ずいぶん以前のことですが、天文ガイドの企画で、シュミカセの補正板を使い、主鏡をF2.2の球面鏡に交換してシュミット・カメラを作る、っていうのがあって、実際に撮影された写真なんかも掲載されていました。
しかし、その時に自分は思ったのです。

補正板と、、もともとついてるF2の球面鏡じゃ作れないんですか?

と(笑)。 F2.2とF2じゃ、そんなに変わらないだろう、と(笑)。

当時は確かめる術もなかったのですが、今では光学シミュレーションソフトというものがあります。
POPSのサンプルデータに20cmF10シュミカセのデータがあったので、これから副鏡を削除し、補正板を主鏡の球心位置に置いてみました。

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そう、これこれ、このレイアウトですよ。20cmF2、やっぱりシュミットカメラはカッコいいなあ・・・・・・

さて、星像のスポットダイヤグラムはどうなっている・・・・・・・?

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うーん、やっぱりか・・・・これはひいき目に見ても全面星像100μm程度ですね。タカハシのイプシロンの10倍です。やっぱり、そんな甘い話はないなあ・・・・・

というわけで、せっかくなので、20cmF10シュミカセの補正板でシュミット・カメラを作る場合、主鏡の曲率をどのように設定すると最適か、をシミュレーションしてみます。

どうやら、主鏡がR888、つまりfl=444mm、F2.22 の時にマッチングが一番よいようですが・・・・・

(以下、スポットダイヤグラム一辺のスケールはいろいろ変わっていますのでご注意ください )
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シミュレーションなので、あくまで皮算用ながら、何と、星像が全面にわたって 5μm! イプシロンの倍の精度です!

しかし、問題は、20cmF2,22なんて球面鏡、自作でもしない限り、ない(笑)。

・・・・! とここで思い出しました。15cmF3の球面鏡を持っていてこれがR900なので、かなり近い。
これでシミュレーションしてみるとどうなる?

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全面5μmとまではいかないけど、10μm、イプシロン並みの値にはなっている!
主鏡より補正板の方が大きく、普通のシュミット・カメラと逆になっているけど、15cmF3、十分実用性のあるスペックで迫ってきますね!

しかし、実は上のスポットダイヤグラムは焦点面を主鏡の曲率の半分の凸面にしてあるもの。
焦点面を平坦にしてみると、一挙に周辺がピンボケになります。。

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フィルムの時代は、焦点面の湾曲に合わせてフィルムを曲げていたわけですが、デジタル時代のCCDはそう言うわけにもいきません。

少なくともアマチュアにとっての、シュミットカメラの時代的な役割は終わったか? と思いきや、この問題に十分以上の解が! その名も

フラット・シュミットカメラ!
http://www5f.biglobe.ne.jp/~kztanaka/flatsc.html

>補正板を通常のシュミットニュートンより前方にだし、さらにCCD直前にアクロマート対物レンズを配置した光学系。 これによりコマと像面湾曲の両方が取れ、アストロカメラが出来上がる。(上記URLより)

とのことで、ややFを明るくしつつ像面をフラットにし、なおかつ補正板の適正位置を近くして鏡筒をコンパクトにするという一石三鳥な設計です。

自ら開発・販売しておられるのは、田中光化学工業さん( http://www5f.biglobe.ne.jp/~kztanaka/fsc.html )

当方も、ケンコーのクローズアップレンズあたりを補正レンズとしてシミュレーションし、フラット・シュミットカメラの製作可能性を探っていこうと思っています!

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・・・・ところで、どっかにジャンクのシュミカセ補正板、転がってないですか(笑)