先日、SV305Mproはビニングによって感度が上がるかどうかを検証していたのですが、

高感度化は認められたものの、2×2ビニングにより画素数が200万→50万 と1/4に減少することでの解像度低下もまた否めませんでした。

そこで自分は考えたのです、

800万画素のQHY5III485Cなら1/4になっても200万画素確保できるのでは?

と。さらに、

QHY5III485Cの2.9×2.9μmを2×2ビニングすれば、5.8×5.8μmとなり、これは相当な高感度が見込めるのでは?

と。

さっそく検証します。

鏡筒は、ケンコーNEWスカイステージ改7cmF3.2反射(0.8×レデューサー使用)。フィルターはQBPフィルターを使用。
7cmF3.2
架台は、VIRTUOSO、今回もこちらの運用検証も兼ねます。

当日は午前中台風が吹き荒れていましたが、22時頃快晴に。台風一過の空となり透明度が非常に良く、眼視で4等星も確認できる(通常2等程度)という、自宅ベランダとしては最高クラスの条件でした(後で気付いたのですが、こういう透明度の良い日こそノーフィルター運用を試すべきでした)

まずは1ビニングでM8を。
M8 4秒露出 gain40 60stack
m8 4s gain40 60stack 1bin
続いて、2×2ビニング 同じく
M8 4秒露出 gain40 60stack
m8 4s gain40 60stack 2bin
・・・えっ?

モノクロになるのですが?

理由は分かりません。たぶんビニングはソフト的な処理で行われていると思うのですが、その時に色情報を無視するようになっているとか???

並べて比較してみますと・・・
m8 4s gain40 60stack 1bin 2bin hikaku
ううむ、確かに感度が上がってる感じはありますが、モノクロになってしまうのではね・・・これなら最初から200万画素のモノクロ、SV305Mproを使った方がいいわけで、QHY5Ⅲ485C2×2ビニングの存在価値は厳しいですね。ちりめんノイズの発生もすごいですし(一応、2×2ビニング状態で撮ったダークを引いています)。

これはダメかな・・・? 不採用!

ということで、この後は「7㎝F3.2反射 + QHY5Ⅲ485C + QBPフィルター」のパフォーマンス確認にシフト。どんどん行きます。

M8 20 4秒露出 gain40 45stack
m8 20 4s gain40 45stack
2対象狙ったのですが、すでに時刻的に西に低く、M8の下にベランダの手すりがかかってきました。早々に切り上げ。

網状星雲 16秒露出 gain40 55stack
ami 16s gain40 55stack
16秒でもまだまだ露出不足ですね。

北アメリカ星雲 16秒露出 gain40 40stack
kita 16s gain40 40stack
経緯台の2軸追尾でライブスタックすると、このようにどうしても視野が回転しますが、天頂に近い空域のほうがその度合いが激しい気がしています。

M33 16秒露出 gain40 89stack
m33 16s gain40 89stack
これは淡いですね。まあ、もともとQBPなどのデュアル・ナローバンドフィルターを銀河のような連続スペクトル天体に使うこと自体間違っていますが(笑)

M31 16秒露出 gain40 107stack
m31 16s gain40 107stack 2nd
これも周辺部は厳しいものの、3重になった暗黒帯の描写はまずまず。どっかで見た感じだなと思ったら、以前拝見した55㎝双眼望遠鏡による眼視のイメージがこんな感じでした。


Ha、OⅢのバンドが生かせる天体はやはり惑星状星雲。
NGC7293 16秒露出 gain40 100stack
7293 16s gain40 100stack 2nd
中心星も楽々ゲット。やはりQBPのようなデュアル・ナローバンドの得意天体はこういうやつになりますね。

プレアデスが昇ってきたので、またまたQBPには不向きなはずの連続スペクトル天体を強引に!
M45 16秒 gain40 57stack
m45 16s gain40 57stack
こうなりますよね(笑)。本来、散開星団のスペクトルを反映して青く表現されるはずの反射星雲が青緑の「OⅢカラ―」に! まあ、これはこれで・・・

ということで、超新星残骸にて終了!
M1 16秒露出 gain40 85stack
m1 16s gain40 85stack
最後にしては、視直径小さ過ぎたですね(笑)

というわけで、「7㎝F3.2反射 + QHY5Ⅲ485C + QBPフィルター」のパフォーマンスを見て行きました。悪くはない・・・悪くはないのですが、やはり、QHY5Ⅲ485Cの感度がそれほど高くないのがネックになっていますね。

上の電視観望は基本的に16秒露出なのですが、全体的に露出不足気味なのが否めません。

16秒より短い露出、例えば網状星雲を8秒ですと
網状星雲 8秒露出 gain40 55stack
ami 8s gain40 55stack
16秒露出より、ちょっと弱いですよね。さらに4秒露出だと
網状星雲 4秒露出 gain40 110stack
ami 4s gain40 110stack
強調処理により星雲は出ないこともないのですが、ちりめんノイズがかなり目立つことになります。やはり下の画像のように最低でも16秒は必要な感じですね(16秒、107スタック)。
ami 16s gain40 55stack
しかし、このレベルの画質を得るために16秒を107スタックもすると、所要時間28分あまり。一対象に30分近くもかかるのでは、次から次へと天体を見て行きたい電視観望のスタイル(このスタイル自体が個人的なものですが)には全くそぐわない、と言っていいでしょう。
やはり、電視観望に使うカラーCMOSカメラは、ASI294MC、385MC、224MCなど、1ピクセルのサイズが大きく高感度なものが向いている、と言う定説を追試験する結果となりました。


続いて、VIRTUOSOの挙動ですが、上のような電視観望の運用も十分可能で、徐々にその汎用性・発展性が確かめられつつあります。

ただし、かなり運用上のコツがいりまして、少なくとも自分の個体に関しましては

対象天体を中心に入れた状態でバックラッシュやガタを手動で吸収し、画面上で追尾がうまくいき始めるまでの追いこみに時間がかかる

という一言に尽きます。XY軸のモーターの速度を調整し行き過ぎて戻したりとか、天体を中心に入れる操作がとてもやりにくいのです(自分が下手くそなだけ?)。また、中心に置いたと思ってもわずかずつズレる動きがなかなか止まりません(これが止まらないと数秒の露出でも星が伸びて写る)。これらによりかなりの時間ロスが発生し、ストレスにもなります。AZ-GTiでも同じような挙動がありますが、こちらはもう少しスピーディに追い込めます。今は検証中なのでVIRTUOSOを使ってますけど、どっちか選べ、と言われると圧倒的にAZ-GTiをチョイスしますね。

あと、追尾初めて5分くらいで突然流れ出す、という症状が何回か出ました。
nagare
こんな感じになります。理由が良く分からないのですが、取りあえず一回電源を切って再起動、アライメントし直し、でその後は起こりませんでした。操作の手順によってソフト的なバグが発生しているかもしれません(おそらくSynscanの問題)。

というわけで、自宅としては最高クラスの空の条件の元、部屋に引っ込んで星も見ずにディスプレイ画面ばっかり見ていたわけですが、撤収でベランダへ出た時にペルセウス群と思われる明るい流星を2つほど見ることもできました。これ、かなり飛んでたんですよね?

で、双眼鏡出してきて2重星団や、M33とか流してみたんだけど、なかなか良く見える! やっぱり空の条件がよかったんだなあ、などと思いつつも午前4時過ぎ、もう力尽きて寝たのでした(笑)