今回は眼視用機材についてです。
オープン双天会#7
とは言うものの、あまりにも多岐にわたる内容なのですが、最初なぜか話題は架台AZ-GTiからスタート。

*AZ-GTiが使い始めにカタ、カタ、と言って追尾が止まることがあるが、起動して最初の方だけで10分くらい使ってるとならなくなる。

*アライメントを繰り返すと自動導入がよく暴走するので電源を切ってやり直している。

*AZ-GTiは消耗品? 当たり外れもありそうなので長く使えればもうけものか? いやいや値段も値段だしそこまで言ったら可哀想。

続いて対物の話題、アクロマートレンズの話題より

*C線(青緑)とF線(赤)を一致させる伝統的な設計のアクロマートレンズはデュアル・ナローバンドとの組み合わせで、色収差をなくすことができるが、最近の新しいタイプのアクロマートではC線とF線が一致させない設計になっているものが多い。

*2枚玉のアポクロマートは青ハロをなくすために球面収差の補正が犠牲になっている(三枚玉は問題なし)ので、2枚玉なら、むしろアクロマートレンズのほうが球面収差は少ない

*眼視でもアクロマートレンズにデュアル・ナローバンドを併用することで、(写真で言うAOO合成的な)色収差のない像を得られるので「プアマンズ・アポクロマート」とすることが出来るのではないか。ただし、色が青緑色に偏った変な色になるので色温度補正フィルターで補正するか。ただしかなり暗くなるので、対象は輝度の高い、月・木星あたりに限定か。

次に屈折のメリットについて

*屈折は大口径になると運用が大変なので最大15㎝くらいが限界ではないか

*25㎝とかの大口径屈折は運用が大変だが、やはり反射と比べるとコントラストが高い。50~60㎝の大口径を所有するハイエンドアマチュアでも13~15㎝の屈折を所有している場合が多い。

*屈折のメリットは低倍率が出せるということ。これは大口径反射では得られない。屈折双眼でマイナーな散開星団を見ていると砂粒のようにたくさんの星が見えてくる。反射で低倍率を出そうとすると斜鏡の影が見えてしまう。

*写真用に作られた鏡筒は眼視に使った場合コントラストが弱い? イメージサークルを広くしたり軽量化の低コスト化のために仕方ないかもしれない。写真は画像処理で見かけのコントラストを大幅に上げることが出来るから、眼視で重要視されるリアルタイムのわずかなコントラスト向上はあまり必要ないのかも知れない

*シリウスbを12cmのTSA120で見たら見えたが、20cmシュミットカセグレンでは見えなかった。これはコントラストの違いだろうか。画像処理をしても検出できてないものは絶対に現れてこない。

*高橋のカタログにも「星像の収束やコントラストが良いので一回り大きい口径ので見たように見える」と書いてある

*シーイングと分解能のバランスがとれているのが8cmくらいの口径か? シーイング悪くてもそれなりに見える。

*13cm屈折でもシーイング悪くてもそれなりに見える。明日あるしし座のη星の掩蔽などもNDフィルターで月の明るさを押さえつつ双眼で見るのが楽しみ。

*屈折・反射の選択は対象によると思う。テリトリーが違うものを漠然と比較しても優劣はわからない。50~60㎝でシーング悪いと大口径だから見えないということもないし、小型の反射だから低倍率が使いづらいと感じたこともない。

では、屈折のデメリットさらにそれに対する反射のメリットとは

*やはり大口径。屈折で30㎝の口径と言うと売ってもないし、まずアマチュア用では見たことがない。対して反射では30㎝ぐらいは、もはや「標準口径」的な雰囲気さえある。

*屈折の場合口径が倍になると収差も倍になるので設計が難しい。明るいFのものも作れない。またレンズが大口径で厚くなると自重でたわむという問題もある。

*レンズの厚みから言うとフレネルレンズが打開策になるか?

*小型の反射(口径5cmとか)を自作する場合のメリットとは→小口径自作の場合、屈折望遠鏡では小型の部品で光軸修正装置などを精度高く作るのが難しかった。反射望遠鏡なら今までの自作経験が生かすことで何とかなった(utoさん)→いやいや、utoさんの5cm反射を実際に見ると、細部の造りと精度はとんでもない。あんなものは誰も作れないですよ。作ったって光軸合わせられない。名人芸の域ですよ(K.Nebulaさん)

*部屋の中で運用する前提で光学性能を求めていくと反射になった。屈折のF20とかになると長すぎて卓上に置けない。接眼部の位置もニュートン反射だと筒先にあるので見やすい

*あと、屈折+天頂プリズムの裏像になじめない。

*MAKSY60は光学性能も優れており、鏡筒がコンパクトなので卓上で使うという意味では非常に良い望遠鏡。車のボンネットに置いて使うこともできる。ひょっとしてこのタイプが最強? 

*MAKSY60の照星式ファインダーは少し見にくいので、タピオカストローを両面テープ等でつけるとよいかも知れない

(この後MAKSY60の双眼望遠鏡にするための方策をシベットがしばらくしゃべりましたが、たいした話ではないので割愛)

*双眼望遠鏡には目幅の問題がつきまとうが、目幅が広い方が双眼望遠鏡でのアイピースの選択の幅が拡がる。日本人男性の場合平均的な目幅は65mm前後だが、白人の皆さんは身長高い人でも54mmとかだったりする。頭蓋骨が前から見ると細く前後に長い形をしているからだと思われる。そういう意味では我々アジア系のほうが双眼望遠鏡運用に有利かも知れない。

*また単眼でもアイピースの径が大きければ高い鼻が邪魔になって使えないケースもあるようだ。この点でも鼻の低い我々が有利?

*しかし白人の皆さんは我々より暗いものが良く見える? 同席の白人の方に「照明がまぶしい」って言われて暗くされた、欧米でレストランの照明が暗くてメニューが見られない、などの実体験談あり。暗順応してギリギリ暗いものを見ようというときにも彼らの方が検出能力が高いのだろうか→それはわからない、どうなんでしょうね?

*暗順応は時間がかかるものだけど、いったん暗順応したら例えば車のヘッドライトがまぶしかったりしても、割とすぐ戻る感じがする。暗順応の速さにも個人差がありそう。夜、外に出たときに自分が問題なく歩ける明るさでも、暗くて何も見えない、という人もいる。

*色の感受性も個人差が大きい。ニュージーランドで低緯度オーロラが見えた時、赤い色が見えた人もいたが自分はわからなかった。あとで写真で見ると赤かった。

ここでオーロラの話題に(笑)

*低緯度オーロラは空がカブッているように見える→いや、空全体が蛍光を発している感じ

*低緯度オーロラは高度が高いから低緯度でも見えるのであり、したがって色は赤くなる。

*高緯度オーロラは本当に色とりどりに見えて繊細な美しさがある。写真に撮られているオーロラは全てインパクトを求めて不自然な表現になっている。

*写真でオーロラを「カーテン状」に写そうとすると20秒とか30秒とかの露出をかけることになるので、そうなると繊細さがなくなる、バックの星を見せようとすると5秒とかの露出になりカーテン状には写らない。

*オーロラの構造や動く速度はひとつひとつが違っていてバリエーションが豊か。本当にすごい眺め。

これは、いつかはオーロラを見なければならないですね。という結論になって(笑)、次に架台の話題へ。

*フリーストップ架台は理想の架台ではあるが、操作性を良くするには摺動部の静止摩擦係数と動摩擦係数の差が少ないことが必要でそれを実現しようとしたのがテフロン等だと思うが、自作ではなかなか操作性の味付けが難しい部分。

*MAKUSY60/NEWTONYの架台は、クランプで締め付ける「自由雲台」の形式だが、非常に優れていて、フリクション調整によってフリーストップ的な操作感で使用できる。このボールマウントは金属製となっていて特許も出願されている(↓utoさんのブログ記事)。


*市販のフリーストップ架台も何を載せるかによって決まる。小型ならジッツォの自由雲台も良いし。AYOの架台もすごく便利。好みによるとも思うが、フリーストップで自由に振りまわすのが好きなので微動の必要性はあまり感じたことがない。

*ドブソニアンのボールマウント式も昔あった。国際光器扱いの「トワイライト」だったか?
(↓ Starlight_365さんのブログ記事より)


 *オレゴンスターパーティではミスターボールマウントとても言うべき、JerryOltion さんの作例を見ることができた。(↓この記事の下の方)

これは、ボールマウントを「一軸」恒星時追尾するという大変な意欲作。

*ただしボールマウントはそれほど使いやすいとは思えない。バランスを取るために主鏡部分にウエイトが必要なので重くもなるし、XYの経緯台の方が使いやすい気がする(コスモキッズ系8台所有のシベット談)

*ボールマウントは当時エンコーダーがつけられないデメリットがあったが、今はプレートソルビングできるので、いまでこそメリットが発揮できるのではないか。

*ボール式マウスを分解して回転検出部分をエンコーダとして使えるのではないか?→そのような作例が「私の愛機」か何かで昔あった気がする。今のレーザーマウスでも検出部を使えばできるのではないか? → 垂直を傾斜センサー、水平部をマウスでやる、それだとエンコーダーいらなくなる、っていうのを研究している人がいるので、そのうち話題になるかも知れない

この辺で話題は天体導入方法にスイッチ

*スターセンスエクスプローラーはエンコーダーではなく、プレートソルビングを使っていて今ではこれが「割と当たり前な技術」になっている

*今は「フリーストップ + スターセンスエクスプローラ + 追尾架台」が最強では? まあ、自分のスタイルで利便性の高いものを選択するのがよいだろう

*スターセンスエクスプローラーは現状、初心者向けだが、スカイサファリがベースなので今後いろいろなオプションが出てきてできることが増えていくかも知れない。

eVscopeの供給が始まったが、セッティングがどこかの星を入れるとその位置を検出して10秒ほどで終わるようだ。初心者向けとしてはある意味最強?→しかしそれだと一通り見てすぐに飽きて終わってしまうのではないだろうか?

eVscopeは都市部で見る前提で設計されているかも知れない。今だったら光害地でもここまでできる、という非常に意味のある提案だとは思う

*eVscopeを含めてこの手の望遠鏡は3種類くらいあるようだが、どんどん出てコストダウンしてもらいたいものだ。

eVscopeはIMX224を使っているが、センサーがどんどん進歩して開発が追いつかない感じ。センサーグレードアップできるか→ケーブルレスが売りものでもあるし、それはできないのではないか?

*スカイサファリに表示される天体の高度と方位の数値を読み取り、垂直は下げ振り、水平は360°分度器を装備した経緯台でその数値に合わせることによって「目盛環導入」もできる(↓このような方法)


*観望会などで13cm望遠鏡を使う時に、この目盛環導入をやっている。自分は椅子に座ってて、子供さんに高度・方位の数値だけを口で伝えて、自分で目盛りに合わせて導入してもらう(ten.さん)。名づけて「音声入力による児童導入」(笑)


*この導入方法でも視野のどっかには引っかかってくれるので自分がやったという達成感がある。また、人に導入してもらったものだとパッと見て終わるのだが、自分で入れたものは「何が入って来たか、じっくり見てごらん」と続けることで、継続観察してもらえる。そうすると瞳がだんだん開いていってよく見えてくる。

*運用している13cm望遠鏡では目盛環や数字を大きくし、蓄光シールで見やすくしている。目盛りは粗くても感覚的に目盛りの間の位置を捉えてくれる。
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(ten.さんの13cm自作トラス鏡筒。蓄光シールの貼り付けられた耳軸がわかります。天文リフレクションズ編集長様による素晴らしい「星景写真」です。12/8追記)

ファインダーも6×30光学式、ドットファインダー、照星/照門式の3つをつけていて、子供さんが光学式をみてそれを後ろからドットファインダーや照星式で指示をすることができる。
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(こちらは昼間に撮影されたもの。3wayファインダーとten.さんの「カフェ観望スタイル」がよくわかります。12/8追記)

*ギャラリーが多いと厳しいが少人数で自由に使える望遠鏡があれば非常に良い方法。25倍くらいで振りまわして大型の散開星団等を見てもらうのもよい。土星とか木星だと81倍くらい。100倍を超えると追尾が厳しいが、まずは月とかで高倍率追尾を体感してもらっておくと(追尾速度は高倍率でも低倍率でも同じ)その後、低倍率での追尾はやりやすくなる。

*若い世代の天文愛好家が少なくなっているのは、望遠鏡を操る主体的な感動を得る機会が減っているからではないだろうか。無理に人口を増やす必要もないが、若い世代にそういう場面を提供していければいいなと思う。

*高知は非常に空が暗いけど、それならそれでありがたみがなくって、条件がよくてもあんまり稼働しない(シベット)。非常にもったいない罰当たりな状態と言える(笑)

*長崎は「百万ドルの夜景」とか言ってるけど天文ファンにとっては「百万ドルの余計」でしかない(笑)。

*人工照明も傘をつけさえすれば地上をもっと効率よく照らせるし、意味のない光を夜空に照らすこともなくなって光害もなくなるはずだが・・・あ、でもそれじゃ夜景がきれいに見えないからダメか。多くの人に取って「空が暗い」より「夜景がきれい」なほうがいいだろうから。民主主義は多数決で決まるので、光害があるほうが圧倒的に民主的と言える(笑)

後は、日本各地での観測地の空の条件の話題がいろいろ出ましたが、3ステージ120分で22:00ごろ本会議は終了。
その後、オプションとして4時間後の午前2時過ぎに、はやぶさ2カプセル帰還に合わせて会議を再開、
お付き合いいただいたutoさんと生中継を見ながら雑談してこちらも終了いたしました。

今回は歴代の双天会の中でも「雑談要素」が一番多かったのではないかと思います。ホストである自分のノープランぶりが改めて明らかになった回ではありましたが、いつものように楽しく情報交換ができたのは暖かく見守ってくださる参加者の皆さまのおかげと感謝いたしましてこの記事を終了したいと思います。

ありがとうございました!