前回に続いてASI462MCの最適Gainを探す企画です。
使用システムは、光学系に70mmF4、fl=280mmケンコーニュースカイステージ改、サイトロンQBPフィルター、架台はAZ-GTi、SharpCapによる画像処理です。月齢14で、2等星が見えるか見えないかぐらいの条件でした。
すなわち、「短露出時間(with高Gain)・多スタック枚数」~「長露出時間(with低Gain)・少スタック枚数」の間の落としどころを探ることになります。
もちろん天体写真の分野で画質を追求するときは「長露出時間(with低Gain)・多スタック枚数」というベクトルで何十時間もの時間を使うことになるのですが、当方の電視観望ポリシーが時短にある以上、最短時間で最高パフォーマンスを得て、一晩にたくさんの天体を見る必要があるのです。
対象はM42。最初ASI462MCの最大Gainである600から始めようとしたのですが、この状態では1秒露出でもライブスタックが成立せず(月光によるバックグラウンドのカブリの影響?)。550からスタートしました。
Gain550、1秒露出、180Stackになります。

この東海道五十三次の「庄野」をほうふつとさせる雨が降っているようなバックグラウンドのノイズ、露出不足が否めないですね。露出不足の場合、一枚画像に残っているであろうノイズがStackによって、このような規則的な模様になります。とりあえずこれを「雨降りノイズ」と仮称します(「ちりめんノイズ」って呼んでいるんでしたっけ?)
さて、続いてGain500に下げ、露出を倍の2秒、Stack枚数は当然、半分の90枚となります。
さて、続いて、Gain450、4秒露出、49Stack

かなり「雨振りノイズ」は収まりました。しかし何だか画面の右側に対して左側が少し多いですね。理由は良く分かりません。ともあれ、このくらいですとバックグラウンドを暗くするとほとんど目立たなくすることができます。
Gain400、8秒露出、23Stack。
Gain350、16秒露出、13Stack。

もう、最後のほうほとんど寝てました(笑)ここまでやるとほとんどノイズは残らないので、星雲の淡い部分を強調しても破綻をきたしません。さらにスタックを続けながら、淡い部分を軽く強調してみます。151Stack、トータル20分。
少し星雲周辺の分子雲的な雰囲気も出てきましたね。このベクトルで画質を追求していくと天体写真の分野になって行くのでしょう。ここで、ああそうか、天体写真家の皆さんが手間を惜しまずトータル露出時間を投入していくのはこのように淡い部分を強調して表現するためなのだなあ、と遅まきながら納得。
ここで試しにGain350の状態で2秒露出、90Stackとしてみますと・・・
というわけで、
同じ時間をかけるなら、露出時間を長くし、Gainも極力下げた方がスタック枚数は少なくても画質は良くなる
ということが明らかになりました。
続いて、トータル露出時間の枠を取り払い、同じ露出時間、Gainでスタック枚数を増やしていくと(つまり一天体あたりの時間を増やす)とどうなるか、をやってみます。
Gain400、8秒露出、23Stack、トータル3分から
Gain400、8秒露出、45Stack、トータル6分
気を取りなおして、さらに1.5倍、Gain400、8秒露出、45Stack、トータル9分。

もう、最後のほうほとんど寝てました(笑)ここまでやるとほとんどノイズは残らないので、星雲の淡い部分を強調しても破綻をきたしません。さらにスタックを続けながら、淡い部分を軽く強調してみます。151Stack、トータル20分。

少し星雲周辺の分子雲的な雰囲気も出てきましたね。このベクトルで画質を追求していくと天体写真の分野になって行くのでしょう。ここで、ああそうか、天体写真家の皆さんが手間を惜しまずトータル露出時間を投入していくのはこのように淡い部分を強調して表現するためなのだなあ、と遅まきながら納得。
しかし、個人的には20分かけての上の画像より、3分で見られるそこそこの画像を採用すると思います。このように自分は一貫して時短を最優先要素にしているのですが、まあ、電視観望にどのようなものを求めていくかは個人の自由ですので、今後いろいろな方向性も出てきたら面白いですね。ともあれ、今後自分はASI462MCはGain350~400ぐらいトータル5分以下で使うことになろうかと思います(まあ、今回はM42みたいな圧倒的な輝度の天体での検証なので、結局は対象ごとに設定していくことになるでしょうけど)。
さて、この雨降りノイズ検証の他にも、「多段階露出でダイナミックレンジを広げる検証」もやっては見ていたのですが、今回はいまひとつ。
Gain350にて、16秒18Stack、4秒34Stack、2秒57Stack、トータル約9分。
というわけで、21時~翌朝4時くらいにかけてM42ばかりやってましたが、(笑)その合間に2対象。
フレイムネビュラ&ホースヘッド Gain400、8秒、86Stack、トータル11分。
ばら星雲中心部、Gain400、8秒、125Stack、トータル16分。
ところで、ここで、悲報が・・・「SVBONY SV305」とASI462MCの比較をしようと思って、SV305を出してきたのですが、パソコンで認識はするものの、光をセンサーに当てても画面が真っ暗なまま・・・もちろん望遠鏡に付けても星は見えません。これは壊れてるよね? 中あけてフィルターレス改造をしているので保証は望めず。ああ、思ったより短い付き合いになってしまった・・・
しかし、さまざまな犠牲を乗り越え、我々はローコスト時短電視観望を追求していかなくてはなりません!
コメント
コメント一覧 (15)
uwakinabokura
が
しました
SQM・21以上の空なら、トータル1分程度で、それなりの画像になりますが
S/N比が小さな市街地の空では、どうしても時間がかかりますね。
uwakinabokura
が
しました
検証お疲れ様です。
いくつかモニタ画像を拝見させていただくにつけ、少し気になる部分があります。
1.ディスプレイの設定
色温度5000、ガンマ1.8の状態でホワイトバランスが取れていますでしょうか?
(モニタの色温度が高く、ガンマ値も高い状態のように感じられます。)
2.データの保存形式
ガス星雲のように炙りだしたい対象の場合
Rawで保存するなら
Raw8→Raw16に
もしくはカメラのエンジンに頼るのであれば(ZWO社はDSP積んでますので少しいじれます。)RGB48に
せっかくRawで保存しても8ビットだと階調の情報がJpegと変わりません。(工夫しないとあぶり出し耐性が非常に弱くなります。)
3.ブライトネスの設定が低すぎる
色が出づらくなるかと思います。
4.462は非常に赤外領域の感度が高いはずなのに赤が非常に強調されている→3と合わせてカラーノイズが出やすい設定になっているように感じます。
5.モニタ画像にありませんでしたが、ガンマの設定、コントラストなどはどのようになっていますでしょうか?(ガンマが大きい場合→デフォルトに、コントラストが強い場合→デフォルトに)
防犯カメラに使用されるような撮像素子は感度特性が非常に高く設定されていますが、飽和電荷量が若干低めになっています。(素子自体の特性がピーキー、まああのサイズでは頑張っている方ですが)
フィルターが関係しているかもしれませんが、撮像される画像自体が非常にピーキーな状態になっているように感じます。(なのでスタッキング枚数を沢山重ねないとノイズが消えない状態)
SarpCapの場合は本来後処理でないと出来ないようなトーンカーブ調整がヒストグラムでリアルタイムに変更、調整出来ますのでこちらを活用したほうが結果が出しやすくなります。
まずはRaw8を16に変更して、強調設定になっている部分(上記3,4,5)を見直して見たほうが良いかもしれません。
続く
uwakinabokura
が
しました
(ダイナミックレンジが一番広くとれるので、作業しづらい場合はヒストグラムを調整)
が、しかし、モニタの階調幅も8ビットしかありませんので、リアルタイムに調整する際非常に見えづらくなります。(SarpCapの場合はヒストグラムとガンマ使えばある程度楽になります)
私は224の場合Gainを150~200位に持ち上げ(レンジを犠牲にして)その分をスタッキング枚数で相殺する方法を良く使っていました。その場合の露出はM42の場合は2秒と4秒です。(ノーフィルター、F値は2です)
(感度が同じ位あるはずの462で秒数が非常に長かったので(フィルターが要因かもしれませんが)ちょっと気になりました。
厳密にはフィルター付けてもライブスタッキングの場合、白い紙などでホワイトバランス取ったほうが良いですが、そこまでやらなくても景色などである程度カラーバランス取ってから撮影したほうが後処理しやすいですよ。(一眼デジカメなどは画像処理エンジンを使用する場合気にする必要ありませんが、天体カメラの場合、撮像素子は色ごとに感度にばらつきがあるので長期露光の場合特に悪影響が出やすいです。)
uwakinabokura
が
しました
この部分っていろいろな情報が錯綜しているように感じてますので私なりの見解を記事にまとめました。
お時間ある時にご高覧いただけると幸いです。
https://tstudioastronomy.blog.fc2.com/blog-entry-370.html
uwakinabokura
が
しました
1についてはパソコン本体の設定です。
Windowsの場合色温度が非常に高く設定されていたり、ガンマが2.2などになっているものがあります。(青みがかったコントラストが高い状態)
ある程度の調整はコンパネの色の管理・詳細設定でも出来ますが、Adobeガンマなどを使ったほうが容易です。
5のヒストグラムは右側がモニタの一枚絵、スタッキング側がスタッキング画像になります。
一枚絵の方で見やすく調整して、スタッキング側で微調整という感じになるかと思います。
おっと、3.2だとインターフェイス変わったのですね。
トーンカーブが書けるようなモードが合ったと思うのですが、ありませんか?
(シベットさんのご記載ですとレベル補正になりますね。トーンカーブの方が柔軟に操作できます。)
トーンカーブはガンマと同義に使用できます。(直線で右肩上がりが1、山なりが1以上、その逆が1以下になります。画像のデフォルトは1ですが、人間の目だと暗くのっぺりと写りますので1以上に設定します。(印刷の場合は1.8です。)
ただし、モニタでもガンマを設定しますので2重設定になりコントラストが強くなりすぎますので、通常は1で様子をみてスタッキングのヒストグラムで調整します。
uwakinabokura
が
しました
私もカメラなどのエンジニアではありませんが、印刷物のデジタル化、コマーシャル・フォトのデジタル化の初期の時期にかなり業務機の特性チェックや最適化設定のまとめをしましたので大筋の部分で理にかなった内容になっているかと思います。
撮像素子の特性はデジカメは処理エンジンでフィルムでいうとポジに似せてあると思います。(特にISO、現場からクレームが来ないような配慮かもしれません。)
天体カメラはそのような流れが無いので色の感度特性がそのままデータに反映されますので別物ですね。(色によって全く露出時間が変わります。当初驚いたのは色温度に合わせた特性データが無いことでした。(その割にはパラメータもソフトによりバラバラ。。合わせづらいことこの上ないです。。))
モノクロカメラのほうが処理の体系化がしやすいですね。(面倒ですが)
uwakinabokura
が
しました
このカメラ、コンデジ並にカリカリに絵を作っていますので相当スタッキング枚数を増やさないと収まりそうにありません。
これが出るということは、ガンマの設定が非常に高いような状態(コントラストやシャープネスが高い状態)の現れだと思います。
224も非常にピーキーですが、スタッキングしても出ませんので、設定で抑えられるのではないかと思います。
uwakinabokura
が
しました