前回、鏡筒が短くて取り回しのいい短焦点アクロマートにバーローを組み合わせて長焦点アクロマート並みの像質が得られないか検証してみました。
この時はどうしても色収差がネックとなってコントラストと解像度を落とし、月面キラキラを確認するには至りませんでした。と言うわけで、短焦点アクロマートの「まだ終わらんよ」企画です(笑)
今回は
デュアル・ナローバンドフィルターを使用することで、2色に対し色消しになっているアクロマートのおいしい部分のみを使う
という。どこかで聞いたような方法になります。はい、あぷらなーとさんが天体写真でおこなわれている方法
の眼視応用ですね(笑)。
検証に必要な、「C線F線の2色を色消しにし、d線でアプラナートの古典的アクロマートと思われる鏡筒」としては前回同様、ミザールBN80、8㎝F5鏡筒を使います。

初期型EMSで正立90°対空、ビクセンバローT、ラベンデュラ30㎜にて27倍。まずはノーフィルターにて。

まあ、こんな感じになりますよね。輪郭には青ハロがまとい、まあクレーターなんかも良くは見えるのですが、月面の明るい部分はなんだかのっぺりします。
で、ここでデュアル・ナローバンドを入れる。

電視観望の定番、QuadBPフィルターを使います。

えっ、ちょっと待ってください、何ですかこれは?
解像度・コントラストともに2段階くらいジャンプアップしているぞ!
月面が青緑になるのが不自然なものの、すごい解像度とコントラストです! もちろん月面キラキラも多数見えていますが、特筆すべきは月面の明るい部分のシャドウが暗く、細かい地形が良くわかることでしょうか。この部分だけ取り上げると、フル波長の長焦点アクロマートをも上回っている印象! (あと月面がまぶしくないという怪我の功名も)。
もちろん色には違和感がありますので、あらかじめ想定していた対策、

色温度補正シートを使います。これたぶん、舞台なんかの照明ライトの色温度補正用シートですね。(左下にかざしているのはQuadBPフィルター)。
アンバー色の方をかざしてみて一番濃いやつが合いそうだったので丸く切ってフィルター枠に入れます。

さて、この即席フィルターをQuadBPフィルターと重ねて、と・・・

おう、これこれ、実際の眼視では上の画像よりやや緑っぽく見えましたが、色はほとんど違和感なくなりました。しかし、解像度が落ちると言うかなんかスッキリしないです。まあ、光路内にヘナヘナのシート入れているわけだから像が悪くなっても当たりきシャッポのコンコンチキなんですけどね(笑)。
光学ガラスのフィルターなら解像度落とさないと思うのですけど、あんまりシートと色が変わらないように見えるオレンジフィルターでも

一気にこんな色になってしまうんですね。

なかなか微妙なものです。やっぱりちゃんとした色温度補正フィルターが欲しいのですが、31.7㎜のサイズとかないしなあ・・・
青緑色の月もこれはこれで異世界感があって面白いと言えば面白いので、解像度を求めてQuadBPフィルターのみに戻し、いろいろとアイピースを換えてみたところ、結論から言うと、やはりラベンデュラとNikonルーペアイピースがダントツにコントラストがよく、月の明るい部分の地形が一番わかりました。
一般的なところで銀PL25㎜、32倍あたりも試してますが、悪くないです。これでも月面キラキラはそれなりに見えますね。まあラベンデュラの「予告編」くらいには(笑)。意外とビクセンPL12.5㎜64倍も見ごたえがありました。

倍率を上げると「キラキラ」はおとなしくなりますが、細かいところはやはり良く見えます。ちなみに上の画像を白黒にするとこんな感じ。

個人的にはもうこれでいいような気も(笑)。
あとハイゲンスも試してみましたが、今回の光学系ではダメですね。やはり解像度が劣ります。
しかし、今回もQuadBPフィルターの汎用性には驚かされました。いったいどこまで守備範囲を広げていくんだ、と(笑)
ともあれ、短焦点アクロマートとデュアル・ナローバンドフィルターを組み合わせての月面観望では色は不自然になるものの、解像度とコントラスト向上に大きな効果があることがわかりました。今後、満月に向けて「光条祭り」が始まりますが、それの縦横無尽な表現にも大きく期待が持てますね!
C線F線型の短焦点アクロマートとデュアルナローをお持ちの方は、ぜひこの組み合わせで月面をご覧になってみてください。この記事に載っているコリメート画像の10倍よく見えます!
***3/6追記***
もう少し検証を進めましたので追記します。
まず、BN80、8㎝F5アクロマート、Quadbpフィルター、谷光学Or4㎜100倍にて木星を見てみましたが、さすがにこの倍率だとC線とF線のピントのわずかな乖離が目立ち、木星の輪郭に赤か青緑のハロが出る結果となりました。本体の模様のコントラストは上がっている気がしますが、本体が大幅に暗くなって視認性は悪いです。とりあえず惑星には不適であることが判明。
さらに、月齢14.1の月面にて2倍バーロー、ラベンデュラ30㎜27倍で「SVBONY CLS」「CometBP」「QuadBP」それぞれにフィルターを比較したところ、同じような傾向のコントラストやシャープネス増強がありましたが、その度合いは
SVBONY CLS << CometBP < QuadBP
という感じで、やはりQuadBPの効果が際立っていました。特にQuadBPではピントが合った時の「宝石感」がハンパないのですが、よくよく観察していると、C線F線のピントの小さな乖離がクレーターのリムの輝度の高い部分に「わずかな色」を付けており、これが目の位置によって出たり出なかったりと、チカチカ点滅することで立体感が演出されている感じですね。初見の時の感動はこれの援護射撃もあるような気がします。自分の場合、見て面白ければ何でもいいのですが、客観的な月の姿かと言われると違うのかも知れません(笑)。
あと、緑フィルター、黄色フィルター、オレンジフィルターでも月を見ていますが、どれも青ハロをなくしてシャープネスを上げますけど、それほどコントラストは向上せず、QuadBPほどの劇的な効果はありませんね。3つの中では緑フィルターが落ち着いた感じで一番よかったですが、「ムーングラス」ってこういう色でしたっけ? アクロマートは通常d線アプラナートなので、589nm前後の黄色のバンドパスフィルターとかあれば、ひょっとしたらすごくシャープに見えるのかも知れません。
いずれにせよ、月面低倍率ではQuadBPフィルターが非常に面白い、という結論は不動でした(笑)
この時はどうしても色収差がネックとなってコントラストと解像度を落とし、月面キラキラを確認するには至りませんでした。と言うわけで、短焦点アクロマートの「まだ終わらんよ」企画です(笑)
今回は
デュアル・ナローバンドフィルターを使用することで、2色に対し色消しになっているアクロマートのおいしい部分のみを使う
という。どこかで聞いたような方法になります。はい、あぷらなーとさんが天体写真でおこなわれている方法
の眼視応用ですね(笑)。
検証に必要な、「C線F線の2色を色消しにし、d線でアプラナートの古典的アクロマートと思われる鏡筒」としては前回同様、ミザールBN80、8㎝F5鏡筒を使います。

初期型EMSで正立90°対空、ビクセンバローT、ラベンデュラ30㎜にて27倍。まずはノーフィルターにて。

まあ、こんな感じになりますよね。輪郭には青ハロがまとい、まあクレーターなんかも良くは見えるのですが、月面の明るい部分はなんだかのっぺりします。
で、ここでデュアル・ナローバンドを入れる。

電視観望の定番、QuadBPフィルターを使います。

えっ、ちょっと待ってください、何ですかこれは?
解像度・コントラストともに2段階くらいジャンプアップしているぞ!
月面が青緑になるのが不自然なものの、すごい解像度とコントラストです! もちろん月面キラキラも多数見えていますが、特筆すべきは月面の明るい部分のシャドウが暗く、細かい地形が良くわかることでしょうか。この部分だけ取り上げると、フル波長の長焦点アクロマートをも上回っている印象! (あと月面がまぶしくないという怪我の功名も)。
もちろん色には違和感がありますので、あらかじめ想定していた対策、

色温度補正シートを使います。これたぶん、舞台なんかの照明ライトの色温度補正用シートですね。(左下にかざしているのはQuadBPフィルター)。
アンバー色の方をかざしてみて一番濃いやつが合いそうだったので丸く切ってフィルター枠に入れます。

さて、この即席フィルターをQuadBPフィルターと重ねて、と・・・

おう、これこれ、実際の眼視では上の画像よりやや緑っぽく見えましたが、色はほとんど違和感なくなりました。しかし、解像度が落ちると言うかなんかスッキリしないです。まあ、光路内にヘナヘナのシート入れているわけだから像が悪くなっても当たりきシャッポのコンコンチキなんですけどね(笑)。
光学ガラスのフィルターなら解像度落とさないと思うのですけど、あんまりシートと色が変わらないように見えるオレンジフィルターでも

一気にこんな色になってしまうんですね。

なかなか微妙なものです。やっぱりちゃんとした色温度補正フィルターが欲しいのですが、31.7㎜のサイズとかないしなあ・・・
青緑色の月もこれはこれで異世界感があって面白いと言えば面白いので、解像度を求めてQuadBPフィルターのみに戻し、いろいろとアイピースを換えてみたところ、結論から言うと、やはりラベンデュラとNikonルーペアイピースがダントツにコントラストがよく、月の明るい部分の地形が一番わかりました。
一般的なところで銀PL25㎜、32倍あたりも試してますが、悪くないです。これでも月面キラキラはそれなりに見えますね。まあラベンデュラの「予告編」くらいには(笑)。意外とビクセンPL12.5㎜64倍も見ごたえがありました。

倍率を上げると「キラキラ」はおとなしくなりますが、細かいところはやはり良く見えます。ちなみに上の画像を白黒にするとこんな感じ。

個人的にはもうこれでいいような気も(笑)。
あとハイゲンスも試してみましたが、今回の光学系ではダメですね。やはり解像度が劣ります。
しかし、今回もQuadBPフィルターの汎用性には驚かされました。いったいどこまで守備範囲を広げていくんだ、と(笑)
ともあれ、短焦点アクロマートとデュアル・ナローバンドフィルターを組み合わせての月面観望では色は不自然になるものの、解像度とコントラスト向上に大きな効果があることがわかりました。今後、満月に向けて「光条祭り」が始まりますが、それの縦横無尽な表現にも大きく期待が持てますね!
C線F線型の短焦点アクロマートとデュアルナローをお持ちの方は、ぜひこの組み合わせで月面をご覧になってみてください。この記事に載っているコリメート画像の10倍よく見えます!
***3/6追記***
もう少し検証を進めましたので追記します。
まず、BN80、8㎝F5アクロマート、Quadbpフィルター、谷光学Or4㎜100倍にて木星を見てみましたが、さすがにこの倍率だとC線とF線のピントのわずかな乖離が目立ち、木星の輪郭に赤か青緑のハロが出る結果となりました。本体の模様のコントラストは上がっている気がしますが、本体が大幅に暗くなって視認性は悪いです。とりあえず惑星には不適であることが判明。
さらに、月齢14.1の月面にて2倍バーロー、ラベンデュラ30㎜27倍で「SVBONY CLS」「CometBP」「QuadBP」それぞれにフィルターを比較したところ、同じような傾向のコントラストやシャープネス増強がありましたが、その度合いは
SVBONY CLS << CometBP < QuadBP
という感じで、やはりQuadBPの効果が際立っていました。特にQuadBPではピントが合った時の「宝石感」がハンパないのですが、よくよく観察していると、C線F線のピントの小さな乖離がクレーターのリムの輝度の高い部分に「わずかな色」を付けており、これが目の位置によって出たり出なかったりと、チカチカ点滅することで立体感が演出されている感じですね。初見の時の感動はこれの援護射撃もあるような気がします。自分の場合、見て面白ければ何でもいいのですが、客観的な月の姿かと言われると違うのかも知れません(笑)。
あと、緑フィルター、黄色フィルター、オレンジフィルターでも月を見ていますが、どれも青ハロをなくしてシャープネスを上げますけど、それほどコントラストは向上せず、QuadBPほどの劇的な効果はありませんね。3つの中では緑フィルターが落ち着いた感じで一番よかったですが、「ムーングラス」ってこういう色でしたっけ? アクロマートは通常d線アプラナートなので、589nm前後の黄色のバンドパスフィルターとかあれば、ひょっとしたらすごくシャープに見えるのかも知れません。
いずれにせよ、月面低倍率ではQuadBPフィルターが非常に面白い、という結論は不動でした(笑)
コメント
コメント一覧 (9)
uwakinabokura
が
しました
本題と関係の無い内容ですみません。
uwakinabokura
が
しました
それは、「月面 キラキラ」ってもののことです。
半月より、満月に近い時に見えやすい・・・
クレーターからの光条に関連するものでしょうか?
よくその正体が判らず、気になっております。
因みに ミラクルKが、月全体像を普通に見る場合、ブランドンを選択することが多いです、
なぜなら、クレーターの数が多く感じるからです。
(視認性が良好なだからでしょうか?)
uwakinabokura
が
しました
月齢などの条件を整えて、チャンスを狙います。
上手く見えます(判ります)やら・・・
現在、5~6cmの鏡筒は持ち合わせがなく、
TV-102/880になりますので、25mmアイピースで約35倍。
ND4~8やら、対物前に置く絞りやら・・・
はたまた、ズーム・アイピースなどなどを駆使してみます。
ところで、いろいろな星の集まりで、“月”は邪魔者扱いですが
上弦までくらいならば、月の観望も出来て、月没後はDSOも楽しめます。
もっと積極的に月を眺めてもよいと、思います、
ミラクルKの15cmアポ+双眼装置のメインターゲットは、月・惑星です。
月は判りやすく、誰にでも楽しめる奥の深い対象です。
地上の風景とほぼ同じ明るさで、太陽に照らされて、望遠鏡の大小に関わらず楽しめます。
また、TV-102/880を別名「お月見望遠鏡」と呼んでいるのは
街中でも郊外でも 全体像も拡大も楽しく観望できるからです。
uwakinabokura
が
しました