日頃より様々な天文機材を自作されているutoさんが、100円ショップの部材で画期的な望遠鏡を製作されています。

最終形↓

詳しくは記事をご覧いただくとして、実は自分もこの望遠鏡のプロトタイプ現物をutoさんご本人から譲り受けております。
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ピント合わせ機能を持たせた発泡スチロールで巻かれ、”スポーツチャンバラ”のソフト剣のようですね!
この見た目からは想像できないのですが、シングルレンズだけで構成された光学系にもかかわらず、色収差のないスッキリとした見え味を示す驚きの望遠鏡です!

実際に風景を見ると
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対物レンズはfl=400㎜程度? 接眼はfl=100㎜程度の倍率は4倍くらい、見かけ視界は15°くらいでしょうか。重ねて言いますが、対物レンズも接眼レンズもシングルレンズであるにもかかわらずほとんど色収差が感じられません(ただしアイポイントがずれると色収差が見え、周辺には倍率の色収差も感じられる)。

色収差が目立たない理由としては、

①昼間で観察者の瞳径が2㎜程度となっているとすると、2×4=8mmで実質口径8mm、0.8cmF50の対物になっている。

②倍率が低いので色収差自体が目立たない

③対物と接眼のシングルレンズどうしが色収差を相殺する方向に働いている?


などが考えられますが、とにかくシングルレンズは色が着くという固定観念を十分に覆すものです!

さて、そのままでも素晴らしいのですが、自分なりにアイピース部分の改良を考えてみました。この望遠鏡、対物はメニスカス凸、接眼は両凸なので、接眼もメニスカス凸にしたらもっとよくなるのじゃないかな? で100円ショップで入手できるメニスカス凸レンズと言えばやはり老眼鏡になりますかね。
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一番度の強い+5.0を買ってきました。レンズはすぐ外すことができます。
単独で焦点距離を見るとfl=200㎜程度ですね。これだと少し長いので2枚重ねしてみます。
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2枚重ねだとfl=100㎜程度。
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一応2群2枚ということになるのでしょうか? 望遠鏡に無理に取り付けると「シュモクザメ」みたいになりました(笑)
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見口用の発泡スチロールのシートも無理やりです(笑)。さて、どうかな?

・・・!
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これ、いいです! 最周辺は放射状に流れますが、両凸レンズの接眼では視野周辺に感じられた倍率の色収差がほとんどありません。さらに目の位置の微妙さが少し軽減され良像範囲も拡がっている感じが!

さて今夜は月齢5.0。この望遠鏡でクレーターは見えるのか!?
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見える! わたしにも月面クレーターが見えるぞ!

いや、コリメート画像ではいまひとつ不明瞭なのですが、アイポイントが地上風景と比べてかなりシビアなものの、いくつかの大きなクレーターや月の山脈などの地形が眼視でははっきりと見えています。これ光学エレメンツは100円ショップですよ? しかもレンズはテープで適当に張り付けただけで光軸も芯出しもあったもんじゃなく(笑)。正直言って驚きです!

星に興味が出てまだ望遠鏡を持ってなかった頃、こういう望遠鏡を作ってればそれはそれは楽しかったんだろうなあ、と。天文趣味も機材にそれなりの投資をしないとできないジャンルが多くなってきたのですが、こういう機材で原点に戻って見るのもいいかな、と改めて思った次第です。

そう言えば、昔コルキットでシングルレンズの望遠鏡キットがあったそうで、買った人の話ではあんまり評判は良くないのですけど、あれもシングルレンズアイピースで倍率を低く抑えれば、この100円ショップ望遠鏡のようによく見えたのかも知れませんね。

いやいや、utoさんの素晴らしいコンセプトには脱帽するばかりです。


***おまけ***


100円ショップ望遠鏡のアイピースに使えるかなと思ってこんなものも買って来てました。
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スマホ用の魚眼・広角・マクロレンズレットですね。マクロレンズが焦点距離の短い凸レンズ、それと組み合わせて広角にするレンズが凹レンズで、これらが接眼レンズに使えないかと思ったものですが、凸レンズは倍率高すぎて色収差の嵐、凹レンズで狙ったガリレオ式は視界激狭でした(笑)。

仕方ないので本来の目的。クリップでスマホに取り付けまずはマクロ(オンシツコナジラミ)。
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まあ使えなくはないのですが、焦点深度がかなり浅いのでピント合わせづらく(ツユクサの花)
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魚眼だとこんな感じ
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まあ、魚眼ですな・・・あんまり使わんか(笑)