます。

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( 夜の「Light Bucket18」 緑の光は「光るネームプレート」ですね )

オリオン座に晴れ間が来たときに、M42を見ますが、さすがに渦雲越しにはほとんど見えず、わずかにトラペジウムの台形を確認するのみ。
・・・・しかし、・・・・・! トラペジウムの4つの星に色がついて見えるぞ!

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( 色はかなり大げさにつけています )

4つのうち、一番明るいC星(5.06等)が、カペラのような黄色に、一番暗いB星(7.49等)が赤っぽく見えます。普段、M42を見るときには星雲の色を確認する方に必死になるので、トラペジウムの色までは気づかなかったのな? と思いました。

その後、もう少し雲が薄くなってから、もう一度、自分の「テレギドラⅡ」50cmドブソニアンで見てみると、A~Fの6個の星が見えましたが、今度は比較的明るいA~Dの4つが青白く、暗いE,Fが赤く見えるという状態に。

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あれ、おかしいな、さっきと色が違う、ひょっとしてこれは暗い星が赤く見えているだけかな?
と思い、帰ってから調べたところ、トラペジウムを形作るのは、やはり青白い星ばかりのようでした。

トラペジウムは若い星ばかりの散開星団で、表面温度が非常に高く、
強力な紫外線を出して星間の水素を電離・発光させ、これがM42の電離水素領域(HII領域)となっています(厳密にはM42には暗黒星雲や反射星雲も含まれていますが)。M42のHII領域を電離しているのは、一番明るいトラペジウムCが発した紫外線だという話です。ちなみにトラペジウムの星々はスペクトルで言うとO6~B3、これはスピカやリゲルのような青白い色に相当します。

プレアデスなども眼視では同じような青白い星に見えるのですが、こちらはスペクトルがB6~B8と表面温度が少し下がります。そうなると水素を電離させるほど紫外線が強くないので、星間物質の水素が星の光を反射するのみとなり、反射星雲となります。
水素を電離させられるかどうかの境目は2~3万度くらいのようですね。
光源になる恒星の表面温度によって、散光星雲と反射星雲の違いが生まれているらしいです。

ということで、今回の薄雲越しの観望では、本来は青白い色の星が雲によって散乱され、赤っぽく見える、という夕焼けみたいな現象が起こっていたと思われます。そして、暗い星ほど散乱の影響の少ない赤い光の割合が高くなる、というわけでしょうか。(C星が黄色っぽく見えた理由はよくわかりませんが・・・・・)

しかし雲越しに見ることで、恒星の色が変わってくるのは初見でした。非常に面白かったです。

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( テレギドラⅡで見る )

***

その後、芝生広場にはutoさんと当方の二人しか観望してない状況がしばらく続きましたが、曇ったり一部だけ晴れたりを繰り返しているうちに、だんだんに人が増えて行き、快晴となった明け方には再び芝生広場が人でいっぱいになっていたのは、さすが双望会ですね!

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(月の出を望む双望会参加の面々)