15㎝F5の「双曲面鏡」を持っています。こういうやつ。
鏡面研磨をするとき、球面鏡(修正量0)の状態から中央を掘り込んで行き「楕円面(0< ~ >1)」を経て放物面(修正量1)にするのですが、この時行き過ぎると修正量が1< の「双曲面」になってしまい、球面の時と逆に中央の焦点距離が短すぎて「負の球面収差」(研磨用語では「過修正」ちなみに楕円面は「負修正」)を発生させることになります。
上の鏡のフーコーテスト結果(F3mirrorさんのリモートフーコーテスターによる測定結果です)
修正量でいうと、-1.6程度の「過修正」状態ですが、放物面鏡としても波面誤差1/5λ程度。何と言っても面が滑らかで実用上全く問題ない鏡です(実際に鏡筒に入れて見ても良く見えました)。
しかし、これを-1.6の「双曲面鏡」として考えると・・・
何と、-1.6基準のカーブには波面誤差1/20λで追従するほぼパーフェクトなミラー。双曲面をここまでの精度で製作するのは放物面と比べてもさらに難しく、どうしてこのような状態になっているのか全く意味が分かりません(笑)。確かビクセンのR150S用の鏡だったと思うのですが、確証がなく正直由来が不明です。
それはさておき、ひょっとするとイレギュラーなお宝かもしれないこの鏡を何とか活用したいともう10年くらい思っているのです(笑)
放物面は「パラボラ」ですが、双曲面のことを「ハイパーボラ」と言います。そうです。双曲面鏡を使ったタカハシのイプシロンは「ハイパーボライドアストロカメラ」ですよね!
ここからは推測になってしまいますが、イプシロンのようなFの明るい短焦点写真鏡を設計しようとすると、どうしても補正レンズ系の正の球面収差が問題になってきます。そこで主鏡を双曲面としてあらかじめ負の球面収差を発生させ、これと相殺することによってトータルでの球面収差をなくし、その分補正レンズの自由度を確保した、という発想ではないかと。最近ではSHARPSTAR 13028HNTなんかも双曲面鏡を採用していますね。こちらは「ハイパーボリック・ニュートン式反射望遠鏡」か・・・あ、ひょっとして「ハイパーボライドアストロカメラ」ってタカハシの登録商標だったりするのでしょうかね?
ま、それはともかく同じ発想にて「プアマンズ・ハイパーボライドアストロカメラ」作れないか? ということで光学シミュレーション(フリーソフト「POPS」を使用)をやってみました。
補正レンズとしては、手元に現物&データのある、ケンコーACクローズアップレンズNo3(333mm)、No4(250mm)、No5(200mm)を使用。
まずはNo3(左上のマウスによる書き文字、めっちゃ手が震えててすいません 笑)
(以下、一辺のスケールは100μm)
中心像に関しては、確かに主鏡と補正レンズで球面収差を補正できている傾向が見られました(30μm→22μm)。しかし「コマコレクター」、「フィールドフラットナ―」としてはほとんど機能せず。ちょっと実用性はなさそうです。
続いてNo4
最後にNo5
うーん、どうでしょう、中心像と周辺像の兼ね合いからNo4が一番いいでしょうかね?
しかし、当方の主力機、14㎝シュミットニュートン+No4の光学シミュレーションはこんな感じ
(1辺のスケールは60μmとなっています)
中心星像は10μm、周辺(入射角1.5°)は30μm、上の3つと比較すると圧倒的な高性能と言えますね。
電視観望では4/3"でも実用上「全面ピンポイント気味」の星像が得られます。
取りあえず、これを超えられない限り実用に供することは、ない(笑)。
なかなか、「ハイパーボライドアストロカメラ」への道は険しいようです・・・
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