さて、”伝説のベストセラー”ビクセンSP(スーパーポラリス)赤道儀にC8を載せてみました!
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しかし、この組み合わせは格別新しいわけではなく、1980年代後半には天文雑誌の各販売店広告でシステムアップされていたのをご存知の方も多いでしょう。
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この頃はオレンジ鏡筒から黒鏡筒への移行時期で「C8+SP赤道儀」はオレンジ・黒どちらのセットもあったと記憶しています。
それはともかく上の広告の写真、絶対このウエイトの位置ではバランスが合わない、と断言できますね。まあ、ウエイトがシャフトの先ギリギリにオーバーハングしてたらカッコ悪いっちゃ悪いですので「余裕あるよ」的な小さな嘘の演出かとも(笑)

時代は過ぎ、今回の”令和式SP赤道儀システム”のポイントはStarSenceExplorerを装備することによって、
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CMOSカメラ(ASI294MC)を使った電視観望の導入支援をおこなうことでしょうか。
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しかし外見的には、大きくオーバーハングしたウエイトが昭和風な過積載のロマンを感じさせてもいます(笑)

搭載鏡筒のC8は20cmF10、fl=2000mmなので、4/3"センサーのASI294MCではフルサイズ換算4000mm、画角は0.5×0.37°となります。その日の月を入れてみるとギリギリです(CometBPフィルター使用)。
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この画角にDSOを手動導入するのはなかなか困難ですし、SPの時代には自動導入とか夢のまた夢でしたので、StarSenceExplorerの使用でその辺をカバーする作戦です。

SP赤道儀はベランダに設置しますが、当方宅のベランダからは北極星が見えないので、極軸のセットに関してはこういう本に載っていた、
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星のずれていく方向で追い込む方法を使います。
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極軸望遠鏡つきの赤道儀を使うようになってからこの方法はやったことが無かったのですが、何十年ぶりかの敢行は(予想通り)手間と時間がかかりました(笑)
ま、ベランダの三脚の位置をマークしたので、次からはここに置くだけで簡易セッティングができます。

さて、たまにやる気を出せばこんな天気・・・
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星をやる気がおこらず、ギター弾いて遊んでいる日に限って快晴、というパターンがこのところ続いているのですが、とにかく晴れ間を見つけて電視観望をおこないます(笑)。
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StarSenceExplorerは向けた方向をプレートソルブしてくれるので、自分の現在地がわかる「宇宙カーナビ」的な感覚でしょうか。スマホのディスプレイ上の宇宙の地図をリアルに旅する感覚で非常に楽しいですね。

実はStarSenceExplorerを赤道儀で使うのは初めてで、表示される天体の矢印を追うのに少しコツがいりましたが、結局は「変な動きをする赤道儀の2軸を操作して向けたい方向に向ける」なので、初心者の頃に苦労した「赤道儀を振りまわす感覚」を思い出せば割かし矢印に追従できました。
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ちなみに自分のSP赤道儀はモーターの付属してないものをジャンク1万円くらいで入手したやつですが、後付けの追尾装置としてDCモーターを模型用のギアボックスで減速したこういうやつを使ってます。
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これ、さかいさんがセットアップされた「追尾装置キット」(?)を組み立てたものですが、右奥の黒い小箱にDCモーターをセンサレスで一定回転に保つ回路が入っており、恒星時で追尾することができます。さらにこのSP赤道儀個体に最適化されたPEC機能もプログラムされており、ピリオディック・モーション±4.3”の高精度を実現!

以上、新旧取り混ぜたシステムアップになっていますが、これで現代風のCMOSカメラを使った電視観望がおこなえるかどうか!?

それでは、M78からです。今回はすべてCometBPフィルターを使用しています。
M78  16秒 Gain390 33stack CometBPフィルター
M78  16秒 Gain390 33stack CometBPフィルター
実視界が1°以下ですからなかなか一発導入というわけにもいきませんね。赤緯微動とモーターのオフ&2倍速(これが赤経微動の代わり)で少し周辺を探す必要がありました。
しかしオリオン座のあたりは薄雲ってるみたいであんまり星雲が出てくれない・・・

それではもう少し空が抜けてそうな、おうし座方面で。M1かに星雲
M1 16秒 Gain390 19stack CometBPフィルター
M1 16秒 Gain390 19stack CometBPフィルター
あれ、M78の時は星が少なくて気づかなかったけど、なんか星像甘いんじゃ? でピント合わせ直したのですが変わらず。あーこれ、光軸が知らん間にズレてる! 合わせ直さないと・・・(うわ、面倒くさ!)

で、合わせなおして少しはマシになったか?
M1 16秒 Gain390 10stack CometBPフィルター
M1 16秒 Gain390 10stack CometBPフィルター 2
周辺のコマの出方を見れば、まだ甘いような気がするのだけれど、いつ曇ってもおかしくない状況で光軸ばかりいじっているわけにもいかない、不本意だけど今日はこの状態でDSOの写りを確かめます。

M42  16秒 Gain390 9stack CometBPフィルター
M42  16秒 Gain390 9stack CometBPフィルター
こういう輝度の高いものはあんまり参考にならんか、次!

M81 16秒 Gain390 45stack CometBPフィルター
M81 16秒 Gain390 45stack CometBPフィルター
お! かなりコントラスト悪いけど、fl=2000mmによるスケールの大きさはやはり魅力ですね! これ、条件の良い日にもっと露出をかけたらかなりのディーテールが期待できそう!

これやったら当然次はM82のバースト見たいんだけど、おおぐま座方面曇った。
よし、なら、しし座方面で・・・と
M65 32秒 Gain390 45stack CometBPフィルター
M65 32秒 Gain390 50stack CometBPフィルター
悪くないですね! しかし星像は少し大きくなっていて、これは気流の影響もあると思います。
で、次の予定はM66なんだけど、しし座方面も曇った(笑)。

仕方なく西に傾いたオリオン方面。
フレイムネビュラ 16秒 Gain390 57stack CometBPフィルター
フレイムネビュラ 16秒 Gain390 57stack CometBPフィルター
さすが、fl= 2000mmなかなか大きく写りますね。

さあて、お次は?・・・の段階で例によって曇ってしまいました(笑)
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うーん、こうなると光軸修正してた間のロスタイムが痛かったですね・・・

ともあれ、このシステムの大体のところはわかりましたので、感じたことを順不同に。

1 StarSenceExplorerで望遠鏡の向いてる方向を把握しながら動くのはやはり楽しい

2 換算4000mm・画角0.5×0.37°への導入は少し厳しい。換算2000mm程度なら一発導入OKか?

3 fl=2000mmはシーイングの影響を受けるのでラッキーイメージングでもしない限り1000mmぐらいと解像度は変わらないかもしれない。F10はやはり暗いので素直にレデューサーを使うべきか

4 こういうオーソドックスなドイツ式赤道儀はクランプの締めたりゆるめたりが面倒くさい(クランプの位置を忘れてて毎回探してるためもある)。さらにバランスウエイトが重量以外の能がない「シングルタスク」過ぎて腹立つ(笑)

5 常にベランダで実機の操作を強いられるので部屋の中に引きこもれない(寒い)

6 画角0.5×0.37°では周辺減光のやバックグラウンドのカブリムラがほとんど発生しない

7 CometBPフィルターは、やはり輝線天体・連続光天体の両方に対してオールマイティに使えそう。

8 GOTO赤道儀、買ったら負け(笑

9 北極星が見えないベランダでも、三脚の位置をマークしておくと、次からはここに置くだけで極軸の簡易セッティングが完了。わずかにずれて行くが、30分程度のライブスタックでも視野の1/4程度のブラックアウトで済むので、電視観望なら実用上問題なし

まあ、こんなところでしょうか。ビクセンSP赤道儀、その生まれた時代による制限要因は多いものの一工夫すれば(あるいはしなくても)現役機材として十分実用性のあるところと思います!

全国のSP赤道儀よ、蜂起せよ!