記録より 記憶に残る 大彗星 

多くの方同様、ネオワイズ彗星の空振りを長く続けておりまして、その「成果なき苦行」は生活にも少し影響を及ぼすほどでした。もちろん好きでやっていることなので文句を言う筋合いではありませんが、メンタルを削られつつのタイムリミットが迫る中、そろそろ結果が欲しくなるのも人情というものでしょうか。

と言うわけで、昨日のGPVによれば、20~21時頃、当方居住地周辺でスポット的に雲が切れそうな予報、これは最初で最後のチャンスになるかもしれない、と判断、何とか定時に退勤できたのでASI294MCとAZ-GTiの電視観望セットとともに北が開けた場所に近征(?)してみました。

ただし18時頃はまだこのような状況。
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空港が近いのでよく飛行機が飛びます。肝心の北西方向は厚い積乱雲です。
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そして積乱雲と来ればお約束の夕立が18時30分ごろに降ってきました。
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振りながら夕日が差しているので、なかなかに濃い虹が見られました。しかし、今回は虹はいらん(笑)

だいぶ暗くなってきた19時45分、やっと北西方向が晴れ始めます。
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雲の切れ間で見えていた、北極星とベガを使ってAZ-GTiを2点アライメント。最近SynScanに追加された「Comet」のコマンドからネオワイズ彗星を選んで導入。つくづくAZ-GTiはいい仕事をしますね(・・・ん? 後で気づいたけど彗星を「ポイント&トラック」すればメトカーフ追尾ができるってこと? ますます凄いぞ!)

ちなみにフィルターは「Light pollution filter」を使っています。
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彗星は400nmあたりの波長も使いたいので、手持ちのフィルターからその帯域を通するものを選びました。本来なら電視観望では絶大な実績のある、SvbonyCLSかサイトロンQBPを使いたかったのですけれど、いずれも400nmあたりを通さないのでイオンテールを消してしまうかもしれません。本当は専用品のコメット・バンドパス・フィルターを使えば良いのでしょうけど、まだ持ってないのです。

さて、いつものようにSharpCapによる画像処理、レンズは取りあえず18mm-55mmのズームレンズを18mmF3.5で使っています。
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19時50分、これで視野中央に彗星がいるはずですがまだ雲の向こうですね。55mmF5.6までズームアップしてもう少し待ちます。

20時17分、ひょっとしてこれ?
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ディスプレイの中央を拡大して強調処理。
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彗星ですね。間違いありません。それほど感動はなく、ホッとしたというのが正直なところでしょうか(笑)。雲を通してなのでコントラストが低く、肉眼はもちろん双眼鏡でも全く見えませんでした。雲がかかっていて、ギリギリ見えるかどうかの状況での検出は、電視観望にかなりのアドバンテージがあるようです。

20時25分~30分。まだ彗星の上を雲が流れていますが、だいぶ薄くはなってきました。
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このように、雲を通してでもダストテイルは分かりますが、あまり長くは見えないですね。長く延びた尾を写したかったので短い焦点距離にしていましたが、今日の条件ではあまり出なそうなので、レンズを55-200mmに交換し、200mmF5.6にして4秒露出。
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この時間帯は雲がかなり薄くなって来ていて、イオンテールも出てきた気がします。では、もう少し露出を延ばして8秒では?
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青いイオンテールもだいぶはっきりしましたね。しかし8秒露出ではバックグラウンドのカブリも大きく、それを画像処理で押さえこんでいる状態です。さらに時々濃い雲も通っているのでしょうか、不規則なカブリになっていますね。

また、16秒、32秒と露出も延長してみましたが、バックのカブリの増大の方が大きく、彗星のコントラストが下がる上に、ライブスタックのフレームアラインもできなくなる、という逆効果でした。

この日の条件では4~8秒が適正露出だったでしょうか。ちなみに8秒の一枚画像だとこんな感じ。
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むしろ、こっちのほうが「シブい表現」になっているかもしれません。

この後、薄雲がなくなって尾が長く写り始めるのを期待して、構図を横向きに変更、左側が地平線側になります。
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やはり地平線側が明るくかぶりますね。ライブスタック枚数を増やし強調処理すると・・・
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あ、いかん、ダーク引くの忘れて「ちりめんノイズ」が発生している上にピントが少しずれているぞ。よし、ダーク設定して、ピントも合わせなおして・・・・と、やっている間に。

曇りました(笑)。

21時30分、これまで何度も味わっている、「北西方向の低空だけ曇る」です。
フィルターが多種類ありますので、いろいろ交換して彗星の写り方を見たかったのだけれども、そこまでの時間的余裕がありませんでした。しかし、1時間あまりは電視観望にて彗星らしい姿を検出できましので、これまでの空振りを考えますと、超のつく御の字と言えます。

また、電視観望の特徴、

①双眼鏡(もちろん肉眼も)より、かなり暗い天体を検出できる
②天体写真よりリアルタイム性があるので「検出/未検出→次のオプション」の切り替えが早くできる

の2点が、悪条件での彗星検出に有利に働くとわかったのも収穫でしたね。
見えるか見えないかギリギリの状況には電視観望での検出が最適の方法と言えるかもしれません。

さて、ネオワイズ彗星、日本においては梅雨前線と絶妙のコンビネーションを発揮しており、観望や写真撮影に関してはかなりのレア環境になっていますので、日本各地でさまざまなドラマが同時多発しているようです。これは百武彗星やヘール・ボップ彗星の時にはなかった現象だと思います。まだまだこれから、ネオワイズ狂想曲、的な逸話が増えていくのではないでしょうか? そして、それが次の世代への伝説になるかも!?

ネオワイズ伝説の歴史を作るのはあなただ!