というわけで、のっけからM16、17付近で強烈な表現を見せた「Apollo-M MAX+PENTAX 6x7 165mm F2.8」ですが、
M16,17 gain525 8s 20stack H-Alpha 7nm filter
M16,17 gain525 8s 20stack H-Alpha 7nm filter
実はPENTAX 6x7 165mm F2.8のレンズ自体もとんでもないことが判明!
上の画像の中央を800%拡大したものが以下。
tyuuou
微光星が2~3ピクセルに納まっているかなりの鋭像ですね。まあ、ここまではよくあります。
しかし次に右上の端を800%に拡大しますと・・・
migiue
なんと、中央とく同じ2~3ピクセルで、周辺減光も全くありません。これ、本当の「全面ピンポイント」ですよ!
アナスチグマートにも程がある!(笑)
加えてF2.8の明るさ、さすがにこの明るさだけはAskar、RedCat、SHARPSTARなどの写真用屈折鏡筒でも成しえていません。これはもう小さなシュミットカメラと言っても過言ではないですね!(ただしこのレンズ、絞り開放の状態では色収差が出ますので、アナスチグマートは単色光に限った話になります)

まあ、それはそうですよね。もともとが60mm×70mmの広大なフォーマットをカバーするべく設計されているのですから、Apollo-M MAXの1.1型センサー、14.5×9.9mmなんざ、中央も中央、像が破たんするわけもない範囲と言うことになるでしょうか。とにかくこのレンズ、2年くらい前に送料無料の税込み13,756円で入手しておりまして、この価格はバーゲンとしかい言いようがありません(で、他のスペックのレンズも欲しくなって調べたら軒並み4~5万。165mmは安い方ですが3万とかします。ここ2年で高騰?)

あ、それから全面ピンポイントに起因する問題が一つ発生。

あまりにも星像が小さく画面内の星が多すぎて? プレートソルブが成立しない

というイレギュラーが起こっております(笑)。まあ視野が広いので自動導入で視野のどこかに引っかかってくれるから実質的な被害はないのですけど。

さて、それはともかく予定外の高画質にかなり勢いづきましたので(笑)、もうすこしHⅡ領域を強調してみます。
M16,17 gain525 8s 64stack H-Alpha 7nm filter
M16,17 gain525 8s 64stack H-Alpha 7nm filter
あー、ここまで強調すると画面左下の追尾中心から同心円状のちりめんノイズが出てしまいますね。あまり強調はできないかな。

そうだ、逆にスタック枚数を減らしてみたらどうだろうか
M16,17 gain525 8s 20stack H-Alpha 7nm filter
M16,17 gain525 8s 20stack H-Alpha 7nm filter kyoutyou
64スタックより20スタックが画質的に見やすい、という一種の逆転現象ですね。

三日月星雲 gain525 8s 10stack H-Alpha 7nm filter
三日月星雲 gain525 8s 10stack H-Alpha 7nm filter kyoutyou
これも10枚とスタック枚数少なくして「ちりめんノイズ出る前に切り上げる作戦」
まあ、スタック枚数多くてもあんまり強調しなかったら、ちりめんノイズも目立たないのですけどね。
三日月星雲 gain525 8s 40stack H-Alpha 7nm filter
三日月星雲 gain525 8s 40stack H-Alpha 7nm filter
サドル付近 gain525 8s 21stack H-Alpha 7nm filter
サドル付近 gain525 8s 21stack H-Alpha 7nm filter
HⅡ領域と言えば、沼澤茂美さんの「THE DEEP SKY」は衝撃でした。今、その本と同じ雰囲気をほぼリアルタイムで味わうことができます。
IMG_5784
何なら、こんな感じで比較もできる。
IMG_5785
こういうの、本当に楽しいです。沼澤さんが「THE DEEP SKY」を出された約30年前はこの画像を得るのにシュミットカメラの調整やテクニカルパン6415を円形フィルム切ってホルダーに入れ、撮影、現像、プリントなど、今では考えられないほどの苦労をされていたと思います。それが今や自宅にいながらにしてさほどの苦労もなく、さらに高画質の像が得られる・・・隔世の感がありますね。

さて、夏の銀河の王とも言うべき北アメリカ星雲も強調処理をすると、やっぱりちりめんノイズが出てしまいます。
北アメリカ、ペリカン gain525 8s 78stack H-Alpha 7nm filter
北アメリカ、ペリカン gain525 8s 78stack H-Alpha 7nm filter
で、ここでふと思い立って、露出を8秒から16秒に増やしてみました。
北アメリカ、ペリカン gain525 16s 40stack H-Alpha 7nm filter
北アメリカ、ペリカン gain525 16s 40stack H-Alpha 7nm filter
そしたら、ちりめんノイズはだいぶおさまりますね。どうも露出アンダーに起因するちりめんだったようです。あくまで「もっと光を!」という話ですね(笑)。

さて、それでは以降16秒露出で。
Heart&Soul gain525 16s 10stack H-Alpha 7nm filter
Heart&Soul gain525 43s 10stack H-Alpha 7nm filter
昇って来たばかりのところを軒下から狙ってみましたが、ハート星雲のほうから軒に隠れてしまいました。

M8,20 gain525 16s 43stack H-Alpha 7nm filter
M8,20 gain525 16s 43stack H-Alpha 7nm filter
こちらは16秒露出の威力でかなり強調することができています。
しかしこれではM8とか飛びまくってしまいますので、もうちょっとおとなしめに処理すると、
M8,20 gain525 16s 36stack H-Alpha 7nm filter
M8,20 gain525 16s 36stack H-Alpha 7nm filter
後で思ったのですが、このように写野の輝度差が激しい場合にGain146を使って階調重視にしたらよかったんですね。

ちなみに肉眼では、いて座の方向は全く星が見えなかったです。まさにHa単色光の威力!

そろそろ薄明が始まってきたので網状星雲で終了!
網状星雲 gain525 16s 70stack H-Alpha 7nm filter
網状星雲 gain525 16s 70stack H-Alpha 7nm filter
ふと思い出したのですけど、もともと自分は「HⅡ領域が見たくて電視観望を始めた」クチでした。今回、Apollo-M MAXの高感度センサーにてHa単色光でかなりの淡い部分まで浮かび上がらせ、またバイブルである沼澤茂美さんの著書と照らし合わせて「あーこういうのがやりたかったんだな」と、星をやって来た上での目標みたいなのをひとつ達成した気がしました。

で、今回の目的達成に鑑み、電視観望の方はこれを最後に引退しようと思います・・・というのはウソで、やっているうちに当初思いもしなかった面白い運用方法が次々に派生し過ぎてしまったので、まだまだ電視観望で取り組むべきテーマが山積しております(笑)。

天文ガイドでもSamさんの連載が充実した内容で掲載されているのに代表されるように、「電視観望」の知名度も上がりメジャーな分野になって参りました。みんなでこの新しいジャンルをますます盛り上げていこうではありませんか!