IMG_5880
「14cmF3.6シュミットニュートン+R1フィルター+ASI294MC+AZ-GTi経緯台+SharpCap」にて、いつものようにベランダ電視観望でおこないます。今回、シュミットニュートンには、屈折系のレデューサーによる赤外域のピンボケを警戒して、あえてレデューサーを入れず、コマ収差の発生は我慢することとしました(厳密に言うとシュミット補正板のパワーが足りなくなって負の球面収差が発生するとは思いますが・・・・)。

まずはM31を導入。
m31 1
R1フィルターを入れているため、そのままではこのように赤くなりますので、カラーバランスを調整すると・・・・
m31 2
ほぼ白黒になります。で、ライブスタックと並行して画像処理をおこなっていきますと・・・
m31 ato
まあ、このくらいまでは行くようですね。でも、M31の場合、ほぼ白黒。この状態だと”Hα~赤外 電視観望”の意味はほとんどありません。素直に赤外フィルターを使って、Hα付近の帯域を入れない「赤外域のみ電視観望」のほうがコントラストが高いでしょう。

さて、もともと”Hα~赤外 電視観望”は、銀河の中のHⅡ領域を見るために想定したもの。
HⅡ領域がカラフルで良く見える銀河と言えばやはりM33になります。
m33 2 2
うーん、左下の赤い点、タランチュラですよね? その他もちょっとは出てる気もしますが、赤色のノイズと言われればノイズかも知れないです。いずれにせよ天体写真家の皆様が表現する銀河内のHⅡ領域には遠く及ばないレベル。

では、R1フィルターによる”Hα~赤外 電視観望”では、わが天の川銀河内のHⅡ領域はどう見えるのでしょうか。
btou 1
馬頭も変わった感じの表現になっていると言えはなくもないのですが、Duo-Band干渉フィルターみたいな、きめ細かな描写にはならないです。
horsehead
(↑この画像のみZWO Duo-Band filter によるもの)

露出不足の赤い成分を画像処理で無理やり持ち上げているからだと思いますが、ばらもM42もカリフォルニアも、一応赤く写るものの全く見栄えがしません。
bara 2
m42
cal
よその銀河内のHⅡ領域を見る目的だけでなく、天の川銀河内のHⅡ領域もDuoBandフィルターに差し替えることなくバッチリ見られる、というユーティリティ性ももくろんでいたのですが、やっぱり世の中そんなに甘くないですね。

仕方ないので、もう単純に赤外域での銀河の見え方を検証する方向にシフト
NGC253
ngc253
まあ、悪くないですね。南天に低く、カラーバランスが調整し切れなかったので、白黒にしました。
どうせ、彩度もほとんどないですし。

NGC2403
ngc2403kkudai
これはM33同様、赤っぽい点が、HⅡ領域? それとも赤ノイズ? って感じには写ってます。

NGC891
ngc891kakudai
コントラストを上げてエッジオン銀河の暗黒帯を出してみました。

NGC1300
ngc1300kakudai
典型的な棒渦状銀河で、実はわたくしが一番好きなやつなんですが、これも南に低くカラーバランスが取れなかったので白黒画像にしています。

NGC4565
ngc4565kakudai
これも891同様のエッジオンですが暗黒帯をはっきりと出すには至っていません。

M51
m51kakudai
こちらはフェイスオン。これも低くてカラーバランスが取れなかったのですが、白黒にするのを忘れていました。

しし座のトリプレット銀河
leo triplet
これは各銀河の構造がよくわかりました。

ハイライトはM81、82
m81,82kakudai
これは81の渦巻き構造が個人的には見応えを感じましたので、トリミングして大きな画像にしてみました。しかし通常のカラーでは非常にカラフルに写る82がモノトーンになって少し寂しくはあります。

色と言えば、面白かったのはふくろう星雲M97とサーフボード銀河M108
m97 108
R1フィルターがOⅢ等の青緑色の輝線を吸収するので、通常のカラーでは青緑に写るふくろう星雲が、赤く写っています。

しかし、このように銀河を順番に見ていくと、気分は古田俊正さんの「写真で見る小宇宙」ですね。
写真で見る
取りあえず、R1フィルターとASI294MCの組み合わせでも、銀河(小宇宙)の電視観望にそれなりのパフォーマンスを発揮することだけはわかりました。

さらにこの組み合わせによる600~900nmの周波数帯域での電視観望はASI294MCの感光特性と相俟って、対象によって、白黒気味になったり、ちょっと変わった色表現をしたりしますので面白いです。

例えば2重星団はこうなりました。
nijuu
青く強い光を発しているように見える星がアステリズムのように並んでいますが、これらの星は赤外線を強く発しているのでしょうかね? いずれにせよ、見慣れた二重星団とは違った感じで新鮮でした。

で、もしやと思ってM35も一応やってみたのですが、
m35sekigai
こちらは別にどうと言うことはありませんでした(笑)。

”Hα~赤外 電視観望”による銀河巡りですが、自分としては非常に面白かったのですが、一般ギャラリーに対してのインパクトはあんまりないかもしれませんね。何と言っても対象の視直径が小さすぎます。

やはり電視観望において、一般ギャラリーに対し「つかみはOK」にする役割は大きく広がったHⅡ領域の観望になるかな・・・