さて、前回記事で光学ウインドウ除去を敢行したSV305のレス改造機ですが、さっそくLambdaさんからお借りしているSV305のノーマル機と比較することにします(レス改造機、ノーマル機ともSharpCapによるダーク減算をおこないました)。
IMG_6632
「ケンコーNEWスカイステージ改・76mmF3.7鏡筒(fl=280mm) + QBPフィルター + SV305 + AZ-GTi経緯台 + SharpCap」のシステムでの検証となります。空の条件は当方自宅としてはまずまずの限界等級3等程度、比較的透明度もよさそうでした。

さて、まずはSV305のノーマル機を使い、対象は、昇ってきたばかりでかなり低空のM57、8秒露出。
lm57 16s 6stack
輝度の高いM57は写ってはいますけど、星の写りが少なくて認識しないのかフレーム・アラインができないんですね。仕方ないのでフレーム・アラインを切ってLiveStack6枚。星を追わずに画面の同じ位置をコンポジットするだけなので、これ以上やるとズレます。そしてもちろん横縞ノイズは健在。

続いて、レス改造機、同じく8秒露出。
m57 8s 80stack
・・・・! こっちの方が断然星の数が多い! これはノーマル機と比べて感度が相当高い感じがします。で、もちろんフレーム・アラインができるので、Livestackの枚数を増やすことで、横縞ノイズも出てはいるのですがかなり目立たなくすることができます! 調子に乗って81スタックもしてしまいましたので厳密な比較ができないのですが、とにかく高感度な印象が残りました。

それぞれをM57の中央拡大で見てみますと・・・
↓ノーマル機。この視野には星がほとんど写ってないですね。
lm57 8s 6stack kakudai
↓レス改造機。スタック枚数が多いことでSN比が向上していることを割り引いても星が明らかにたくさん写っています。
m57 8S 85stack
光学ウインドウを取り除くことで、ここまで劇的なパフォーマンスの向上があるとは思いませんでした。これはもう、比較作業は終了し、レス改造機の性能を見るモードに移ります。

同じく、昇ってきたばかりで低空のM27を8秒露出にて。下の画像は6枚スタック。
m278s 6stack
この状態では、例の横縞ノイズが出ていますね。しかしこれを30スタックもすれば・・・
m27 8s 30stack
はい、もうほとんど問題ありません。SV305の懸案事項である横縞ノイズは、スタック枚数をかせぐことで、かなり目立たなくすることができるようです。さらに露出時間を倍の16秒にし、102スタックほどしてみますと・・・・
m27 16s 102stack
ノイズは皆無となります! しかし、このM27、青緑色も赤色も比較的彩度が高く出ています。SvBONYのオフィシャルサイトにM27の作例があるのですが、赤の部分があんまり写ってないんですよね。これによりノーマル機の光学ウインドウが、赤外線のみならずHαをも減衰させている? 可能性が示唆されています。
IMG_6636
(このように、望遠鏡の仰角はかなり低い状態です)

さて、惑星状星雲はよく写りましたが、小宇宙(銀河)はどうかな? でM104、16秒露出。
m104 16s 24stack
あ、まあ悪くないですね。視野内に星が少ないのですが、なんとか24スタックできました(35イグノア)。銀河の場合、フレーム・アラインが成功するかどうかが問題になりますね。ちなみに、この後、M51にも行ったのですが、どうしてもLiveStackが成功せず断念。

ならばと、対象をHⅡ領域に切り替えていきます。三日月星雲、16秒。
mikaduki16s 40stack
銀河の中ですと星がたくさんあるので、フレーム・アラインも大丈夫です。では、どんどん行きます。

M20、8秒、50スタック
m20 8s 50stack
このレベルで個人的にはほとんど問題ないのですが、少し横縞ノイズが残っていますので、露出時間をたっぷりの32秒、20スタックとしてみると、
m20 32s 20stack
横縞はほとんどなくなります。拡大して明るさを上げてみてもこの通り。
m20kyoutyou2
ただ、M20のように輝度がそこそこ高いものはこんな感じにできますが、それに比べると輝度が低い網状星雲とかになりますと・・・・・16秒露出、30スタックで。ami16s 30stack
これはどうしても横縞ノイズが取れなかったです。
あと、なぜかこの網状星雲では32秒露出で逆にフレーム・アラインができませんでした。
これは理由が不明です。

さて、もう少し明るいM16では横縞が目立たなくなってきます。
m16 2
拡大して見ると「創造の柱」も一応分かりました。
m16 souzou
さらに、M17のような高輝度のものはコントラストも上げられ、かなり見栄えがします。16秒、42スタック。
m17 3
M8もまた然り。32秒、27スタック。
m8 32s 27stack
これら、M16、17、8の頃には完全に下弦の月が昇って空がだいぶ明るくなっていましたが、QBPフィルターの威力で、その影響をかんじないものとなっています。
何より、光学ウインドウの除去により、IMX290センサーがその潜在能力を余すところなく発揮したときのパフォーマンスを思い知る形となりました。SvBONYさんには、ぜひとも素通しのガラスを光学ウインドウとした仕様(取り外し可能なUV/IRフィルターを付属させるとか)の「SV305Ⅱ」にバージョンアップしてもらいたいですね。

さて、SvBONY SV305「レス改造機」の全体的な印象は、ASI294MCの電視観望画面を「中央拡大」した時によく似ています。ただ、感度はやはり少し低く、294MCの倍の露出で同じくらいの写りになる感じですね。
・・・しかし、何と言ってもSV305の価格は16,999円(アマゾン)、これでこの性能ですから、驚異のコストパフォーマンスと言えます。もちろん、フルに性能を発揮させるにはそれなりの工夫と操作が必要ですが、電視観望エントリーを考えている皆さんに、最もエコノミーな選択肢の一つが提示されたと言えるのではないでしょうか? 

SV305、今後の懸案
1 輝度の低い対象での横縞ノイズ対策
2 バックグラウンドに星が少ない場合のフレーム・アライン

この2つが解決すれば、もう怖いものはなく・・・