昨年11月に小海で見せてもらったCZJのE50/540+25-Hによる月面は衝撃だったわけですが、その時に初めて存在を知ったのが、「月面のキラキラ」です。これは月面の海以外の白い部分に、あたかも”CMOSカメラのホットピクセルのように(笑)”散らばった「輝度の高い微小なスポット」のことなのですが、正直、わたくしの月面観望体験ではそんなもの見えたことがありませんでした。

個人の印象として、このキラキラは月面クレーターの「角の部分」が日光での照らされ方によって輝いている? と想定しており、これを見るためにはコントラストとシャープネスがかなり高いレベルで両立している光学系でないと果たせないのではないか、と仮説を立てました。

で、自分の手持ち鏡筒で一番コントラストとシャープネスが高いと思われるのが、5cmF17ハーシェルニュートンと
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Nikonルーペアイピースの組み合わせです。
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これらを使用して観察したところ、月齢によっては「月面キラキラ」が見えましたので、その内容を報告します。

まず、月齢4くらいの状態。
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(5㎝F17ハーシェル・ニュートンにNikon10×ルーペで34倍、iPhone8によるコリメート撮影)

このころはまだキラキラは見えないですね。ただ地球照はかなりコントラストよく見えました。
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続いて、半月少し前、
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このころから一番照度の高い部分にキラキラあるんじゃない? って感じになってきます。

半月過ぎになると、だいぶキラキラもそこここに散見されるようになってきます。
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コリメート画像ではキラキラはなかなか写らないのでお届けできなくて残念です(笑)。
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月面撮影をされてる方々なら、ひょっとしたらその辺も再現できるのかもしれませんね。

半月と満月の中間くらいが一番キラキラが見えます。
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しかし、シーイングの影響も大きく、悪いときはキラキラの数が減ります。上の画像の日はシーイングが最悪で、写真の解像度にもそれが出ていますね(ひとつ前の画像の時はシーイングまずまず)

ちなみにハーシェル・ニュートン+ルーペでは、月齢10を超えたあたりでも地球照の部分が見えました。これは光学系のコントラストのある程度の基準になるのではないかと思います。

満月前後だと、「キラキラ」としては認識されなくなり、クレーターの外縁がリング状に輝くようになり、これはこれで美しいです。
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画像には全くその辺が写っておらず、重ねて申し訳ありません(笑)。さらに満月前後ではいろいろなクレーターからの「光条」が縦横無尽に観察され、まさに光条祭りとでもいうべき様相。ハーシェル・ニュートンとルーペアイピースによる月面のダイナミックレンジの広さが印象付けられました。

下弦においても満月と半月の中間ぐらいが「キラキラ」が一番認識しやすいですね。
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小海にてE50/540で見せてもらった時もこのくらいの月齢でしたが、やはりその時のイメージと比べるとキラキラは少しおとなしい気がします。しかし、まだ小海の第一夜のような良シーイングで試してないので、これからの検証次第とも言えますね。現状でもそれなりの手ごたえは感じています。

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さて、この月面キラキラですが、わたくしが寡聞にして知らなかっただけで、シャープな光学系を追求しておられる方々には周知というか常識の範疇だったのかも知れません。3枚玉アポとかにルーペアイピースを付けたらある意味「楽勝」に見えるのではないかと考えているのですが・・・ひょっとしたらラプトルとかスピカとか小口径アクロマート+ルーペでも可能?

具体的に、これとこれの組み合わせでそういうの見えるよ、とか、試してみたらこの機材でキラキラ見えた、とかの情報がありましたら、コメント欄ででもご教授いただければたいへん参考になります。

これは、秘密結社「月面キラキラ団」の発足も近い!?


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追記:怒涛の新展開!

なんとNikonやBelOMOのルーペよりコントラストの高いアイピース発見。それは
北軽井沢観測所のラベンデュラ(Lavendura)
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だった! 当方所有のはプロトタイプでおそらく30㎜、見かけ視界30°程度の品なのですが、製品版はもう少し視界が広いですね。ラベンデュラは焦点距離の長いものが多いので、これまで月惑星に使う意図はあんまりなかったのですけど、ふと思い立ってハーシェル・ニュートンにつけてみたところ、

CZJのE50/540に迫る勢いで月面のキラキラが見える!
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(例によってコリメート画像ではそのニュアンスはわかりませんが 笑)

これはもう100m9秒9とか9秒8とかの差ではなく、9秒69レベルの完全な自己ベスト更新です!

しかし、なぜ3群6枚のラベンデュラが1群3枚のルーペをコントラストで上回るのかはさっぱりわかりません(笑)。設計者の北軽さんによれば、前1群に対し後2群の光学対称性が100%となっているためとのこと。その代償として短焦点化が難しいそうです。

さらに、ESの5×バーローを取り付け、142倍で火星や木星を見てみましたが、やはりルーペよりコントラストが高いですね。もちろん解像度も高く、惑星用アイピースとしても相当な高性能です(寡聞にして知らなかったのですが、ラベンデュラをすでに惑星用アイピースとして運用されている方もおられるようです)。

しかも、コントラストの面以外でも、目の位置が少しルーズでもシャープネスを失わない、約30°の見掛け視界全面がほぼ良像範囲である、などがルーペに対して優れており、少なくとも3点で大きな優位性がありますね。ラベンデュラ・シリーズは焦点距離の長いものが多いので、正直、月・惑星用アイピースとしては完全にノーマークでしたが、今後の検証次第ではバーローとの併用で高倍率用アイピースとして他の追随を許さないパフォーマンスを示す可能性もあります。

これは、意外なところからの介入でルーペ戦争が終焉を迎える、という形になるのでしょうか!?

さらに皆様からもラベンデュラによる月・惑星の見え方に関しての情報が寄せられることを期待しております!