双眼装置は結構な光路長を必要とし( BS双眼装置の場合だと97mm )、シュミカセなどの筒外焦点がいくらでも引き出せる鏡筒では問題になりませんが、ドブソニアンで一般的なFの明るいニュートン式では鏡筒やトラス棒を切断するという荒業を強いられることになります。


( Civet製作の15cmF5アルミ鏡筒 双眼装置使用のため、製作当初からいうと5cmほど短くしています )

しかも、明るいニュートン式では、ナグラーやイーソスなど、補正が強力な重量級アイピースを使わないと周辺像が悪く、極端な話「 星 」に見えません。これだと双眼装置にもフォーカサーにもかなりの負担がかかってしまうし、重量物が鏡筒から突き出しているのも何となく不安です。

これらの問題を一挙に解決してくれるのが、インディゴ式延長レンズです。
http://homepage3.nifty.com/imdiygo/kobo7.html#emsstd

前玉のレンズを前後させることで、バックフォーカス調整が行えるためあらゆる鏡筒にマッチします。
さらに、等倍タイプはコマ成分のカット、1.33倍タイプはコマコレクター機能により、ローコスト広視野アイピースの周辺星像を大幅に改善できるのです。

下の図は、延長レンズ+EWV16mmによる周辺星像改善のイメージです。

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      ( 延長レンズなし )        ( 等倍延長レンズ )         ( 1.33倍延長レンズ )

1.33倍延長レンズでは、「 イーソスをパラコアを介さずにF4.4の鏡筒に付けた状態 」に近い周辺像が得られました。わずかに像面湾曲や諸収差が残りますが、ほぼ満足できるイメージと言っていいでしょう。

これらの結果から、個人的な意見としては、
Fの明るいニュートン式に双眼装置を使うにはインディゴ式延長レンズが必須
と言い切ってしまいましょう!

しかし、この延長レンズは、使用する双眼装置と鏡筒の種類により最適にカスタマイズされる「 ワンオフ 」でもありますので、それなりに製作コストのかかる高価なアイテムになります。
コストパフォーマンスを納得してからでないと、なかなか手を出せないとも思いますね。
おそらく、使用者は、かなり眼視観望の経験を積んでいる人か、天文イベント等で現物の見え味を確認したことがある人に限定されているでしょう。

もし、わたくしの「 延長レンズ+双眼装置 」をご覧いただくことができましたら、このあたりを一考する機会になるかもしれません。興味がありましたらぜひ声をおかけください。

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( 話が長くなってきたので、先日撮った銀河の写真を入れときます。18mmF3.5 ISO400 4分露出 )

このように、延長レンズ+双眼装置のパフォーマンスは素晴らしいものですが、さすがに、2本の鏡筒を持つ双眼望遠鏡の切れ味を上回ることはできません。
双眼装置では光束が「 ビームスプリッター 」という一種のガラスブロックを通過するため収差が発生し、どうしても見え味を落としてしまうんですね( 特に惑星観望時 )。

実際に当方のおこなったテストでも、500倍近い倍率では結像の破綻が始まりました。


中口径以下、特に屈折望遠鏡では、ちょっと無理をしても双眼望遠鏡を製作( または購入 )したほうが明るさ、コントラスト、シャープネス、全ての面でよい結果が得られるでしょう。
双眼望遠鏡の製作が困難になる大口径反射で、初めて双眼装置使用のメリットが大きくなると思います。

とは言うものの、せっかく汎用性の高い延長レンズですので、理屈にはこだわらずいろいろな鏡筒につけて見てみようとは思っています。ひょっとしたら一か月後くらいには


小口径反射+延長レンズ+双眼装置 でのお気楽観望もまたよし!


とか言い始めてるかもしれません・・・・・どっちや!( 笑 )。