ケンコーR64フィルターです。
IMG_5807
天体写真がフィルムの時代に103aや水素増感2415との組み合わせでそれまで表現の出来なかったHⅡ領域を描き出し、さらに光害地での撮影を可能とした、真紅のかっこいいやつです。

自分は55mm径のを持っています。
これを電視観望における分子雲の表現に使えないかというのが今回のテーマになります。

R64のようなローパスフィルターはある一定より長い波長の光を通します。
kenko-r64
R64の場合は640nmあたりになっているということだと思いますが、注目は赤外域をほぼ100%通すということで、光害を避けつつ赤外域の波長成分を持つ分子雲を写し出すことが可能なのではないかと。

ここでZWOのサイトにて、現在使用しているASI294MCの分光感度曲線を見てみますと
ZWO-ASI294MC-deep-sky-imager-planetary-imager-QE-graph-01
うーん、赤外域にも感度が伸びてそうなんだけど、切れててわからん(笑)

仕方がないので、同系統(?)と思われる、ASI224MCのグラフで代用。
QE-ASI224-e1529569361738
何と、800nmを過ぎたあたりで、BGRの感度がほぼ同じになり、なだらかに減衰しています。

これはひょっとして、R64フィルター使用により
HⅡ領域が赤く、分子雲が白く写るんじゃ・・・?
とまあ、いつもこのような都合の良い皮算用をしては玉砕するんですけどね(笑)

まあ、その辺は検証結果を待つとして、ちょうどフィルター径が55mmである、手持ちのシグマ55-200mm、F4-5.6にR64フィルターを装着。
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200mmでも固定で電視観望できるかどうかの検証も兼ねます。

200mmが無理そうでしたら、広視野にスイッチします。先日も使ったCANON EFS18-55mm、F3.5-5.6で。
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このレンズはフィルター径が58mmなので58→55mmのステップダウンリングを使っています。

R64は干渉フィルターではないので、広視界で周辺視野に入射角がついても周波数シフトが起こらないのは強みでしょうか。

あとは、明らかにレンズ設計上の「想定外」と思われる640nm~1000nmくらいの範囲でピンボケが起こらないかどうかですね。
フィルム時代の昔のレンズって赤外写真を”一応”想定して、ピント補正用のRマークというのがあった(ファインダーでピントを合わせたのち、手動でRマークまでピントを移動する)のですが、オートフォーカスになってからは意味がないのでしょう、最近のレンズでは見られないですね。さらに、最近のデジカメではいろいろ悪さをする赤外域をあらかじめフィルターでカットするので、完全に赤外を使う想定がなくなったと思います。

いずれにせよ、もろもろの問題は実際やってみたらはっきりしますので、今晩にでも実施予定です!

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沼澤茂美さんによる希代の名著、セレストロン20cmF1.5シュミットカメラによる、1993年刊行の
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ですが、これは長年にわたり自分のバイブルになっています。今見ても素晴らしい写真が多いです。
おうし座の超新星残骸Sh2-240なんかは、この本で初めて存在を知りました。
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電視観望でもこんな感じにオリオン座中心部が描写できたらなあ、と思います。HⅡ領域が赤く、分子雲が白く表現できたら最高ですが、白黒でも十分カッコいいでしょう。

(ちなみに、この作例はケンコーR64フィルターではなく、フジSC64を使っているみたいです。)