QHY5III485Cは、現状で「センサー面積当たりの価格」が最も安いCMOSカメラとしての優位は揺るがないのですが、これまでIR640proを使っての近赤外電視観望を試した結果ではあまり良い結果は得られてませんでした。
これは、ピクセルサイズが2.9μmでもともとの感度がそれほど高くない上に、このようなスペクトル・レスポンスで

近赤外の感度が高くない(と言っても一般的なセンサーはこのような特性)からだと思っていたのですが、センサー直前に置かれている光学ウィンドウ(保護ガラス)にやや色が着いて見え、
上の画像でもわかりますが、QHY5III485Cでは光学ウィンドウを取りはずせますので、あり、なし、の実験ができます。
さっそく実験敢行!

機材は「ケンコーNEWスカイステージ改・76mmF3.7鏡筒(fl=280mm)を70mmに絞ったF4仕様 + AZ-GTi経緯台 + SharpCap」になります。空の条件は限界等級2等程度、かなり透明度の悪そうな「眠い」空でした。
左側はASI462MCにfl=6mmのCCTVレンズをつけた電視ファインダーです。
室内からの操作画面はこのようになります。
さて、まずはHⅡ領域でHαの減衰を確かめます。
光学ウィンドウあり、QBPフィルター、8秒露出、33スタック、Gain40 です。
続いて、NGC2093で近赤外域の検証。
光学ウィンドウあり、ir640proフィルター、8秒露出、34スタック、Gain40 です。
ちなみに、こちらは
光学ウィンドウなし、QBPフィルター、8秒露出、33スタック、Gain40。

これも変わらんです。QBPは利用帯域が狭いので、小宇宙(銀河)のような連続スペクトル天体には不利なはずなのですが、QHY5III485Cの感度が高い帯域である可視光の部分を利用しているのでこのような結果になったのではないかと考えました。
ということで、QHY5III485Cが近赤外に弱いのは、光学ウィンドウのせいではなく、単純にもともとの感度と近赤外感度が低いからだ、という仮説が立てられそうです。
光学ウィンドウに色が着いて見えたのはコーティングの反射の可能性が高いですね。(QHY5III485Cの光学ウィンドウよ、疑ってすまんかった 笑)
ちなみに、ASI462Cはピクセルサイズ2.9μmで元の感度はあまり高くないのですが赤外感度が高く、ASI294MCは赤外感度は高くないのですがピクセルサイズ4.6μmで元の感度が高いため、それぞれ近赤外電視観望では機能します。QHY5III485Cは元々の感度も近赤外感度もあまり高くない「ダブルパンチ」なので、このような結果になるのは当然とも言えますね。
しかし、「センサー面積当たりの価格」が最も安いCMOSカメラとして普通に電視観望には使えます。カサイの0.75×レデューサーを取り付けた、合成焦点距離fl=204mmF2.9仕様+QBPフィルターで少し電視観望。
ばら星雲、16秒露出、15スタック、QBPフィルター、Gain40
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