いやいや、またまた出ましたよ、天体観望のゲームチェンジャーが。
フランス、Unistellar社の新製品、eVscope2です。

もともとUnistellar社からは、eVscopeというオールインワン電視観望的な望遠鏡が出ていて、それをいち早く入手されたTANKOさんが天リフ超会議でも講演されていたのですが、

このたび、さらに性能が向上したeVscope2がリリースされ、TANKOさんは、これまたいち早くUnistellar社からデモ機を借用して星と自然のフェスタに持ち込まれていました!

非常にシンプルな外観です。
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口径は4.5インチだから約115mmでfl=450mm。本来副鏡がある場所にはIMX347センサー(1/1.8”)がついています。
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旧型のeVscopeはセンサーが1/3”のIMX290でしたからこの点が大きな進歩ですね。
さらにアイピース部分はNIKONが製造しているそうなのでその辺にも期待が持てますね。

このeVscope2も既に天リフの山口編集長が動画で紹介しておられます。

実際の使用も上の動画で紹介されていますが、ポンと望遠鏡を出して電源を入れ、どこかに向けると視野に入った宙域を確認し、観測地のGPS情報なども自動で取得して望遠鏡まかせでセッティングが完了! この操作も全てスマートフォンによるリモコンでおこなわれます。
常にSynscanのアライメントで手間取っている身には夢のような状態です。

もちろん、その後は自動導入・追尾。3回ほどプレートソルブをおこないながら対象天体が導かれる様子も手元のスマートフォンで確認可能。さらにスマートフォンに専用アプリを入れて置けばギャラリーも自分のスマートフォンのディスプレイで天体のモニターが可能、と致せりつくせりです(実際、Starlight_365さんはこの場面を想定してあらかじめアプリをインストールして臨まれ、手元のディスプレイで見ておられました。さすが!)

まあ、手元のディスプレイで見るもよし、なのですが、やはりeVscopeの真骨頂はアイピースを覗き込んだ時のパフォーマンスですね! こんな感じに見えます(エンハンスドビジョン:ライブスタック的に複数画像を合成したもの)。
eVscope-20211113-114740
(画像提供:TANKOさん 見た天体の画像は当然スマートフォンに保存できます)

これですわ! あまり派手にせずに眼視で見た感じに寄せてあって、しかしはっきり見えて色も美しい!

象徴的な出来事がありました。おそらく初めて望遠鏡を見るであろう、小学生ぐらいの男の子・そのお母さん・おばあさんの3人連れのギャラリーが来られた時

男の子「うわ、すごい! 青く見える!」

お母さん「えっ、どれどれ・・・ほんと、すごい!」

おばあさん「すごい! こんなに良く見えるんですね」

正直、口径50㎝でM42を見てもらった時でもここまでの反応は経験がありません。月面を初めて望遠鏡で見た人の反応に近いですね。色が見えるのも大きいです。

このギャラリーの皆さんの感動3連発を目の当たりにした時、図鑑に載っていた美しい星雲・星団の写真のように見えると思って望遠鏡を入手し、そんな姿には見えない、と知って死ぬほどがっかりした少年時代が走馬灯のように頭をよぎりました(笑)。

ああ、とうとう天体写真そのままの姿がリアルタイムの望遠鏡で見られる時代になったのだな、と。

天体写真そのまま、と言いましたが、eVscopeの画質は、昨今のアマチュア天体写真家の皆さまによる異常な解像度の天体写真はもちろん、わたくし程度の腕前の電視観望にも及ばないものです。
たとえばM27ですと、eVscopeの価格の1/5のコストで組まれたわたくしのシステムでもこのくらいは行きます。
m27 8s gain300 56stack  qbp filter
しかし、画質の差を補って余りあるのが、

望遠鏡を覗く、という主体的な行動で得られた結果による感動です。

たとえば、上のM27の画像を電視観望にてディスプレイに出しているとしますね。一般観望会だとギャラリーが、あ、何か画面に写ってる、って寄ってきて、あーなるほどねー、って、まあそれなりに感心はしてくれるんだろうけど、お膳立て要素が強すぎて主体性を持てないと思うのですよね。

それが、望遠鏡を覗かないと見えないものだったら、あれ? 何か人が列作ってるぞ? それに覗いた人がすごいすごい言ってるし、何だろう? ワクワク・・・で自分の番が来てあの色鮮やかなM27が見えた日にはもう、その感動ははかり知れません!(笑)

もう、完全に一般観望会eVscope最強! を確信しました次第です。

しかし、eVscopeの存在によって、他の通常望遠鏡が今一つ意味を失ってしまうという両刃の剣でもあり、すこし立ち位置が難しくなるかもしれないですね・・・

まあ、これは今後の運用文化の熟成を待つとして、TANKOさんが提供してくださったM1の画像で締めたいと思います!
eVscope-20211113-122312
これ、実際に覗いたアイピースの先ではほんのりと色が着いていて美しかったです。

さて、今後の自分の懸案ですが、現状の電視観望システムにいろいろインチキ技を使って「プアマンズeVscope」がデッチ上げられないかと画策中!(笑)