7㎝F6のEDアポクロマート鏡筒、SVBONY SV503 70EDです。
EDアポクロマートですが、実売価格44,980円は安いと言えます。先週の土曜日にSVBONY JAPANに直接注文し、ちょうど一週間後の土曜日に届きました。上にある小さな箱は「今ならサービス」のファインダー台座ですね。
一見して思ったのが、
しまった、これにはケースがついてないのか
でした(笑)。
SkywatcherのEVOSTAR 72ED
がほぼ同じ価格帯なのでどちらにしようか迷ったのですが、あっちにはケースがついてるんですよね。さらに、説明書や保証書の類も見当たりません(保証書はないけど1年間の保証がつくそうです)。さすがSVBONY先生、怪しさ満点です(笑)。
さて、それはともかく、フード、フォーカサーを縮めた状態と
縮めるとだいぶコンパクトになりますね。ちなみに、フォーカサーはラック&ピニオン。自分はクレイフォードはどうしても接眼部アクセサリーの重みで勝手に伸びてくる印象が強く、ラック&ピニオン式であることが、SV503 70EDを選定した最大の理由となっています(ひょっとしたらこの鏡筒最大のストロングポイントかも)。
”サービス”のファインダー台座を取り付けます。
さらに、その辺にあったビクセンの6×30ファインダーを適当に取り付け。
今日は取りあえず、この鏡筒を電視観望で試用してみます。
AZ-GTi経緯台+QHY5III485C+SharpCapによる画像処理、といういつもの電視観望のパターンになります。この日は月齢10と月が大きいうえに、透明度もあまり良くありませんでした。肉眼で2等星がやっと見えるくらいの条件です。
まずは、7㎝F6、fl=420mm、ノーフィルターの状態で星像を見てみます。
M57付近
一番懸念していたのが「赤外ピンボケを起こしたら、この鏡筒を買った意味がない」でしたが、そっちの心配はなさそう。少なからずホッとしました。
追記
QHY5Ⅲ485Cのような赤外感度の低いセンサーでは赤外ピンボケは目立たない、ということのようです。赤外感度の高いASI462MCでは明らかに赤外ピンボケを起こしていました。
中心を拡大して見ると星像はシャープですね。
↓これは左上の部分拡大(QHY5Ⅲ485Cの1/1.3”センサーの範囲)。
順コマ収差と像面湾曲によるピンボケ、さらにこちらも少し星像が縦に延びているようです。フォーカサーをかなり長く繰り出すので垂れ下がってスケアリングが狂うんですね。これはフォーカサーの短いニュートン式ではあまり起こらない現象です。
ああ、だから屈折鏡筒を使ってる天体写真家の皆さんはレールを追加したりの補強を行うのですね、と納得。
仕方ないので、接眼部のガタを利用し、三方向のストッパーなんかを駆使してそれなりにスケアリングを調節。
さて、像面湾曲や周辺のコマは補正したいし、F値も明るくしたいので、レデューサーの導入は必至ですね。この鏡筒には純正の0.8×フラットナー(なぜか102ED、80ED用より70ED用のほうが値段が高い)が用意されているのですが、現在入手できないようです。そこで、ケンコーのクローズアップレンズNo4を使った自作レデューサーで代用。
レデューサーと像面の距離を変えることで、補正の状況は違ってきますので倍率が0.7~0.88×の範囲(像面とレデューサーの距離が遠くなるほど縮小率の値が小さくなる)でいろいろ見てみましたが、縮小率を欲張った0.7×ではやはり「逆コマ」が出てオーバーコレクトになってしまいました。
良さそうだったのが、0.8×にした時ですね。フル画面こんな感じで、
画面の左上拡大
まだ少し縦に延びてる(スケアリングが微妙に狂っている)のと、輝星には色収差、さらに逆コマも残っているのですが、微光星は15μmくらいでしょうか。天体写真用として考えると像が甘いのですが、準リアルタイムの電視観望なのでこの辺を落としどころとします。
さて、そしたら7㎝F6×0.8の合成F4.8、fl=336mmで電視観望行きますか。QHY5III485Cの1/1.2"センサー(11.3x7.1mm)での画角は、約1.9×1.2°となります。
M104 ソンブレロ 4s gain50 44stack ノーフィルター
前にASI462MCで月のない夜にやった時は、ノーフィルターによる銀河が最強でしたが、
やはり月があるとノーフィルターのアドバンテージはあまりないのかもしれません。
ではQBPフィルターを使用して16秒と少し長めに露出をかけてみたら?
対象は違いますが、しし座トリプレット gain50 16s 14stack qbp
(ちなみにQBPによる帯域制限で、輝星の青ハロは皆無となっています。)
じゃあ、月からだいぶ離れた場所にあり、QBPの得意な輝線スペクトルの対象では?
M27 8s gain50 90stack qbp
ああ、高度が低い割にまあまあですね。ちなみにM27、ノーフィルターだとこうなります。
4s gain50 40stack nofilter
さらに、露出を16秒に延ばし、40分ほど放置(その間入浴してました 笑)してみると
gain50 16s 155stack qbp
中央拡大するとfl=336mmの焦点距離にしては割と細かい構造まで出せている気がしますね。
485センサーのピクセルサイズを2.9μmとすると、微光星の直径は3~4ピクセル分、やはり星像は9~12μmといって良さそうです(少し不安なのですが、こんな原始的な単純計算で合ってますでしょうか?)。
で、あとはお決まりの「夏の銀河HⅡ領域4兄弟」全てQBPフィルター使用、Gain50、16秒露出
M16 20stack
で、次の網状星雲も32秒も露出したにもかかわらず、この程度。
18stack
ここで、SV503 70EDの電視観望用途での個人的な第一印象(今後変化していく可能性あり)
いいところ
1 赤外ピンボケを起こさない(実際には起こすが赤外感度の低いセンサーでは目立たない)
2 安価なクローズアップレンズをレデューサーとして使うことができる
3 星像は電視観望用としては十分にシャープ
4 光軸調整を必要としない
ダメなところ
1 フォーカサーを繰り出すとたわむ
2 F値が暗い
3 保証書や説明書がついてない
4 ケースがついてない
1が一番問題ですね。そのままではスケアリングが絶対に合いません。「チッ、結局改造かよ」です(笑)。しかしこの鏡筒の値段でフォーカサーの剛性までを求めるのも酷であるとは言えます。これを問題にするにはユーザーもタカハシ並のコストを払うべきでしょう(・・・あ、そうか。だから上級者の方はみんなタカハシ買うんだね)。
2は224や294など高感度のセンサーと組み合わせることでカバーできる芽はあります。
3、4はこれがコストダウンにつながっているのだとすれば致し方ないのですが、ほぼ同スペック、同価格のEVOSTARがこれを実現している以上、ダメなところ、と言わざるを得ませんね。
あとついでに
5? ノーフィルターで青ハロが出る
もありますが、これはノーフィルターを選択することで「”青にじみが美しい”の演出が可能」と、考えようによってはメリットなのかも知れません(笑)
いずれにせよ、このED70鏡筒はいろんなことを教えてくれました。電視観望用として取得してはいるのですが、今後は眼視高倍率での性能なんかも試してみようと思ってます。はたして使い道は拡がって行くか!?
コメント
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uwakinabokura
がしました