富田さんの小口径反射望遠鏡群です。

このクラスの反射望遠鏡は普段あまり顧みられることがないのですが、わたくしのようなニュートン信者にはたまらない、素晴らしくマニアックな望遠鏡ばかりなので、ひとつずつ紹介しますね(富田さんがDSPのワークショップのために用意された資料も使用します)。
まずはビクセンのパルサー型改


パルサー型はもともと10㎝F10なのですが、これを113㎜、fl=907mmの鏡に換装、しかもその鏡は富田さんご本人によって修正研磨され1/50λ相当となったものです!
さらに! ブランド不明? よくありそうな「買ってはいけない系」のSKYCORE M115Rですが


ジャンク500円で買ったこれの112㎜、fl=900mmの主鏡も修正研磨して1/50λ相当にされています!
この2台、いずれもご自身で修正研磨された高精度鏡が使われていますが、何の変哲もない、いやむしろ「見た目だけでは完全に侮られる外見」に最高レベルの高精度鏡が奢られ「羊の皮をかぶった狼」などと言う月並みな表現をはるかに超えています。わたくしはこれを見た時、
軽自動車の最安グレードに1万回転まで回るツウィンカムの5バルブエンジンが積まれているような恐ろしさ
を感じ背筋が寒くなりました(笑)。
富田さんはかつて反射の定番スペックであった10㎝F10について各メーカーの鏡を検査しておられます。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
Fが暗いためよく見えるものが多いとの事でしたが、富田さんの上の2台は既存の低価格鏡筒にさらなる鋭像を求めての自作高精度鏡の投入と思います。ちなみに114㎜F8については以下のような状況のようです。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
自分もミード製の114㎜F8鏡を使用していたことがあり、多重リングのあるこのような面でしたが

惑星等、非常によく見える鏡でした。いずれも10㎝F10、11.4cmF8といったスペックが簡略な製造でもまずますの性能を発揮し、またさらに上を目指す場合、ユーザー側の修正研磨で最高レベルに到達できる可能性を示しています。
***
さて、次にハーシェル・ニュートンです。
ハーシェル・ニュートン式とはハーシェル式に軸外しされている光路を斜鏡もしくはプリズムで90°前後折り返すニュートン式との折衷とも言える方式です。


(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
もちろん軸外しにしますのでコマ収差を中心に諸収差が発生し、それをストレール基準値以内に収めるためには口径10㎝ならF22.5以上が必要とのことです。しかしこれですと2m以上の長大な鏡筒になるので現実的ではなく、8㎝が運用の限界とも。
さて、ハーシェル・ニュートン、実際の富田さんの作例です。
54㎜、fl=980㎜(F18.2)ハーシェル・ニュートン


54㎜の口径ですとF18.2なら余裕でストレール基準値をクリアですね。昨年のDSP2022でこれを覗かせてもらったのですが、実際ものすごくシャープでした。
ちなみにこの望遠鏡はシベットの5㎝F17ハーシェル・ニュートン製作時に当時唯一の作例としてたいへん参考にさせていただきました。


このように5㎝クラスですと鏡筒の長さも1m以内に収まるのが、口径79m㎝の大口径(笑)ハーシェル・ニュートンともなると・・・長!
79㎜、fl=1290㎜(F16.3)ハーシェル・ニュートン


これ以上の大口径化は厳しそうですね。この作例あたりがスペックの限界になろうかと思います。
しかし、ハーシェル・ニュートンは小口径ながらその像の切れとコントラストはすさまじく、シベットの所有している望遠鏡の中で最もシャープで最もコントラストの高いのは5㎝ハーシェル・ニュートンだと言い切れます(テレパック60ALもわずかに及ばない)。特にスタインハイル(ルーペ)やLavenduraとの組み合わせは最強ですね!
さて、このハーシェル・ニュートン、自分は完全に中村要オリジナルだと思っていたのですが、富田さんによればそれとは別に実用新案を取った方がおられたようです。その後、何らかの形で特許的な問題が解決され、市販に至ったのではないかとも推察されるとの事。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
また、ハーシェル・ニュートンは日本独自のものとのことでもありますね。主鏡のみの純(?)ハーシェル式と違って観察者の頭による口径食を起こさないのが副鏡を使うハーシェル・ニュートンのメリットだと思います。
上の画像にある古書は富田さんが古書店を回って入手された大変貴重なもので、DSP会場ではその実物を見せていただくこともできました。

さて、小型(長焦点)ニュートンはローコストな製作が可能な割に眼視用としてはかなりの高性能に仕上げられます。しかし、現在の天文趣味の最大人口を持つ天体写真ジャンルに向いてないのが最大のネックとなり、普及しているとは言い難いですね。さらに、ハーシェル・ニュートンに至っては存在さえ知られてない現状かと思います。しかし、この驚異のコストパフォーマンスを鑑みるに
今後、小型ニュートンの復権、さらにハーシェル・ニュートンの新規普及が十分ありうる!?
♪ たぶんあると思う・・・あるんじゃないかな?・・・まちょっと覚悟はしておけ ♪(笑)
(朗報:エドモンド・オプティクスに5㎝F20球面鏡18,500円が新たにラインナップされているぞ! これでハーシェル・ニュートン主鏡の供給は完璧!)
***
DSP2023に集まったニュートン式の反射望遠鏡で、今回の記事で取り上げた「小型ニュートン」の要素(小口径・長焦点・低価格)が一番強いものと言えばやはりXRAYさんのスカイウォッチャーDOB6クラシックでしょうか。15㎝なので昔の基準だと「大口径」ですが、今なら「小口径」と言えるかも(笑)


自分も同じ望遠鏡を持っていますが、惑星が非常によく見えるのももちろん、ガニメデの模様まで検出した、という驚異の光学性能を誇ります。
XRAYさんやutoさんもこの望遠鏡で同じくガニメデの模様を検出されていますので
ガニメデ・キラーという別名がついてもいいくらいではないかと(笑)
さらに100°全面ピンポイントのポテンシャルもあり、RFT要素もそれなりに!
眼視用としては万能、と言い切ってよいと思います。そして現状、この驚異の万能機が配送無料33,000円で手に入る、だと!?
いやー、ニュートン式って本当にいいものですね!
続く!

このクラスの反射望遠鏡は普段あまり顧みられることがないのですが、わたくしのようなニュートン信者にはたまらない、素晴らしくマニアックな望遠鏡ばかりなので、ひとつずつ紹介しますね(富田さんがDSPのワークショップのために用意された資料も使用します)。
まずはビクセンのパルサー型改


パルサー型はもともと10㎝F10なのですが、これを113㎜、fl=907mmの鏡に換装、しかもその鏡は富田さんご本人によって修正研磨され1/50λ相当となったものです!
さらに! ブランド不明? よくありそうな「買ってはいけない系」のSKYCORE M115Rですが


ジャンク500円で買ったこれの112㎜、fl=900mmの主鏡も修正研磨して1/50λ相当にされています!
この2台、いずれもご自身で修正研磨された高精度鏡が使われていますが、何の変哲もない、いやむしろ「見た目だけでは完全に侮られる外見」に最高レベルの高精度鏡が奢られ「羊の皮をかぶった狼」などと言う月並みな表現をはるかに超えています。わたくしはこれを見た時、
軽自動車の最安グレードに1万回転まで回るツウィンカムの5バルブエンジンが積まれているような恐ろしさ
を感じ背筋が寒くなりました(笑)。
富田さんはかつて反射の定番スペックであった10㎝F10について各メーカーの鏡を検査しておられます。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
Fが暗いためよく見えるものが多いとの事でしたが、富田さんの上の2台は既存の低価格鏡筒にさらなる鋭像を求めての自作高精度鏡の投入と思います。ちなみに114㎜F8については以下のような状況のようです。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
自分もミード製の114㎜F8鏡を使用していたことがあり、多重リングのあるこのような面でしたが

惑星等、非常によく見える鏡でした。いずれも10㎝F10、11.4cmF8といったスペックが簡略な製造でもまずますの性能を発揮し、またさらに上を目指す場合、ユーザー側の修正研磨で最高レベルに到達できる可能性を示しています。
***
さて、次にハーシェル・ニュートンです。
ハーシェル・ニュートン式とはハーシェル式に軸外しされている光路を斜鏡もしくはプリズムで90°前後折り返すニュートン式との折衷とも言える方式です。


(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
もちろん軸外しにしますのでコマ収差を中心に諸収差が発生し、それをストレール基準値以内に収めるためには口径10㎝ならF22.5以上が必要とのことです。しかしこれですと2m以上の長大な鏡筒になるので現実的ではなく、8㎝が運用の限界とも。
さて、ハーシェル・ニュートン、実際の富田さんの作例です。
54㎜、fl=980㎜(F18.2)ハーシェル・ニュートン


54㎜の口径ですとF18.2なら余裕でストレール基準値をクリアですね。昨年のDSP2022でこれを覗かせてもらったのですが、実際ものすごくシャープでした。
ちなみにこの望遠鏡はシベットの5㎝F17ハーシェル・ニュートン製作時に当時唯一の作例としてたいへん参考にさせていただきました。


このように5㎝クラスですと鏡筒の長さも1m以内に収まるのが、口径79m㎝の大口径(笑)ハーシェル・ニュートンともなると・・・長!
79㎜、fl=1290㎜(F16.3)ハーシェル・ニュートン


これ以上の大口径化は厳しそうですね。この作例あたりがスペックの限界になろうかと思います。
しかし、ハーシェル・ニュートンは小口径ながらその像の切れとコントラストはすさまじく、シベットの所有している望遠鏡の中で最もシャープで最もコントラストの高いのは5㎝ハーシェル・ニュートンだと言い切れます(テレパック60ALもわずかに及ばない)。特にスタインハイル(ルーペ)やLavenduraとの組み合わせは最強ですね!
さて、このハーシェル・ニュートン、自分は完全に中村要オリジナルだと思っていたのですが、富田さんによればそれとは別に実用新案を取った方がおられたようです。その後、何らかの形で特許的な問題が解決され、市販に至ったのではないかとも推察されるとの事。

(富田さんのDSP2023ワークショップ「小型反射望遠鏡の可能性と限界」の資料より)
また、ハーシェル・ニュートンは日本独自のものとのことでもありますね。主鏡のみの純(?)ハーシェル式と違って観察者の頭による口径食を起こさないのが副鏡を使うハーシェル・ニュートンのメリットだと思います。
上の画像にある古書は富田さんが古書店を回って入手された大変貴重なもので、DSP会場ではその実物を見せていただくこともできました。

さて、小型(長焦点)ニュートンはローコストな製作が可能な割に眼視用としてはかなりの高性能に仕上げられます。しかし、現在の天文趣味の最大人口を持つ天体写真ジャンルに向いてないのが最大のネックとなり、普及しているとは言い難いですね。さらに、ハーシェル・ニュートンに至っては存在さえ知られてない現状かと思います。しかし、この驚異のコストパフォーマンスを鑑みるに
今後、小型ニュートンの復権、さらにハーシェル・ニュートンの新規普及が十分ありうる!?
♪ たぶんあると思う・・・あるんじゃないかな?・・・まちょっと覚悟はしておけ ♪(笑)
(朗報:エドモンド・オプティクスに5㎝F20球面鏡18,500円が新たにラインナップされているぞ! これでハーシェル・ニュートン主鏡の供給は完璧!)
***
DSP2023に集まったニュートン式の反射望遠鏡で、今回の記事で取り上げた「小型ニュートン」の要素(小口径・長焦点・低価格)が一番強いものと言えばやはりXRAYさんのスカイウォッチャーDOB6クラシックでしょうか。15㎝なので昔の基準だと「大口径」ですが、今なら「小口径」と言えるかも(笑)


自分も同じ望遠鏡を持っていますが、惑星が非常によく見えるのももちろん、ガニメデの模様まで検出した、という驚異の光学性能を誇ります。
XRAYさんやutoさんもこの望遠鏡で同じくガニメデの模様を検出されていますので
ガニメデ・キラーという別名がついてもいいくらいではないかと(笑)
さらに100°全面ピンポイントのポテンシャルもあり、RFT要素もそれなりに!
眼視用としては万能、と言い切ってよいと思います。そして現状、この驚異の万能機が配送無料33,000円で手に入る、だと!?
いやー、ニュートン式って本当にいいものですね!
続く!
コメント
コメント一覧 (2)
こちらは予算の縛りか嚴しいのでハナから選択肢がなかったのもありますが。
今回は晴れ間が少なく自分の事で一杯でしたがこんな時なので他のとこをもっと回るべきでしたね。
次参加するときは色々回ろうと思います。
uwakinabokura
が
しました