SVBONY CLS光害カットフィルター、1.25インチです。
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これは、光害の輝線をブロックして天体のコントラストを上げる「光害カットフィルター」なのですが、前回記事のASTRO LPRなどが赤外域をブロックするのとは違って赤外域を透過することが大きな特徴となっています。
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一方、CMOSカメラは赤外域に感度を持っているので、
QE-ASI224-e1529569361738
(ASI224MCの分光感度曲線)

このフィルターの使用の電視観望は赤外域を利用することができるのですが、屈折系の対物で使うと赤外域の色収差までは補正されてないので
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このように赤外域成分によって星像がピンボケになります。このとき、カラーCMOSの赤外域はRGBともに感度があるので、「青ハロ」のような色収差の体裁ではなく、白く肥大するのが特徴です。

で、今回は、反射系の対物で使うことで赤外域のピンボケを防ぎます。

「SP140SS+クローズアップレンズNo4(合成fl=437mm、合成F3.1 仕様)+ ASI294MC + AZ-GTi経緯台+SharpCap」による電視観望での検証になります。当日、月はなく、限界等級は3等見えるか見えないかくらいの条件です。
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このシステムで、赤外も含んだ広い帯域のスペクトルを発している小宇宙(銀河)を狙います。通常のデュアル・ナローバンドでは今一つ光を拾いきれない小宇宙の腕の表現が赤外域成分のパワーアシストにより少しでも向上すれば、というプランです。

まずは、本題の小宇宙(銀河)に行く前に、HⅡ領域で小手調べです。
BARA CLS8S
BATOU CLS4S14cm
CAL CLS4S14CM
M42CLS14
・・・・悪くない! 決して悪くないぞ! バックグラウンドのカブリによる周辺減光が出ているし、もちろん、コントラスト・細かい解像度などはデユアル・ナローバンドには劣りますが、7割方くらいまでは追従している感じです!

さて、本題の小宇宙はどう出る?

NGC2903(中央拡大)
2903CLS4S
お! いいですね。露出時間4秒でここまで出ました。やはり、赤外域の成分がプラスアルファされたことにより、デュアル・ナローバンドの時より小宇宙の表現が向上している気がします。

続いて、しし座トリプレット8秒露出(中央拡大)
LEOTRIPLET CLS 8S
8秒露出シリーズ、中央拡大でどんどん行きます。

M51
M51CLS8S

M63
M63CLS8S

M81.82
M81,82CLS8S

ふくろう星雲とサーフボード銀河
M97KAKUDAI
ふくろうの青緑が美しいですね。

M101
M101CLS8S

M104
M104CLS8S

M106
M106CLS8S

M109
8SM109CLS

NGC4565
NGC4565CLS 8S

次々と導入したので、画像処理が雑で申し訳ないですが、それぞれ個性のある形を楽しむことができました。ケニ屋さんも言われてましたが、これはまさに古田俊正さんの「写真で見る小宇宙」ダイジェスト版ですね!
少なくとも小宇宙に関しては、SVBONY CLSフィルターの方がデュアル・ナローバンドより適正があると言い切っていいのではないでしょうか。

さらに、おまけの球状星団M3
M3CLS8S
これもいいですね!

もうちょっと小さめのM53もこの通り。
M53CLS8S

さらに散開星団
M45CLS4S
プレアデスの反射星雲がよく出ています。周辺減光以外は言うことありません。

そして、今回うれしい誤算とでもいうべきはM35
M35CLS8S

青い星、黄色い星が美しいので少し拡大。
M35KAKUDAI

この星の色の豊かな表現は広い帯域を拾うフィルターならではと言えます。少なくともデュアル・ナローバンドにはないものですね。

これらの結果を総合すると、CMOSカメラと反射系対物を使った電視観望における、SVBONY CLSフィルターは、各種の天体に対して最強の汎用性を示す、と結論付けてもよいのではないでしょうか? 上の画像はいずれも中央拡大したものですので、特に小宇宙を狙う限りはASI294MCのような広いセンサー面積は必要なく、販売価格3万円程度の224MCでも十分であるともいえます(導入の問題はありますが)。

欠点としては、バックグラウンドのカブリもそこそこ拾うので、天体の強調処理によって周辺減光が目立ってしまうことがあげられます。特に今回使用した140SSではその傾向が強かったです。

うーん、こうなったら、周辺光量100%の反射系鏡筒を製作するしかないか?
一応、構想はあるのですが・・・・