昨日、サイトロン Quad BP(クアッド バンドパス)フィルターを電視観望に使用して、輝星のまわりに「赤ハロ」が出る理由がわからなかったので、取りあえず購入した販売店さんに問い合わせると、「QBPは波長域が広めなので、使用する光学系の軸上色収差が出る場合があります」とのことでしたので、「ああ、そうか、ZWOやSTCはHαのとこ狭いけど、QBPは50nmくらい幅があるもんな。この範囲で色収差が出たのか」と勝手に納得していました。

それなら、反射でやったら出ないはずだしね。
と思って、「SP140SS+クローズアップレンズNo4(合成fl=437mm、合成F3.1 仕様)+ ASI294MC + AZ-GTi経緯台+SharpCap」にQBPフィルターで検証をおこないました。
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透明度はよさそうなのですが、半月前くらいの月があるので、限界等級は2等星が見えるか見えないかくらいの条件です。
bara 8s
ああ、予想通り、例の「赤ハロ」は出ませんね。これにより、昨日の「赤ハロ」は使用した8cmアクロマートの色収差が出ていたものと判明!

けど、ここではたと思ったのですが、50nmくらいの幅でそんなに色収差が出るとは思えない、QBPの周波数特性は、こう発表されているのですが

qbpf_g
実際の製品はこんな一分のスキもない特性ではなく、ひょっとして、赤外域あたりが漏れてきてピンボケを起こしているんじゃないか?

で、試しにQBPフィルターを通してテレビの赤外線リモコンを操作してみましたところ・・・・
え、通る!? テレビがつきました。
「SVBONY CLSフィルター」で同じようにリモコンを通してみたら、やっぱりこれも通る。しかしこのフィルターはもともと公式にも赤外線を透過するという設定。では赤外が通らないとされている、「ケンコーASTORO LPR」は・・・通らない。この2つは公表されているデータ通りですね。

しかし、QBPは公表されているグラフでは赤外域を通さないようになっているのですが、これは正しくないのでしょうか?

ここで、昨日の赤ハロを再現するべく、アクロマートレンズである「ミザールBN-80 + ケンコークローズアップレンズNo4(8cmF4仕様)」に鏡筒を交換。
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どうかな?
bara qbp16s
あ、やっぱり出ますね。もしこの赤ハロが赤外域ピンボケで起こっているんだとしたら、
このような特性のUV/IRカットフィルターで
5b24f562-s
取り除けるはず。
QBPフィルターにさらにUV/IRカットフィルターを重ねてねじ込み、「ダブルスタック」の体裁にして・・・と。
bara qbpuvir16s
やはり! 赤ハロがなくなりました! フィルター2枚重ねているのでやや星像が肥大(収束光中の平行平面ガラスによって起こる負の球面収差?)していますが、輝星のまわりはすっきりしました。

これで、QBPフィルターは少なくとも700nmより長い波長域を通しており、その帯域の色収差を補正してない光学系(普通のアクロマートとか)を使うと、ピンボケになる可能性が示唆されたと見てよいでしょう。

実際、色収差のない反射(140ss)では「赤ハロ」が発生しませんでしたし、さらに「フローライト・アポクロマート」のような色収差がよく補正されている光学系なら、QBPの「赤ハロ」は発生しないと類推していくこともできますね。

さて、ここでこの「赤ハロ」はどういう周波数域かを推測してみようと思います。

CMOSカメラの赤外域感度分布を考えると
QE-ASI224-e1529569361738
(実際に使用したASI294MCの赤外域感度は発表されておらず不明なため、ASI224MCのグラフで代用)

このグラフによれば、800nm以上になるとRGBとも同じように感度があるから「白ハロ」になるはず。
「赤ハロ」として表現されるのは、700~800nmくらいの帯域になるでしょうかね。

以上の結果や仮定から考えると、自分の手元にある、「サイトロン Quad BPフィルター31.7mm仕様」は700~800の赤色光~近赤外域を通している可能性があります。これは、すべてのQBPフィルターに言えることなのか、自分のがたまたまイレギュラーなのかはわかりません。
しかし、メーカーは実際の製品の性能に即したデータを公表すべきと考えます。

・・・って、難しいことを言ってしまいましたが、実は以前から
赤外域も通すデュアル・ナローバンドが欲しかったのです。
今回、「ケガの功名」的な形ではありますが、個人的に利用価値を感じている念願のそれが入手できたかもしれない? ということで、次回更新にてQBPの驚愕のパフォーマンスをご報告しようと思います!

乞うご期待!