CometBPフィルターをアクロマート屈折、ミザールBN-80 8cmF5鏡筒で使ってみます。
IMG_4431
BN-80 はC線とF線を一致させた伝統的な設計のアクロマート。今回はこういった傾向のレンズにCometBPフィルターを使った場合、どのような色表現になるのかを見るのか目的です。

この鏡筒にはケンコークローズアップレンズACNo4による0.87×レデューサーを使い、合成fl=348mm、合成F4.4となっています。
CMOSカメラはASI294MC、架台はAZ-GTi、SharpCapによる電視観望です。
当日は月のない条件、光害地ではありますが3等星程度まで確認でき当方自宅としては比較的良い条件でした。

CometBPフィルターはQuadBPフィルターのような「デュアル・ナローバンド」の特性に400nm前後の「青」の波長を透過するのが特徴です。
CBP2
本来これはCometBPの名称が示す通り、彗星の波長成分に対応したものですが、自分は電視観望においてより自然なカラーバランスを求める目的で使用しており、ある意味「目的外使用」とも言えます。

今回の検証の主な目的は400nm付近の「青」の成分が「青ハロ」として表現されるのか、そしてその程度はどのくらいなのか、を確認することです。

さて、さっそく行きます。
北アメリカ星雲 Gain390 8秒露出 32スタック CometBPフィルター
北アメリカ星雲 Gain390 8秒露出 32スタック CometBPフィルター
予想通り、適度な青ハロが赤いHⅡ領域と色の対比を演出し、「怪我の功名」的な彩度の高さを示していますね!

で、このBN-80鏡筒については早くも検証終了(笑)。続いて本命のSVBONY SV503 70ED 7㎝F6鏡筒に切り替えます。
IMG_4432
これもC線F線を一致させており、青ハロが出るのはある程度我慢して、球面収差を良く補正してあるという、アクロマートの延長線にあるような素晴らしい設計の鏡筒です。
同じく、ケンコークローズアップレンズACNo4による0.87×レデューサーを使用。合成fl=365mm、合成F5.2となっています。
北アメリカ星雲 8秒露出 32スタック Gain390 CometBPフィルター
北アメリカ星雲 8秒露出 32スタック Gain390 CometBPフィルター
ほとんど青ハロは目立たなくなりましたね! と思ったのですが、急激に気温が下がってピント位置が移動したらしく、ややピントが甘くてピンボケが青ハロを飲み込んだ状態だったようです。
そしてF値は5.2と暗くなっているはずなのに、なぜかF4.4のBN-80より暗いところが写っている気が? 鏡筒のコントラストがいいってことなのでしょうか?

ピントを合わせなおすと、やはり青ハロは少し明るい星のまわりには、わずかに出ています。
網状星雲 8秒露出 22スタック Gain390 CometBPフィルター
網状星雲 8秒露出 22スタック Gain390 CometBPフィルター
まあ、これぐらいは上品な感じで美しいと思うんですよね個人的には(笑)

さて、連続スペクトル天体である銀河はどのように表現されるでしょうか。
M31 8秒露出 44スタック Gain390 CometBPフィルター
M31 8秒露出 44スタック Gain390 CometBPフィルター
あ、いい感じの写りですね。しかし、ここでちょっと気になったのが、右上のアンドロメダ座v星が白く大きく写り過ぎていて、これ「赤外ピンボケ」の症状なんですよね。CometBPフィルターの特性表を見直してみると1000nm付近を少し透過している。おそらくASI294MCも1000nm付近にはわずかに感度があり、輝星に長時間露出をかけることによって赤外ピンボケが顕在化しているんじゃないかっていう(あくまで仮説です)・・・

ただし、そうだとしてもQuadBPフィルター(Ⅱ)でやっているようにUV/IRカットフィルターを併用すればいいだけの話だし、自分のような反射鏡筒中心で赤外も使いたい者にとっては好都合なのですけどね。

さて、M33はどうか。
M33 16秒露出 30スタック Gain390 CometBPフィルター
M33 16秒露出 30スタック Gain390 CometBPフィルター
こっちは青ハロがいい感じの彩度を演出してますね!

さて、CometBPフィルター導入の最大の目的は「青い反射星雲をより青く表現したい」なのですが、M45の反射星雲はどうか?
M45 16秒露出 24スタック Gain390 CometBPフィルター
M45 16秒露出 24スタック Gain390 CometBPフィルター
お、これはいいですね。予想通り、いい感じの青に表現できました。これまでデュアル・ナローバンドでM45やると反射星雲が青緑になるのが不満でしたが、これなら及第点です! きっとM20の青も良く出ることでしょう!
しかし、M45散開星団の星々が、やはり赤外ピンボケ気味の膨らみ方。屈折鏡筒にはCometBPフィルターは向いてないでしょうか(あくまで個人の感想です)。

まあしかし、今日は星像の膨らみは置いといて、赤いHⅡ領域青ハロの色彩の対比を楽しむこととします。
カリフォルニア星雲 16秒露出 8スタック Gain390 CometBPフィルター
カリフォルニア星雲 16秒露出 8スタック Gain390
まが玉星雲 16秒露出 10スタック Gain390 CometBPフィルター
まが玉星雲 16秒露出 10スタック Gain390
ハート星雲 16秒露出 12スタック Gain390 CometBPフィルター
ハート星雲 16秒露出 12スタック Gain390
人工衛星通りました。
ソウル星雲 16秒露出 6スタック Gain390 CometBPフィルター
ソウル星雲 16秒露出 6スタック Gain390
馬頭星雲 16秒露出 14スタック Gain390 CometBPフィルター
馬頭星雲 16秒露出 14スタック Gain390
ばら星雲 16秒露出 36スタック Gain390 CometBPフィルター
ばら星雲 16秒露出 36スタック Gain390
モンキーヘッド星雲 16秒露出 24スタック Gain390 CometBPフィルター
モンキーヘッド星雲 16秒露出 24スタック Gain390
くらげ星雲 16秒露出 28スタック Gain390 CometBPフィルター
くらげ星雲 16秒露出 28スタック Gain390
トールの兜 16秒露出 61スタック Gain390 CometBPフィルター
トールの兜 16秒露出 61スタック Gain390
ちっちゃ!(笑) 中央拡大してみます。
トールの兜 16秒露出 63スタック Gain390
一応、構造は写ってるみたいですね。これはC8のfl=2000mmあたりで撮らないといけないかな・・・?

最後に、ASI294MCのダイナミックレンジの広さを確認するためにこれ。
M42 16秒露出 42スタック Gain390 CometBPフィルター
M42 16秒露出 42スタック Gain390
ASI482MCだと、明るいとこ飛びまくってこうは行かないのですよね。ちなみに今回、ASI294MCが14bit動作をするギリギリの最高Gainである390で統一してます(Gain391から13bit動作になるらしい)。

というわけで、

いやー、青ハロって本当にいいものですね。

という感じでCometBPフィルターのパフォーマンスをお楽しみいただきましたが、同時に赤外ピンボケを起こさない屈折鏡筒ってあるのかな? がまた気になってきました。
例えば人気の「FMA135」3cmF4.5ED鏡筒とかどうなんでしょうね?