オールフィルター大進撃~電視観望で汎用性最強のフィルターを探せ(実践編1 HⅡ領域)に続き、今回は、「実践編2」として小宇宙(系外銀河)の検証結果を報告します。

SP140SS改14㎝合成F3.1鏡筒にAZ-GTi経緯台、ASI294MC、SharpCap 6種のフィルターも前回同様です。4秒露出での結果(スタック枚数は数十枚の成り行き)を順に見ていただきますが、視直径が小さいので視野中心の部分拡大になります。対象は、しし座のNGC2903

まずはノーフィルター
2903 no fil 48
いや、これは悪くないですね。HⅡ領域と違って、小宇宙(系外銀河)は光害地のノーフィルターでも充分観賞価値がありそうです。赤外域の成分も効いているのかな? これを標準にするとなると、評価「4.0」程度でしょうか。


①「light pollution」
41DWnzYaoGL._AC_

2903 lp
うん、ノーフィルターから少しコントラストがつきました。光害カット効果はありそうですね! 評価「4.2」といったところでしょうか!


②「SVBONY CLS」
88169ec1

cls 2903
これは明らかに、前の2つと比べて腕の構造や周辺部の淡い部分の表現が向上しています。これまでのNGC2903での電視観望では最高の見え方ですね。うーん、これは、評価「5.0」で!

③「ASTORO LPR type1」
astro_ lpr type1_img01

lpr2903 4s
ああ、これもいいですね!「SVBONY CLS」にわずかに劣りますが、構造が良く出ています。CLSとの差はやはり赤外成分がないからでしょうか。評価「4.8」!

さて、続いてHⅡ領域の表現では圧倒的なパフォーマンスを発揮した、デュアル
・ナローバンドの三枚です。

④「サイトロンQuad Band pass」
qbpf_g
qbp2903 4S
ああ、これは棒渦構造がややはっきりしなくなる程度にコントラストが落ちてしまいましたね。ノーフィルターより少し悪いです。評価「3.8」かな?

⑤「ZWO Duo-Band」
ZWO-Duo-Band-filter-2

zwo 2903 4s
ああ、これはさらに悪くなって、露出不足もいいとこの上にZWOの特徴で青みが強い状態です。観賞価値は? のレベルですね。評価「2.8」。


⑥「STC ASTORO-DUO Narrowband」
DuoNarrowband_Spectrum_2_JP
stc 2903 4s
これもZWOに負けず劣らずの露出不足。いや、さらに悪いか。いいとこは、ピントがシャープになっているところくらいでしょうか。、デュアル・ナローバンドの王も、小宇宙が対象では相手が悪かったですね。評価「2.6」。

さて、以上、バンドの狭いフィルターほどコントラストがつけられたHⅡ領域とは逆に、光害をカットしつつもできるだけバンドの広いフィルターのほうが小宇宙を良く表現する、という結果になりました。

が、ここで、デュアル・ナローバンド三種の特別オプションとして、4倍露出の16秒での結果を見る、をやってみましたところ・・・・

⑥「STC ASTORO-DUO Narrowband」(16秒)
stc 2903 16s
お、さすがに向上しましたね。しかし、QBP4秒よりちょっと悪いくらい。評価「3.5」かな。

⑤「ZWO Duo-Band」(16秒)
zwo 2903 16s3
これはQBP4秒より少し悪いくらいかな。評価「3.7」

④「サイトロンQuad Band pass」(16秒)qbp2903 16S
これは、他のデュアル・ナローバンド2種類とは違って充分鑑賞できるレベルですね! これも赤外成分が効いてるのかな? 

QBPが950nmあたりの赤外線を透過していると無理に仮定して、4倍露出で赤外成分の蓄積が効いてきた、と無理やりこじつけることもできます。ASI294MCのこの帯域の感度は可視光の20%程度と考えると、4倍露出の整合性もある感じがします。この16秒露出での、NGC2904の表現は「ASTORO LPR」4秒露出より少し落ちますが、評価「4.5」はつけられるでしょう。QBPは露出時間さえかければ小宇宙の電視観望にも実用性があるということですね。やっぱりQBPは「ハンパなかった」です。

さて、各フィルターの通信簿です。
無題
4秒露出での総合評価は、SVBONY CLSが最高で8.5。短い露出時間でHⅡ領域にはそれなり、小宇宙では最高のパフォーマンスを示しました。
反面、ZWOやSTCのデュアル・ナローバンドはHⅡ領域では優れているものの、小宇宙で惨敗。
やはり、HⅡ領域で電視観望に必要十分な性能があり、小宇宙でも露出を延ばすことでかなりの表現ができるQBPが、やはり汎用性最強、ということになりそうでしょうか?

ということで、電視観望に使うフィルター、最初の一枚はQBPを買いましょう! という結論になりました。

***

・・・・しかし、ここで大どんでん返しなのですが、今回の実験で、さんざんフィルターを差し替えてピント合わせ直しを試みていたことでフィルターを変えても実用上ピント位置が変わらないフィルターの組み合わせがある、ということが判明いたしました。

したがって、フィルターターレットもしくはスライダーを導入して、小宇宙などの連続スペクトルものには「SVBONY CLS」を、HⅡ領域などの輝線スペクトル物にはいずれかのデュアル・ナローバンドを切り替えて使うというのが「時短」電視観望実現にベストの方法として、俄然、浮上してきたのであります(笑)。やっぱり、限られた条件でもできるだけ最高に光学系の性能を発揮した状態で見たいですので・・・・

というわけで、当ブログの電視観望ポリシーは、自分勝手にどんどん変遷していくのであります。
いずれ、そっち方面の運用・報告もあろうかと!