すぷーんさんの45㎝F4.1ボールマウント式望遠鏡”炒飯一号”です!
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これの主鏡はハッブル・オプティクス製のサンドイッチ・ミラーで当方がお譲りしたものですが、昨年DSP2022の折、中部大学にそれをお届けした際の様子はこちら

すぷーんさんはDSP2023の1ヶ月前から製作に取り組まれ、前日に完成させたとのこと。スターパーティの前日に完成させるのはまさにATMerの伝統!

どのような形に仕上がるのか楽しみでしたが、主鏡は室内装飾用? のボウル状のものに18点支持で置かれ、
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(画像はすぷーんさんのTwitterより転載)
斜鏡はアルミフレームを組んだホルダーに入れ、フォーカサーもここにつきます。
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(画像はすぷーんさんのTwitterより転載)

この2つの部品を、やや変則的な非対称に組んだ4本のトラスロッドで連結するわけですが、正直、ぱっと見た目はトラスがたわんで仰角により光軸がずれる? という「自作トラスあるある」な印象でした。

しかし、実際に操作してみるとその印象は一変。

これはガチガチのトラスや!

構造上、トラスロッドが交わっている部分があるのですが、ここがボルトで連結されています。
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これも剛性確保に効いているのでしょうかね。さらにボールマウントのフリクションも適度で剛性の高いトラスと組み合わせることでバックラッシュのない快適な操作感を得ていました。

もちろん、このような構造にしますとトラスロッドが主鏡に影を落としますし、斜鏡ホルダーなども方形であるので、光路遮蔽が非対称になって様々な回折が発生します。実際、輝星のスパイクもやや複雑な出方になっていましたが、DSO用としてその辺は割り切り、軽量でシンプルな構造を優先した素晴らしい設計ですね。

もっとも、変則的な回折によるスパイクの問題はあるにしてもかなりの輝星じゃないと顕在化しないので視野内の星像はものすごくシャープ、仰角による光軸のずれもありません。DSP2日目の晩、わずかに訪れた晴れ間で実際にM51やM13を見せてもらう機会があったのですが、もちろん口径なりの集光力で迫力のあるDSO観望が楽しめました。

なお、接眼部の向きや角度が自由に変えられるのもボールマウントの大きなメリットですが、さらに斜鏡の角度がニュートン式通常の45°ではなく60°くらい? の折り返しになっていて接眼部の覗く位置を低くしているのも”炒飯一号”の特徴です!

さて、ハッブルオプティクスのサンドイッチミラー、カタログデータ上はものすごく高スペックなのですが
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正直、本当にこんな高精度なのかという疑念がありました。しかし星を見てみると十二分な鋭像を示しており、さすが高精度を謳うだけのことはあるかも? とは思いました。実際、すぷーんさんが行われたワークショップでこの鏡のフーコーテストをしたところ良い面だったようにも聞きましたしね。

しかし、すぷーんさんのような若い方がこのようなオリジナリティにあふれ、しかも相当に実用性の高い機材を自作されたことは驚きで、何より自分が死蔵し続けていた鏡がファーストライトを迎えられたのはたいへんうれしいことでした。この45㎝望遠鏡、今後さらに改良が進み、中部大学の遠征用機材の主力となることも期待されますね!

中部大学と言えば今回、すぷーんさんの後輩にあたるSさんと、こしんのんれんずさんも参加しておらえれました。このお二人に関しては、すぷーんさんに続いてDSPで重要な役割を担うのではないかとも期待しているのですが、中部大学の天文台サポーターの学生さんは多数の方が鏡面研磨をしているということです(当世、こんなことやってる大学があるのが今でも信じられません)。今回、食堂で行われた鏡面研磨の実演も多くの方に人気で

かなり盛り上がっていたのですが、若い世代の主導で数十年ぶりに天文界に鏡面研磨の風が吹き荒れる日が近いのかも知れません(笑)

若い世代と言えば、仙台から参加された大学生のEさんにもインパクトを受けましたね。2日目の晴れを待っている間のロビーで、サークルの40㎝望遠鏡の自作の話題から始まり、観望会の配車や会計の段取り、活動の活性化、天体写真から眼視観望へのシフト、鏡面研磨やってみたい話など、けっこう長い時間話したのですが、時折垣間見える本質をとらえた見解や実践力、自然科学志向などから完全に「こっち側の人」という印象を持ちました。天文界はこういう逸材を育てていかなければいかんのですよ・・・いや、そんなの余計なお世話か(笑)。きっと人の動向なんかには左右されることなく自力で道を切り開いてくれるでしょう。

とにかく、今回のDSPでは今までのスターパーティになく若い世代に頼もしさを感じたのでした。天文趣味にキャリアや年齢は関係ないですねー。こういう若い人たちがどんどん増えて行ったら、日本の天文界、まだまだ盛り上がるで!

続く!