C8のfl=2000mmを電視観望で運用する検証、プレートソルブ機能を持たせたVIRTUOSOでは「できなくもない」ぐらいの結果でしたが、今回はAZ-GTiでおこなってみます。
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(ちなみに見た目でわかりますが、この組み合わせは非常にバランスが悪いです。ちょっとしたことで転倒する危険がありますので非推奨となります)

カメラはASII294MCを使い、SharpCapとSynscan、ASTAP、ASCOM等のアプリを連動させ、プレートソルブ機能を持たせたAZ-GTiによる電視観望です。この日は透明度・シーイングとも非常に良い条件でしたが、中程度光害地の自宅ベランダですので肉眼での限界等級は2等+程度、さらに後半は月齢19.5の月の影響もありました。

さて、VIRTUOSOの場合、架台水平部との干渉を防ぐためASI294MCを鏡筒ギリギリのとこに付けてましたが
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C8は主鏡移動によってピントを調節しますので、ここを焦点位置にしますと(たぶん)合成焦点距離が1900mmくらいとなって、補正板による球面収差の補正が足りず微妙に球面収差を発生させてしまいます。

その点、AZ-GTiではハーフピラーに載っているのその辺の干渉は防げます。スペーサー(ボーグのヘリコイドT他を使用)を調整することで焦点面を最適位置に持ってくることができるわけです。
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設計上の最適引き出し量が不明なのですけど、光学シミュレーションの結果10cmくらいではないかと想定していて、まあ前後数cmなら大きな影響はないかと。

ということで日が暮れるのを待ちかね午後7時30分ごろC8を設置。
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この日は日中から雲一つない青空で、非常に透明度が良さそうです。星が見え始めたところでAZ-GTiのアライメントをおこないます。

AZ-GTiとVIRTUOSOは同じSynscanを使っていますので、プレートソルブ等の使い方も全く同じ。ただやはりAZ-GTiのほうがバックラッシュが少なくて少し使いやすいですね(あくまで自分所有の個体での話です)。

さて、暗くなってきたところでM8が低くなる前に行ってみましょうか。とりあえずはノーフィルター、4秒露出。
m8 4s gain300 55stack no filter
(m8 4s gain300 55stack no filter)

・・・えっ!?

なんだこれ、輝度の高いM8とは言え、F10という暗い光学系に4秒露出であるにもかかわらず、かなり写ってないですか?
ただし、少し明るい星がボテッとしてるのがちょっと不満、ひょっとして「単レンズ」であるシュミット補正板が微妙に赤外ピンボケを発生させている? そこでUV/IRカットフィルターを入れてみます。
m8 4s gain300 60stack  uvir cut filter
(m8 4s gain300 60stack  uv/ir cut filter)
うーん、星のボテりやHⅡ領域の出方はあんまり変わらんですかね? むしろ赤外カットにより星の写りが悪くなってにぎやかさが減り、損をしたような気分(個人的に赤外カットが嫌いという側面もあります 笑)。

一応、QBPでもやってみます。
m8 4s gain300 52stack  qbp filter
(m8 4s gain300 52stack  qbp filter)
このときはもう西にかなり低くなっていて完全に同一条件ではないのですが、画面の派手さがなくなってしまいますね。ノーフィルターと比べてかなり色々な周波数成分がカットされているのですが、星像はそれほどシャープになってないのでシュミット補正板による赤外ピンボケ等はなさそう。
まあ、QBPフィルターを使った場合、HⅡ領域の表現がきめ細かくなってくるのはメリットですね。

M20の反射星雲もノーフィルターの方がよく出るはず。
m20 4s gain300 110stack no filter
(m20 4s gain300 110stack no filter)
ほらほらほら、これはもう自分史上最高のM20解像度ですね。この辺はやはりfl=2000mmの威力と言えます。
何だか星像も少しシャープになってる気も?
高度が少し高くなってシンチレーションの影響が減ったのと、C8が温度順応してきたのではないかな? と取りあえず考察。

いつもの「夏の銀河HⅡ領域4兄弟」をどんどん行きます。M17
m17 4s gain300 54stack no filter
(m17 4s gain300 54stack no filter)
M17は一応QBPフィルターバージョンも。
m17 4s gain300 70stack qbp filter
(m17 4s gain300 70stack qbp filter)
まあ、好みが分かれるところとは思いますが、やっぱり自分はノーフィルターで星がたくさんあって派手な方がいいですかね。ただ、星の「色」に関しては「赤外白飛び」を起こしているノーフィルターの写り方に対し、QBPの方が黄色とか青に少し表現されているとは思います。

M16もノーフィルターで。
m16 4s gain300 100stack no filter
(m16 4s gain300 100stack no filter)
拡大すると「創造の柱」の構造もだいぶ見えて来てる気が!
16 kaskudai
惑星状星雲にはやっぱりQBPで! M27
m27 8s gain300 56stack  qbp filter
(m27 8s gain300 56stack  qbp filter)
これ、だいぶ中央トリミングしてるのですが、かなり星像がシャープになってきました。やはり高度の高い対象でシンチレーションの影響が少ないため? 2000mmともなると影響が避けられないのかも。ちなみにこの日は非常に気流が落ち着いていました。

M31ではノーフィルターに戻します。
m31 8s gain300 55stack  no filter
(m31 8s gain300 55stack  no filter)
暗黒帯の細かい構造が表現され始めてきてます。コントラスト調整とかできたらもう少し浮かび上がるのでしょうかね?

NGC253の構造もそれなりに・・・
253 8s gain300 105stack  no filter
(ngc253 8s gain300 105stack  no filter)
こういう暗黒帯を表現するにはノーフィルターが一番いいって話ですね。

さて、2000mmのスケールを思う存分味わったところで次の検証。シュミットカセグレン用の×0.63レデューサーを試します!
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これはF10→F6.3にするやつで、セレストロンやミードでも純正品がありますね。自分はアンタレス・ブランドの同等品を所有。これを接眼部にねじ込み、スペーサーを入れてASI294MCを接続。
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このレデューサーと焦点面の距離にもそれなりの厳密性があり、一定に離す必要があります。距離が長いほどF数が小さく(明るく)なるのですが、試行錯誤したところ上の画像の状態で×0.63になりました。

↓二重星団付近(fl=2000mm)
nijuu
fl=2000mmでは、4/3”センサーのASI294MCにおける実視界が0.5°×0.37°になります。

↓二重星団付近(fl=1260mm)
nijuu3
fl=1260mmでは実視界が0.8°×0.6°になり、対角では1°。かなりの広視野(?)となります。中心像は非常にシャープですね。4/3”の最周辺はさすがに崩れ、周辺減光も出てきましたので天体写真用途では厳しいかと思いますが、電視観望では許容範囲。実用できそうです!

そのままM31行きます。
m31 4s gain500 30stack  no filter
(m31 4s gain500 30stack  no filter)
おお、さすがF6.3、F10よりだいぶ明るいですね(単純計算では2.5倍ハイスピードなはず)。中心部の渦巻き構造も見え始めました! シャープネスも問題なさそう。

M1のフィラメント構造もゲット!?
m1 8s gain300 112stack  no filter
(m1 8s gain300 112stack  no filter)
ちょっとコントラスト悪いです。これはさすがにQBPでやっとくべきだったか?

エスキモー星雲
es 1s gain300 70stack no filter
(ngc2392 1s gain300 70stack no filter)

F6.3でもっといろいろやりたかったのですが、残念ながらこの辺で夜が明けてきました。
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しかし、エスキモーは青空の中でも見えてましたね(笑)
yoake es 1s gain300 53stack
8月28日午後8時より29日午前5時にわたる9時間の検証、これにて終了。いやー久しぶりにガッツリやりました(笑)

さて、AZ-GTi+プレートソルブでC8の電視観望ですが、かなりの手ごたえを感じました。特に自分史上最高クラスの天体解像度を得たインパクトは大きかったですね。視直径の小さい天体の拡大志向ならF10でも実用できますが、F6.3の方が汎用性が高いと思います。

AZ-GTiとVIRTUOSOでは前者の方がやや使いやすいと思いましたが、今回一晩操作してバックラッシュ先読み等にも習熟してきましたので、VIRTUOSOでも同じような運用が可能かと思いました(ただし接眼部の干渉を何とかする必要あり)。ただどちらの架台を使ったときも追尾をピタッと止めるのが一番の課題ですね(この記事の画像でも拡大すると星像が少し伸びてしまっているのもあります)。天体の位置によってうまくいったりいかなかったりもある感じですが、まだ詳細は不明。アライメントの精度や架台の水平とかいった問題ではないような気がします。この辺が裏技的な運用も含めた「使いこなし」によって何とかできればもっと電視観望の効率は上がりそうですね。

自分の機材は変な改造をしたイレギュラーなものが多いのですが、今回はすべて現行で入手できる機材を無改造でシステムアップしてこの結果が得られているのは大きいと思います。その気になれば誰でも試せる方法ですね。

ただ、最初にも書きましたがAZ-GTiにC8をそのまま載せると転倒の危険がありますので、同じことをされる方はくれぐれもご注意ください(自分はAZ-GTiのハーフピラーの下を三脚ではなく大きめのプレートに交換することを考えています)。

あとは、ミードのCCD用F3.3レデューサーも試してみたいのですが、こればかりは絶版なのでなかなか入手できないのですよね・・・それも含め、今後とも検証をすすめて行きます!