電視観望においては「いいも悪いもフィルター次第」という鉄人28号みたいなセオリーが確立しつつあり、しかし、最適フィルターの選択は、各々の目的、機材、対象天体によって全く異なるため、今後もエキスパートの皆さまによる様々なカット&トライが想定されます。
当ブログでも特に電視観望におけるフィルター・ワークについては重視しており、「最強のフィルターを求める旅」とでも言うべき企画を乱発してまいりました。
さて、前置きが長くなりましたが今回のテーマは
アクロマートでの電視観望に最適なフィルター
の考察です!
アクロマートとは眼視用にもっとも目立つC線とF線の2色についてのみ焦点位置を一致させた(と同時に球面収差も補正された)レンズで、色にじみで星像がボケるため、写真用(電視観望用)には不適とされてきました。
しかし、アクロマートとデュアル・ナローバンドの組み合わせで、色収差を皆無にする提案があぷらなーとさんからなされたことで、一気にその実用性が花開いた経緯があります。
今回はいくつかのフィルターを使い、アクロマート対物での電視観望でどのような挙動を示すのか調べてみました。
「ミザールBN-80改・8cmF4屈折(クローズアップレンズNo4使用)+AZ-GTi経緯台+ASI294MC+SharpCap」
しかし、当日は全天このような薄曇りの天気。
1等星が何とか見えるので、とりあえずAZ-GTiのアライメントだけでもやっておこうと、上の一式をベランダに出しました。
スピカとベガでアライメントを終えて導入機能の確認のためにM13を試しに入れてみたところ・・・
・・・何? これ、予想外に結構見えるんじゃ・・・?
これは検証実験できるのでは? で、条件が変わらないうちに大急ぎで実行。
まず、上のノーフィルター状態ですが、今回使用しているASI294MC のようなCMOSカメラは多くの場合、感光域が1000nmくらいまでの赤外までに広がっているため、
この成分がピンボケを起こし、輝星はこのように「白ハロ」(800nm以降RGBの感度が同じ)状態となります。M13もピンボケになってますね。
さて、これでは困るのでいろいろなフィルターの登場となります。
まずは、UV/IRカットフィルター

これは、定番とも言えるフィルターで、これを入れることで、
(4秒露出、30スタック)
「白ハロ」はほとんどなくなり。すっきりした星像となりました。ただし、このフィルターは可視光をほとんど通すので、光害カット効果はほとんどなく、さらに、この画像では目立たないのですが、輝星に青ハロが発生するというアクロマート独特の味付けになります(まあ、これを逆手に取って観賞価値を求める場合もあります)。
次に反射系対物で小宇宙の淡い腕の表現にはNo1の実力を発揮する、Sv BONY CLSフィルター

これは水銀灯など光害の原因となる輝線をカットするとともに、比較的広いバンド、さらに赤外域を通すのが特徴です。反射系対物では、この赤外域のプラスαが大きなアドバンテージになっていると考えられます。
それなら、光害をカットしつつ、赤外も通さない、ミザールμフィルターでは?

(このグラフには赤外域が出てないけど、カットしていると仮定します)
ここで、最終兵器、サイトロンQBPです。

しかし・・・・

さすがの最強QBPでも、アクロマートでは「赤ハロ」が発生するという欠点があるのです(これはモーリスさんも10㎝F5アクロマートでの結果で報告されています)。「白ハロ」でなく「赤ハロ」になるということは、GBに対してRの感度が高い、700~800nmあたりの帯域としか考えられないのですが・・・
で、QBPにUV/IRカットフィルターをかぶせた「ダブルスタック」にしてみますと・・・
で、ここでQBPのライバル、ZWO duo-Band フィルター

QBPよりHα付近の帯域がかなり狭いのが特徴です。
空の条件が悪かったといえ、このように小宇宙が全然写らないんですよ。この辺がQBPと比べて今一つ。
で、結論
アクロマート屈折で電視観望する場合、フィルターは「QBP+UV/IR」のダブルスタックを使え!
ということになりました、今のところ。
しかし、この分野はまだまだいろいろな可能性があり、最適フィルターの考察は
「本当の戦いはこれからだ! 」と言えるでしょう。
さて、せっかく、ZWO duo-Band が付いているので、大好きなHⅡ領域も少し。M8,20 8秒露出 20スタック
しかし、よく見ると普段なら見えるM20の青い反射星雲が全く出ていません。これは赤いHαは雲を通してそこそこ見えるけど、青い光は雲に散乱されて届かない、ということでしょうか?
そう言えば、先日、強烈な彩度で驚かされた、網状星雲のOⅢはそんなに出ていなかったですね。
・・・もちろんアクロマートも使いこなし次第で相当いけますよ!
コメント
コメント一覧 (10)
uwakinabokura
が
しました
*せっかく貴重な実験なのに、まったく関係ない話題で終始して、申し訳ないです(ただ、この一連のやり取りは、自分の友人のモーリスさんは面白がっていると思います)。
uwakinabokura
が
しました
電子観望におけるPCの必要スペック記事からこちらを拝見させて頂きました。その流れでこの記事を拝見したのですが最初の方にあった薄曇りの状態の月を撮影した写真がありましたがあの様な状況でも電子観望って可能なのでしょうか?まだCMOSカメラを使いこなせてないし光学知識皆無なんでお暇な時にでもお応え頂けると幸いです。
一応ブログもやっていますのでそれこそお暇な時の時間潰しにでも。
https://rin0724.hatenablog.com/
uwakinabokura
が
しました