ASI482MCです。
482MC
1/1.2" (11.13x6.25mm)のIMX482センサーはピクセルサイズ5.8μm、SNR1sは0.08 lxと今までにない高感度が期待されます。自分はIMX482の存在を知って以来、約1年に渡ってこのセンサーが搭載されたCMOSカメラがリリースされるのを心待ちにしていました。

どこかベンチャーな会社が先鞭をつけるのでは? と予想していたのですが、大本命のZWOからASIシリーズの一つとして発売。「死んでも買う」ぐらいの勢いで即刻入手しました(笑)。

その気持ちが天に通じたのか、入手翌日にタイミング良く台風一過の快晴です。
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C8に×0.63レデューサーをつけ、レデューサーと焦点面の距離約11cmにて、合成fl=1322mm、合成F6.5を得ています。
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ASI482MCには説明書やドライバーのCD等が付属しておらず、本体とケーブル等が箱に入ったものが送られてきたのみです。これはSVBONYと比べてかなり不親切と思いました。
取りあえず、”ZWO ASI482MC Driver”でネット検索して、ZWOのサイトからASI Cameras This driver MUST be installed for Windows users to use ASI cameras.のv3.17をダウンロードして使用。
Sharpcapは4.0以上じゃないと動作しないみたいです。

上の環境にて地上風景でカメラの動作を確認し、暗くなるのを待って電視観望スタート!
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この日は月齢11で月が大きいので、最初からサイトロンQBPフィルターを使用しています。

ASI482MCのGainは720まで上げられるのですが、最大Gainに近づくほどノイズが増えて諧調が失われてしまいました。取りあえずでGain400に設定。ダークフレームを減算しています。

まずはM8、Gain400、4秒露出、QBPフィルター、ライブスタック前の一枚画像では?
m8 4s gain400 qbpfilter  1stack dark
おっ、4秒露出の一枚でこれなら、まあまあじゃない? 下にアンプグロー? みたいなのあるけどライブスタックでどうなるか。さて、でこの状態から41stack。
m8 4s gain400 qbpfilter  41stack dark
・・・えっ?
何だこれ、下のアンプグロー激しくなって少し上にも出てるし背景ムラムラのノイズだし、星雲本体の階調もないのだけど・・・?

こんなはずない。M8もう西に低いからちゃんと写らないんだろうか。それならもう少し高度のあるM17では?
M17、Gain400、4秒露出、QBPフィルター 10stack
m17 4s gain400 qbpfilter  10stack dark
・・・ええっ?
おんなじや! いやもっとノイズひどいか? こんなはずじゃ・・・よし、比較のためにCMOSカメラをASI294MCに交換して・・・と、どうだ!?
M17 4秒露出 gain500 qbpfilter  74stack dark減算 ASI294mc
m17 4s gain500 qbpfilter  74stack dark 294mc
いや、ちゃんと写るのですが・・・? これは当方の482の設定が悪いのだろうか?

ここで鏡筒を14cmf3.1シュミットニュートンに交換。Fの明るい光学系で輝度の低い対象を狙ってみます。Gainは抑えめの250にて。
M33 8秒露出 gain250 qbpfilter  60stack dark減算 asi482mc sp140ss
m33 8s gain250 qbpfilter  60stack dark 482mc sp140ss
うーん、やっぱりダメか・・・背景ムラムラでノイズ出るし、特に高感度ってわけでもなさそうだし。

ちなみに、ダークが悪さをしているのではないかと思ってダーク減算しないのをやってみると・・・
M33 8秒露出 gain250 qbpfilter  68stack dark減算なし 482mc sp140ss
m33 8s gain250 qbpfilter  68stack nodark 482mc sp140ss
あー、これはもう見事な芸術作品並みのカラー土砂降りですよ。ここまで出ればもう笑うしかなく・・・

これがASI294MCだとですね・・・
m33 8秒露出 gain500 qbpfilter  148stack dark減算 294mc sp140ss
m33 8s gain500 qbpfilter  148stack dark 294mc sp140ss 66%
スタック枚数も違いますが、それなりに見られる状態に持ってくることができるのです。

ASI482MCもGainをもっとおさえてみたらどうかな、で60でやってみました。
M31 8秒露出 gain80 qbpfilter  68stack dark減算 ASI482MC sp140ss
m31 8s gain80 qbpfilter  68stack dark 482mc sp140ss
ノイズはなくなるのですが、暗すぎて全然淡い部分を持ち上げられません。

これがASI294MCならGain500という高い数値を使ってもノイズが出ないので・・・
M31 8秒露出 gain500 qbpfilter  33stack dark減算 ASI294MC sp140ss
m31 8s gain500 qbpfilter  33stack dark 294mc sp140ss
もう少し淡い部分まで表現できるのです。

もっとも、482のGain60でもM27のような輝度の高い対象だとそれなりに表現できますが・・・
M27 8秒露出 gain80 qbpfilter  53stack dark減算 ASI482MC sp140ss
m27 8s gain80 qbpfilter  53stack dark 482mc sp140ss
これ、8秒露出なのですが、294なら2秒でこれぐらいは写るんですよ。ですので、482は感度の面では294に及ぶべくもない、というのが自分の環境と運用スキルの範囲で得られた結果です。
これならSVBONY SV305の方がよっぽど使いやすいしパフォーマンスも上と思います。

と言うわけで、残念ながらASI482MCはDSOの電視観望には向いていない、というのが現時点での印象になりました。ただし、これはあくまで当方の環境におけるたった一回の検証結果なので、正直使い方が悪いだけかも知れません。また、ドライバーが未完成なだけで今後のバージョンアップにより当初期待された性能(特に高感度とノイズ特性)まで劇的に向上するかもしれません(あるいはしないかもしれません)。

いずれにせよ、今後どのように展開するかは全く不明ですのでASI482MCの取得を迷っている方は具体的な使用方法が判明するまでは手を出さない方が無難だと思います。ただし、ZWOの営業妨害をするつもりは全くありません。適切な運用についてぜひ自分でを検証してみたいという方はこの無限の可能性を持つCMOSカメラへの挑戦をむしろ推奨するものでもあります!

追記
Sharpcapのバージョンを4.0.8173にしたところ、ホットピクセルの状況はまだおかしいものの、階調が復活してました。Sharpcapの最新バージョンでは普通に使えるようになってるかもしれない可能性が出てきています。
雲の間からM27を電視観望(下のカブリは雲によるもの)できましたが、その後曇ってしまったので現時点では追加検証不能です。
m27 8s gain250 15stack QBPフィルター ダーク減算
E_p1QfvVcA0XPsN
まだこれで使えると決まったわけではありませんが、もしそうだとしたら、商品の購入者には問題なく使用できる環境のインフォメーションをして欲しいですね。”純正のASIStudioを使え”的なことでもいいから。
いずれにせよ、今後とも検証を続けます!