Mel Bartels の 13 inch F/3.0 Zip-Dob 34cmドブソニアンには、いろいろな先進の工夫がおこなわれています。
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そのひとつが、メニスカス・ミラーの採用です。
メニスカス・ミラーというと、一般的には、シュミカセの主鏡の杯型( 鏡の端に行くほど薄くなる )のものをご存知の方も多いと思いますが、Melのは下の図のオレンジの線のように裏と表に同じRがついていて、厚さが一定になる形のものです。

というのも、Melは鏡の厚さが直径の1/10程度の薄いミラー( 写真から推定すると3~4cm? 値は公開されてません )を使っており、

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( Mel のサイトより )

34cmでのF3の彫り込み量はたぶん1cm近くになり、鏡の中央が鏡周に比べて相当薄いことになってしまう、というのがメニスカス化のスタートだと思います、

しかし、メニスカス・ミラーのメリットはMel本人にも予測がつかない形であらわれたようです。
以下、主に裏面がフラットな通常の鏡と比較しての話です。

1 軽い
   まあ、これは想定内でしょうか

2 鏡の剛性が上がり、セルが3点支持でも歪まない
   当初予定していた9点支持は必要なく、3点支持で十分だったようです。それに対し、裏面フラットミラーは9点支持しないと歪んだとのこと

3 温度順応が早い
  外へ出して15分程度でOKとのこと。ミラーが薄いからということもあるでしょうね。

4 しかも温度順応の最中も放物面が歪まない
  これが一番すごいと思いますが、外へ出して数分で星像が安定するそうで、つまり鏡が冷えている最中も放物面の形が崩れずに保たれている、ということになります! まさに革命的!
( 鏡周が薄くなっている杯型のメニスカス・ミラーでは逆に温度順応に時間がかかる、という話ですので、こちらは温度順応中は歪んでいるんでしょうね。シュミカセは密閉式だから温度順応に時間がかかるって言われてたけど、案外、杯型のミラーが犯人かも・・・・ )

5 パイレックスの20分の1程度の値段の安いガラスでも作れる
 パイレックスはもう売ってなくなりましたが、鏡の温度の不均一による歪みを気にしなくてよいので安いガラスでも実用性があるそうです。ただし、鏡材をメニスカスに加工するコンピュータ制御の「 窯 」が必要で、そのコストをトータルでパイレックスと競争力がある、という表現でした。( この「 窯( computer controlled kilns )  」が良く分からないんですが・・・ )

などなど、まさにいいことづくめ! 次世代、F3前後のドブソニアンが主流になるとすると、ひょっとしたらメニスカス・ミラーも標準になるかもしれない、って気さえしてきます。
特に4のメリットは忙しい日本人にこそ最適なのではないでしょうか?

しかし、日本で厚みの一定したメニスカス・ミラーが登場する日は来るんでしょうかね・・・・


Melの34cmには他にも素晴らしいコンセプトが満載です。
機会がありましたらまた紹介します!