Twitterで”大星雲同盟の掟”と題し、ノスタルジックな内容の書き込みをしたら反応してくださる方が望外に多く、たいへん楽しくやり取りをさせていただいてます。

関連して(?)今回の記事は40年前のフィルム時代(決して「銀塩」とは言わない 笑)に、わたくしが必死でやっていたことを写真が残っている範囲で少しご覧いただきます(いずれも印画紙で残っているものをスキャナで取り込んでいます)。

まず、当時のシステムですが、マークX赤道儀(MX-1、MX-2、MX-3)に自作三脚、ミザールMMD-Ⅲ、ビクセンGA-2、10㎝F6(スリーコールスーパーミラー)の直焦点を「半自動ガイド」でやってました。それで撮ったのを2つほど(これらの機材写真が残ってたら非常に良かったのですが、当時の機材は一切撮ってないのですよね。大変残念です)。

さて、まずはM31、103aE、12分露出
31 103aE
fl=600mmですが、一応35mmフルサイズ(当たり前か 笑)なので結構画角は広くM31の全景が捉えられています。今見ると10㎝F6放物面(当然レデューサー使わない時代)の周辺像が結構いいですね。M31の周辺部分は捉えきれてませんが、今の電視観望なら数秒でこのレベルまでは出せます(笑)

馬頭星雲もこんな感じ(12分露出 103aE)
馬頭
アルニタクの盛大なイラジエーション、中くらいの星の周りの103aに特徴的なハレーションが美しいです。これも見事なまでに当世の電視観望では数秒で完了するレベル(笑)

続いて自分のひとつ上の先輩、Yさんにお借りした25cmF8直焦点でのM42 10分露出 103aE
42 25cmF8
それなりの覆い焼きをしているのですが全然階調が出せてませんね(笑)。ネガが発見できればもう少し復活させられると思うのですが所在が不明。
当時としてはfl=2000mmの長焦点でのチャレンジはあんまりなかったですね。この25cmF8はYさんが主鏡・アルミ四角鏡筒とも高校時代(!)に自作され、西村製作所製の赤道儀に載せて使っておられました。
赤道儀はこれと同じもの↓

この架台には極軸望遠鏡とかないので、大学の屋上に無許可で設置したうえ1晩かけて極軸を合わせ、教室から延長コードで電源を引いてAC電源のモーターを駆動し、決死の思いで半自動ガイドを敢行したものです(笑)

そうこうしているうちに、水素増感2415の時代がやってきました。
NGC253 10㎝F6 水素増感テクニカルパン2415 露出不明(たぶん10分くらい)
253 2415
103aから切り替えた時に「何じゃこの微粒子は? 完全に焦点距離を倍にしたくらいの解像度を示すぞ!」って感じで、この画像のように中央強拡大して喜んでいたりしたものでした。

そしてその頃、天文ガイドに渡部正明さんの木星のカラー合成の記事が載っていました。
IMG_3818
当時も惑星写真はやってなかったのですが、天文ガイドの同じ号にこの原理を使ったと思われる、はくちょう座の散光星雲の写真が載っていて
IMG_3819
これをやってみたいと強烈に思ったのでした。

まずは三色分解撮影をする必要があるので50mm標準レンズで、今で言うRGB分解撮影を行いました。
RGB
左から、B(C12フィルター)、G(PO1フィルター)、R(R1フィルター)です。露出はいずれも10分程度だったと思います。G画像は見事に真っ暗ですね(撮影に使った50mmレンズはもともとF2のレンズを2.8まで絞っていますが、あまり周辺像のいいレンズではなかったです)。

で、渡辺さんのようなワクを作りトレーシングペーパーを貼って星の位置をいくつかプロットし、3枚のRGBを差し替えながら、カラーフィルムを入れたカメラで「カラ巻き上げ」をしつつ「三重露出」をして行くわけですが、おそらくいろんな不安定要素が重なっていたのでしょう、一切星の位置が合いません。ほとんどこんな感じでした↓(しかも現像が上がってきてから時間差でそれを知ることになる)。
カラー失敗
しかし、無策な自分は他にやり方を考えることもなく(笑)同じやり方をゴリ押しすること数十テイク、3回目の現像の時くらいに奇跡的に成功したバージョンを得ることが出来ます。
カラー
めでたし、めでたし・・・いや? どうなんすかね、これ? つぎ込んだお金(と言っても学生には、という額)と時間に見合う結果出てますか? これ。
で、この時に自分は思ったのです。

天体写真ってお金もかかるし時間もかかるし、けっこう割に合わないぞ

微妙に気持ちが折れたのだと思います。

というわけで一挙に現代に飛びますが、今やってる電視観望は素晴らしいです。
ランニングコストはほぼゼロ、当時の苦労の結果をはるかに上回る画質が圧倒的に短い時間で得られます。「時短ファーストの会」を自認する身にとってはまさに数十年後に訪れた福音と言えましょう。

まあ、現在のトップクラスの天体写真もランニングコストだけはかなり減少したとは言えますね。機材や労力のコストは昔と変わらず高値安定かとは思いますが。
さて、昔話を前フリにして記事を展開してきましたが、最終的には星をやるにはいい時代になったというオチで締めようと思います(笑)