SV550アポ鏡筒、電視観望のほうはいろいろやりましたので、眼視での性能も検証したいと思います。とりあえず知りたいのは

高倍率は何倍までが使えるのか?

ということですが、併せて手持ちのアイピースの性能比較もおこなっていきます。
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倍率としては
①80倍クラス ②120倍クラス ③200倍クラス(バーローなし) ④200倍クラス(5×バーローあり) ⑤400倍クラス ⑥600倍クラス
の6つのクラスを設け、それぞれのクラスに3~5個のアイピースを設定しています。

SV550鏡筒にはEMS(初期型)を取り付け、2面反射で正立像を得ています。
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EMSはプリズムのようにガラスブロックを通過させないので、像の劣化はない、と考えています。
架台はスコープテックZERO経緯台です。
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まずは①80倍クラス
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これらにはAstroStreet(GSO同等品?)の3枚玉5×バーローを使用します。
左から、BelOMO 10×ルーペ(約80倍)、Carton 10×ルーペ(約80倍)、北軽井沢観測所Lavendura30mmプロトタイプ(約80倍)、北軽井沢観測所RPL25mm(96倍)です。

これで近所の電柱の碍子(がいし)を見ます(画像はiPhone8でコリメート撮影したものですが、実際の見え方を忠実に反映してはいないですので、あくまで目安とお考え下さい)。
80倍
  Belomo:◎+      Carton:◎+      Lavendura30mm:◎      RPL25mm:◎

まぶしいほどの明るさに解像度とコントラスト。80倍クラスはどれも素晴らしいのですが、左の2つがわずかにコントラストで勝る印象です。
(各アイピースの評価は中心像におけるコントラスト・解像度のみを基準とし、周辺像や視野の広さは考慮しておりません。◎、〇、△、×の4段階を主観で判断してます)。

続いて②120倍クラス。これはバーローなしの4mmアイピースを4つ。
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谷光学 Or4mm、Series500 PL4mm、Datyson PL4mm、賞月観星 UWA4mm、いずれも120倍となります。
120倍
    谷光学:◎       Series500:◎      Datyson:◎+      賞月観星:◎

これはいずれも素晴らしいです。ネジ山のエッジが見えてきそうな解像度とコントラスト。強いてあげればDatysonがわずかにコントラストで勝る気がしました。

続いて③200倍クラス(バーローなし)
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Pentax XO2.5mm(192倍)、Vixen LV2.5mm(192倍)、Celestron X-cel LX 2.3mm(209倍)
スマイス入り? のUnder3mmアイピースをダイレクトに使った状態です
200倍バーローなし
     XO:◎+         LV:〇+           X-cel LX:◎

これも各アイピース素晴らしい解像度でした。XOとX-celの差はごくわずかですね。LVはかなり健闘していてコントラストがわずかに落ちるものの、解像度は十分なレベル。3つの中では一番目の位置がルーズでいいので使いやすい感じがしました。

④200倍クラス(バーローあり)
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12.5mm~9mmのアイピースにAstroStreet5×バーローを使用します。
GOTO H12.5mm(192倍)、Dollond 12mm(200倍)、Series500 PL10mm(240倍)、カサイ ST9mm(267倍)、GOTO HM9mm(267倍)。(ざくたさんが製作された1群2枚です)
200倍バーローなし1
     GOTO H12.5mm:〇         Dollond 12mm:◎         Series500:◎-
200倍バーローなし2
    カサイ ST9mm:〇       GOTO HM9mm:◎-

これらも解像度はなかなかのもので、「碍子に反射した太陽のエアリーディスクやジフラクションリングが見えて来ようという勢い」でしたが、③200倍クラス(バーローなし)と比べると全体的にコントラストが落ちる感じがしました。バーローがコントラストを落としているのでしょうか? しかし、その中でも1群2枚のDollond12mmは出色のコントラストを示しました。カサイST9mmも1群3枚のスタインハイルなのですが、コントラストが少し弱い感じ。

さて、この③④の200倍クラスが月・惑星で実用できるとすると口径8cmとしては十分及第点なわけですが、さらなる高倍率ではどうなるかを確かめて行きます。

⑤400倍クラス
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GOTO HM6mm、Vixen HM6mm、Carton Or6mm-A、Vixen NPL6mmです。
すべて6mmのアイピースですからAstroStreet5×バーローで400倍。口径8cmとしては結構な過剰倍率になります。
400倍
  GOTO HM6mm:◎     Vixen HM6mm:〇      Carton Or6mm-A:〇     Vixen NPL6mm:〇-

コリメート画像ではわかりにくいですが眼視で見た限りでは、はっきり差が出ています。五藤のHM6mmはコントラスト・解像度とも素晴らしいです。VixenのHM6mmも悪くはないのですが明らかにコントラストが劣ります。この辺は研磨の面艶とかそういう要素が出るのでしょうかね。しかし、「GOTOのHM6mm+5倍バーロー」を使うことで、400倍が月・惑星でも実用できれば、8cmの望遠鏡としてはかなりの革命と言えます。
あとアイピースが換わっても同じ位置にゴミが見えてるのですが、これはひょっとしてバーローのゴミが見えている?

最後に、「ダメ元」の(笑)⑥600倍クラス
「②120倍クラス」の4mmアイピースに5×バーローを組み合わせたものです。
600倍
    谷光学:△      Series500:〇        Datyson:△        賞月観星:〇

さすがに厳しいですね。しっかりと結像はしているのですが、どのアイピースもフレア状のものが画面全体、もしくはムラになった状態で視野にかかり、コントラストを落としています。

さて、これらのアイピースのうちいくつかで実際に月を見ることができました。
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もう、ずっと雨か曇りの天気なので、空がまだ青かろうが雲越しだろうが絶対に観望すべき貴重な機会(笑)。
追尾のため、架台をAZ-GTiに交換しています。

BelOMOルーペアイピース+5倍バーロー約80倍にて
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悪くなさそうですね! では拡大して、Pentax XO2.5mm(192倍)にて
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何だか、実視界が同じくらいな気が(笑)

Series500 PL10mm+5倍バーロー(240倍)
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これもいけますね。よく見たら画面中央やや左上に「月面X」がうっすらと。

GOTO HM9mm+5倍バーロー(267倍)
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よし、バックグラウンドもだんだん暗くなって良く見えるようになってきたぞ。暗くなっても月の輪郭に色がついたりはしないですね。さすが3枚玉アポ!

267倍もOKのようですので、勢いづいてGOTO HM9mm+5倍バーロー(400倍)
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ちゃんと結像しているし、まあ見えないことはないのですが、さすがに暗くてだいぶ見にくくなってきました。やはり8cmに400倍は結像以前に光量に無理がある感じですね。何となく300倍くらいまではいけそうでしょうか。

で、「ダメ元」の600倍。
Datyson PL4mm+5×バーロー(600倍)
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これは相当に暗くてピントもどこで合うのか今一つ不明です。しかし像が破綻してない雰囲気はありますね。もっと口径の大きな鏡筒なら600倍OKな気がしてきました。

さて、一番見やすかったのはやはり200倍クラス。
Pentax XO2.5mm(192倍)
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F6の光学系にバーローなしのアイピース直付けだと、周辺像がやや乱れますね。上の画像で言うと「月面V」ぐらいまではいいけど、「月面X」のあたりからの像質は落ちますね。

その点バーロー使用の方が全面フラットかも。
Series500 PL10mm+5倍バーロー(240倍)
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月面はこの240倍あたりがベストかな、と思いました。

これらを総合するとSV550鏡筒での月面観望には、常用200倍、最高300倍くらいの倍率が適する感じでしょうかね。


この後、雲が出て中断。土星や木星が昇ってくる時間帯に晴れることを期待して、いったん待機。
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非常に幸運なことに、午前1時頃から晴れ間が出て午前3時頃までの2時間程度、惑星を見ることができました(惑星のコリメート撮影は上手くできなかったので、以降、文章のみの表現となります)。

夜半以降のシーイングは良くも悪くもなく3/5くらいの感じだったでしょうか。
以下、それぞれの惑星の印象。

土星
Pentax XO2.5mm(192倍)と賞月観星 UWA4mm(120倍)を中心に観望

*カッシニの隙間は輪の一番広いところでは明らかだが、全周見えるかと言われるとはっきりしない
*本体模様の彩度が高く、灰色と黄色のツートンに見える
*極地帯も少し色が濃くなって見えるような気がする。
*200倍以上でもしっかり結像するが、暗くなるため模様などのコントラストがなくなり、かえって見えなくなる

木星
Pentax XO2.5mm(192倍)と賞月観星 UWA4mm(120倍)を中心に観望

*縞のコントラストが高く、濃淡や波打っている構造が見える
*フェストーンはわからない気がする
*大赤斑の部分だけが鮮やかなオレンジ色に見え、その他の部分の彩度も高いがこれは120倍の時のみ。192倍では一気に彩度が薄まる。
*一見して「白い円盤」に見える同クラスの反射とは違い「黄色い球体」に見える
*200倍以上でもしっかり結像するが、暗くなるため模様などのコントラストがなくなりかえって見えなくなる(土星と同じ)

火星

*低空でシーイングが悪く、面積体であることと赤い色が確認できたのみ


SV550で惑星を観望する場合は、常用倍率120倍、最高倍率200倍、という感じでしょうかね。とにかく120倍での木星の彩度が素晴らしく、これだけでずっと眺めていられるほどでした。特に大赤斑の鮮やかなオレンジ色だけは反射では表現されないものだと思います。
ただ、全体的に、8cmとは信じられない見え味! とかそういう事はなくて、普通に良く見える、って印象でした。木星の細かい模様の表現でいうと10㎝F10反射あたりには敵わないですね。

この鏡筒を「眼視のみ」の目的で購入する人はまずいないでしょう(そういう人はアポでももっとFの長いやつとか、大口径反射を志向して行くと思われます)。むしろ「写真撮影をメインとしながらも一応眼視もできたらいいなあ」、という層にピッタリ来る鏡筒だと思います。それにしても、この低価格の3枚玉アポ、かなりの部分を写真用途に振りながらも眼視性能も最低限おさえている、という絶妙のパッケージングを実現しているのは素晴らしいですね!

さて、6回にわたりSV550鏡筒のレビューを展開して参りましたが、わたくしの試用期日はあと3日ほどで終了ですので、一応「最終回」ということになろうかと思います。ここまでお付き合い下さった皆様、ありがとうございました!


***おまけ***

AZ-GTiでの惑星観望の裏技(?)

木星を見てた時、何だか視直径の半分ぐらいの範囲で踊りまくるなあ、何ちゅうシーイングや・・・と思ってて、しかしよく見ているとその動きと「ジ!・・・ジ!」というモーター音が同期しており、追尾が細かく行ったり来てる様子でした。頑張って追尾してくれているのだな、と思いつつもこれで模様が見えなくなってる気がして、苦肉の策で「追尾しない」を選択。視野内を流れて行く惑星をSynScanの手動コントロールやりながら日周運動を追うという風情を味わったことでした。