アクロマートは何と言ってもそのコストの安さが魅力ですが、単色光での球面収差が少ないという優れた特質も持っています。そこで、Ha、OⅢ、SⅡをそれぞれに撮る鏡筒を3連装にすることでSAO合成用の3波長を一気にゲットし「通常の3倍の速度」に撮影の効率を上げる、という手法が提案されています。

あぷらなーとさんが考案されたこのジャンルが、今後のアクロマート使用の王道となる雰囲気が漂いまくっているのですが、当方レベルでは中々ここまでできないので、身の丈にあった

アクロマートレンズの特質を生かして電視観望を楽しむ

というテーマを設定してみました。

今回使ったアクロマート鏡筒は、ミザールBN-80・8cmF5ですが、これにレデューサーとしてクローズアップレンズNo4を使用し、fl=348mm F4.4となっています。この鏡筒に、AZ-GTi経緯台+QHY5III485C+SharpCapで電視観望をおこないました。
IMG_2618
ちなみにこの8cmF5レンズと、クローズアップレンズNo4の相性はまずますで、微光星の中心星像は12μm程度(ZWO DUO-BANDフィルター使用)。
tyuuou hosizou
QHY5III485Cの1/1.2"センサー(11.3x7.1mm)の4スミでも15μm以下には収まっていると思います。
hidarisita hosizou
QHY5III485Cのセンサー面積では「全面ピンポイントに近い」と言えるかもしれませんね。

左側はASI462MCにfl=12-120mmのCCTVレンズ(12mmで使用)をつけた電視ファインダーです。
天体の導入時は、メイン鏡筒(上)と電視ファインダー(下)、あとSynscan(右)の3画面にして使います。
leo finder
電視ファインダーは星座の形が見えるのでアライメントの時に便利です。ただし導入はSynscanが行いますので、アライメント合わせた後は屋根の稜線で天体が隠れないか、雲の動きはどうかなどの監視が電視ファインダーの用途になります。

この日の空のコンディションは、2等星は見えるものの黄砂の影響もあり、春特有の「眠い」状態。透明度はあまり良くありませんでした。

さて、まずはノーフィルターから
leo triplet gain50 4s 100stack
leo triplet gain50 4s 100stack
さすがノーフィルター、銀河のワイドな周波数帯域を余すところなくとらえ、コントラストが良く出ています。お約束の青ハロも美しいですね(笑)。しかし赤外の影響か星像がややボテッとしてしまっています。

ならば、ということでUV/IRカットフィルター使用で赤外域をカットしてみます。
leo triplet gain50 4s 100stack uvir
leo triplet gain50 4s 100stack uvir
どうかな、心持ち星像がシャープになった気もしますか? 輝星の青ハロも少しおとなしくなっているようですね。これはこれでアクロマートの正しい(?)使い方なのかもしれません。このまま200枚までスタック枚数を伸ばし、もう少し中央拡大し色調も変えてみます。

leo triplet gain50 4s 200stack uvir
leo triplet gain50 4s 200stack uvir
あー、もう個人的にはこれでいいですね。アクロマートによる銀河の電視観望はUV/IRカットフィルターでOKか。

しかし、もう少し別のフィルターも試します。デュアル・ナローバンドであるZWO DUO-BANDフィルターで。
leo triplet gain50 4s 101stack zwo duo-band
leo triplet gain50 4s 101stack zwo
これは想像通り全然ダメです(笑)。やはり連続スペクトル天体は使用帯域が削られると苦しいですね。でも星像だけはかなりシャープになったかな。この辺は、アクロマートとデュアル・ナローバンドの組み合わせで、色収差を皆無にする方法が機能しているのだと思います。

しかしながら、あまりにも銀河本体が露出不足なので、ならば露出を延ばせばそれなりに出る? と4倍の16秒露出にしてみると
leo triplet gain50 16s 60stack zwo duo-band
leo triplet gain50 16s 60stack zwo
露出4倍程度じゃ全然ダメですね。UV/IRの4秒露出に完全に負けます。

続いてあまり期待はできないのですが、一応、マルミR2フィルターで、Ha~近赤外を試してみます。
leo triplet gain50 4s 200stack R2
leo triplet gain50 4s 200stack r2
やはり、これも苦しいですね。QHY5III485Cは赤外感度あまり高くないから、こういうのたぶん向いてないです。赤外感度の高いASI462MCならもう少し違った結果になったかも知れないですが。

さて、銀河はこの辺にして、M57が出てくるのを待ち構えて超低空であるのも構わず。
IMG_2621
フィルターは当然、ZWO DUO-BANDにて。
m57 gain50 4s 100stack zwo duo-band
m57 gain50 4s 100stack zwo
輝度が高い対象は超低空でも楽勝ですね!

しかし、同じく低空の三日月星雲はあまりコントラスト上げられず。
mikazuki gain50 4s 140stack zwo duo-band
mikazuki gain50 4s 140stack zwo

まあ、存在確認程度、でしょうか。

デュアル・ナローバンドでの球状星団は色味が結構面白かったです。
m13 gain50 4s 110stack zwo duo-band
m13 gain50 4s 110stack zwo
まあ、M13くらいの規模の球状星団になりますと、眼視で見た方が大迫力なのですけどね。

夏の銀河のHⅡ領域4点セット!
M16、17、8、20、4つとも、 gain50 4s 100stack zwo duo-band
m16 gain50 4s 100stack zwo
m17 gain50 4s 101stack zwo

m8 gain50 4s 100stack zwo

m20 gain50 4s 100stack zwo
うーん、どれも今一つおとなしいですかね。特にM20の反射星雲はあんまり出てないですね。やはり普段使ってるF3前後の鏡筒と比べると倍ぐらい暗いのだから仕方ないでしょうか。

網状星雲も4秒じゃあんまり出ず。
ami gain50 4s 100stack zwo duo-band
ami gain50 4s 100stack zwo
では、8秒じゃどうかな?
ami gain50 8s 50stack zwo duo-band
ami gain50 8s 50stack zwo
うーん、あんまり変わらん? ではさらに倍の16秒で強調も思いっきりやって・・・
ami gain50 16s 50stack zwo duo-band
ami gain50 16s 50stack zwo
やっとのことで大分出てきたけど、やっぱり露出不足をかなり持ち上げてるもんだから、ちりめんノイズも目立って来てます。右下も何かカブリみたいなの出てきてるし。何より、16秒×50スタックで一画像に10分以上かけるのが自分のスタイルではありません。

電視観望はやっぱり「時短」でないと(笑)

というわけでこの日は、M27で終了!
m27 gain50 8s 90stack zwo duo-band
m27 gain50 8s 90stack zwo
少々空の条件が悪くても、M27だけは絶対に裏切らないんですよね。まさに天文界の人格者と言えます(笑)。

さて、結論。

アクロマートレンズにて電視観望を楽しむ場合、対象が銀河の場合は、UV/IRカットフィルターで青ハロと黄色く表現される銀河のコントラストを味わう、HⅡ領域や惑星状星雲の場合は迷わずデュアル・ナローバンドフィルターで、という感じでしょうか。

普段自分が使ってる反射系の対物(F3と明るく、色収差もない)と比べると少し用途が制限される感じは否めないですね。


***

本日のおまけ。

ASI462MCにfl=12-120mmのCCTVレンズ(12mmで使用 絞りF1.8→3.5くらい)をつけた電視ファインダー、必要に応じて2画面で使っているのですが、夏の天の川が出てきたということでフル画面にするとこんな感じでした。
4s gain300 40stack マルミR2フィルター(Ha~近赤外利用)
amanogawa 4s gain300 40stack
ASI462MCなので赤外感度が高く、白っぽく表現された銀河の大部分は近赤外域だと思います。さらにHaの帯域も使用しているのでM8なんかは赤く表現されていますね!

ファインダー画面としてはまあまあインパクトのある絵面になっているのではないでしょうか?