発売されたばかりの、サイトロン Quad BP(クアッド バンドパス)フィルターの31.7mmを入手しております。
IMG_6040
これはこのような周波数特性で
qbpf_g
デュアル・ナローバンドの中では比較的広い周波数域を拾うものです。

デュアル・ナローバンドは、以前、”ZWO Duo-Band FilterとSTC Astro Duo NarrowBand Filterの比較を行いましたが、今回、今一度3つのフィルターを比較してみたいと思います。

ZWO Duo-Band Filterはこのような特性。
ZWO-Duo-Band-filter-2
特に、Hαの部分でQBPと比べて帯域が狭くなっています。

続いて、STC Astro Duo NarrowBand。
DuoNarrowband_Spectrum_2_JP
さらに、500nmあたりが狭くなっています。すごく乱暴に言うと
QBP→ZWO→STC、の順で特性がシビアになって行く、という感じでしょうか。

さて、今回は「ミザールBN-80 + ケンコークローズアップレンズNo4(8cmF4仕様)」にASI294MC、AZ-GTi経緯台、SharpCapでの検証です。空は限界3等程度。
IMG_6041
ただし、QBPは31.7mm、ZWO、STCは48mmでフィルター径が違うのと、フィルターの場所もQBPのほうがセンサーに近い位置になっています。

まずはQBP、16秒露出。
2 baraqbp16s2
ZWOのように赤の成分が弱くて持ち上げきれない、ということはなく、カラーバランスがとりやすいです。HⅡ領域も良く出ていますね。
しかし、いきなり、あれ? なんですけど、すが、輝星のまわりに、青ハロならぬならぬ赤ハロが出てしまっていますね?

おかしいな、フィルターかレンズが曇ったかな? と思って外して見てみましたがそう言うことはなかったです。うーん、QBPってこんなだったかな? と思いながら、ZWOにチェンジ。16秒露出。
2 barazwo16s
こっちのほうがわずかにコントラストよく出ていますが、これは画像処理の違いも大きいので、体感的にはHⅡ領域の出方は同じくらいでしょうか。しかし、ZWOはライブスタックの時に赤の成分を持ち上げないとカラーバランスが取れないので、QBPよりひと手間多いです。これは「時短」の意味ではややマイナス。

ただ、星像はQBPのような赤ハロがなく、かなりシャープです。ピント合わせは同じ方法(ディスプレイ上で800%倍に拡大して輝星はできるだけ面積が小さくなるように、微光星は直径2~3ピクセルまで追い込む)なので、フィルターの違いとしか言いようがないです。

続いてSTC、同じく16秒露出。
2 barastc16s
ああ、やっぱりこれがベストですね。カラーバランスも調整しやすく、星像もさらにシャープ。また、諧調が豊かなので、HⅡ領域がよく見えるように画像処理をするときに自由度が高く、いろいろな表現のしかたができます。前回の検証ではここまでの違いは感じなかったのですが、今日はその時よりやや透明度が高いので、STCの潜在能力がより発揮されたということでしょうか。

まあ、STCはほかの2つと比べてフィルターの価格が倍以上なので、当然と言えば当然です。
ほぼ同価格帯のQBPとZWOなら・・・赤ハロがなければカラーバランスのとりやすいQBPなのですが、現状ではZWOの選択になるでしょうか。

しかし、気になるのはQBPの赤ハロですね。
CanonFD200mmF2.8にレンズをチェンジしてQBPでやってみましたが・・・
batou200mmF2.8QBP8s
なんか、ますます出てる気が・・・・これはひょっとしてQBPの仕様なのでしょうか?

今回は久しぶりに望遠鏡のアクロマートレンズを使ってみましたが、デュアル・ナローバンドとの組み合わせでは、望遠レンズよりはかなりシャープな星像を示しますね。少し気を良くして、STCと8cmアクロマートでいくつか見てみました。

モンキーヘッド、16秒。
2 monkeyhead16s

馬頭星雲、32秒。
batou30s

M42、4秒。m42 4s
こういう輝度の高いものはあんまり露出をかけないほうがいいかもしれないです。

たとえば16秒だと
m42 16s
中心が飽和する割には周辺部が出ないので、何だか損した気分。まあ、画像処理がうまくできてないだけかもしれないですけど。

あと、一応、小宇宙(銀河)のデュアル・ナローバンドでの見え方確認のために、しし座トリプレット32秒(部分拡大)。
leo triplet
まあ、悪くはないですが、32秒まで露出しないとここまで出ませんでした。

先日、「SVBONY CLS光害カットフィルター + SP140SS + クローズアップレンズNo4(合成fl=437mm、合成F3.1 仕様)」でおこなった、「可視光~赤外」電視観望での8秒露出の方がはるかに小宇宙の構造が見やすいです。
LEOTRIPLET CLS 8S
色調もこちらのほうが自然ですね。

もちろん、F4とF3.1の明るさの違いはあるのですが、屈折のF4は反射のF3.5くらいに相当する(2面の反射による損失を考慮)ことを考えるとF3.1のSP14SS改はF4のBN80改の1.3倍くらいしか明るくないですので、この露出時間の差は非常に大きなものと言えます。

SVBONY CLSによる「可視光~赤外」電視観望のアドバンテージも明らかになりましたね!

本当に、電視観望におけるフィルターワークは奥が深いです。
今後とも、思いついたことはどんどん検証していきたいと思っています!

P.S.こないだ思いついたこと → CMOSカメラの紫外線感度を生かし390nm付近で金星の模様を見る などなど