激安85mmF1.8 レンズの実践編レポートを楽しみにしてくださっている方には申し訳ないのですが、今日も曇ってしまいました。「Cloudy Night」ということになりましたので、現在、電視観望について自分が感じていることを、自分勝手に述べようと思います。

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(ビルの屋上での電視観望)

さて、昨年の8月、ちょっとした「冷やかし」程度の気持ちでスタートした電視観望ですが、全くの予想外にどっぷりと漬かってしまいました(笑)。さまざまな試行錯誤を繰り返すうちに、どうやら「自動導入経緯台+CMOSカメラ」のシステムが自分のスタイルに合っているらしいぞ、と思いはじめたのですが、電視観望のどういう部分に個人的メリットを感じているかを、この6ヵ月の総括として考察してみたいと思います。

一言でいえば、電視観望最大のメリットは「時短」にあり、です。その「時短要素」を順番に述べますと

①自宅ベランダで可能なので、空の暗いところに移動する必要がない
(移動時間・機材の積み下ろし時間の節約)

②暗い天体でも自動導入でき、また対象がはっきり見えるので判別も容易
(導入時間・対象判定時間の節約)

③口径に対しての検出限界等級が高く観望対象が多いため小口径で十分なパフォーマンスを示す
(機材の小型化による、システム設置時間・メンテナンス時間の節約)


①~③の要素が総合して発揮する時間当たりのパフォーマンスはすさまじく、こればかりは天体写真、眼視観望(両方とも自分は少し「かじった」程度なのですが)のどちらのスタイルも寄せ付けません。

現実に最近は、ここ20年くらいでは最高の天文機材稼働率を体感しています。

昨今のアマチュア天体写真家の皆さんによる素晴らしい天体写真は、数十時間の露光に無限大の画像処理時間を加えて生み出されている驚くべき努力の賜物で、とても一晩に多数の対象を次々と撮れるようなものではなくなってしまいました。
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移動時間、機材設置、帰宅後の画像処理(4枚合成、色調・コントラスト調整ぐらいですが)などでこの程度の画像でもおそらく数時間は費やしていると思います(ちなみに昨今のアマチュア天体写真家による作品はこの画像の10倍くらいの解像度を持っています)。

それに対して電視観望では、光害地の自宅でもこれに近い結果を、5分程度の露光の間に画像処理を並行させることで得られますので、
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天体写真と比べて、圧倒的に多数の天体を次々と対象にできます。

さて、眼視観望の場合、同じく多くの対象を次々と楽しむことができるのですが、観賞価値のある観望対象を増やすためには、大口径望遠鏡と光害のない観望地、加えて月明かりがない事、良シーイングなどが必須となります。そのため、たとえば50cmクラスの望遠鏡を空の暗いところに持って行って、そのベスト・パフォーマンスを発揮できる機会は、年に2~3回訪れればいい方でしょう。
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 (総重量110kgの50㎝ドブソニアン望遠鏡 眼視観望に絶大な力を発揮するが、遠征先への運搬・設置等の稼働が大変)

それに対し、電視観望では晴れてさえいれば月齢には関係なく自宅の庭やベランダで十分なパフォーマンスを味わうことができます。
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(総重量6kgの8cmF4システムによるベランダ電視観望。50㎝の眼視よりはるかに暗い天体をとらえることができます)

このように、自分の場合は電視観望という新たなスタイルにより、停滞気味だった天文ライフが俄然、勢いを増してきました。しかし、だからと言って、従前の天体写真(超絶的に暗い天体の検出と高解像度表現)や眼視観望(繊細で豊かな階調とシャープネス)などの価値が下がるわけではなく、天文趣味に、新たな選択肢が「プラス・アルファー」されつつある喜ばしい状況と言えます。
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(電視観望のオプションのひとつ、「Hα単色光観望」)

さて、ここまで読んでくださって、電視観望はじめたくなったけど、何を買えばいいの? また、なんぼかかるんじゃい? という疑問が生じたと思いますので、独断で言い切ってみようと思いますが、自分でも使ったことのない無責任な組み合わせなので話半分で聞いてください(笑)。

画像処理ソフトSharpCap(とりあえず無料版でも十分)は必須。
使いまわしのノートパソコンは各自所有しているものとします。

AZ-GTi経緯台(+ハーフピラー、三脚)4万

デュアル・ナローバンドフィルター(現状ではQBPの31.7mmが最安で1.1万)

CMOSカメラはZWO ASI385MC(センサーサイズ 7.3x4.1mm) 4.8万

鏡筒はAZ-GTiに載せられるものなら何でも使用可能なのですが、ASI385MCのセンサーサイズでは、焦点距離が200mmを超えるとAZ-GTIでの一発自動導入がおそらくできませんので、ここはあえて、200mmF4程度の「望遠レンズ」がおすすめです。CanonのFDマウントレンズなど、現行落ちの古いものなら2000円以下で買えますが、おそらくアダプタに7000円くらい必要(笑)

安価な使用レンズの一例↓
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(CanonFD 70-210mmF4 1,565円(落札金額:800円  送料:765円)…自分は200mmF2.8の導入ですでに「お蔵入り」させてしまいまぃたが、電視観望スタート時点ではおそらくこれで十分)

さあ、これでパソコン別で合計11万弱くらいになるでしょうか。うーん、まだまだちょっと高い気はしますね。手持ちの鏡筒と架台があれば、CMOSカメラとQBPフィルターだけで6万も可能かな?

最重要アイテムのCMOSカメラですが、センサーサイズと価格の兼ね合いでは一番コストパフォーマンスのよいのがASI385MCだと思われます。さらに4万くらいプラスすれば、ASI385MCの約8倍のセンサー面積を持ち、現状、最も電視観望に適しているASI294MCを選ぶこともできます。なお、電視観望のためのカメラ選びについては、Samさんが決定版とも言える資料を提供してくださっています。
 
自分のようにオールインワンの「Revolution Imager」からスタートする手もありますが、
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イニシャルコストが4万強と上にあげたセットより断然安いものの、これはむしろ「電視観望のベテランが様々な制約と戦いながら、ここまで見えた! と遊ぶ用」という感じなので、初心者の場合でも、SharpCapでCMOSカメラの画像を処理する練習から入った方がいい、と自分は考えます(ちなみに自分も、もっと電視観望のスキルを上げた暁にはRevolution Imagerの潜在能力を爆発させてやろうと企てています!)。

ともあれ、創意工夫に優れた方々が、このジャンルに次々とエントリーしてくだされば、電視観望の運用ブレークスルーも次々と起こって、非常に楽しさが拡がる予感がしますので、新規参入を強くお勧めするところです!

・・・・明日の電視観望の歴史を作るのは、あなただ!