五藤光学6㎝F20「二吋半望遠鏡」です。
IMG_1144
ひたすらに長いですね(笑)。これもテレパックと同時代、1960年代の製品ですが、自分の持っている個体はおそらく屈折式赤道儀として出ていたものの「鏡筒のみ」と思われます。

(天体望遠鏡博物館の収蔵品にもあるようです)

対物はノンコート、2面と3面のRは同じで錫箔等ははさんでいません。
309b1fbc-s
前玉がどう見ても青板の色ですが詳細は不明。

fl=1200㎜なので非常に長い上に、テレパックと違い金属部品が多用されているためずっしりと重いです。接眼部から鏡筒の内部をのぞき込んでも光っている場箇所はなく、それなりにコストのかかった鏡筒だと思います。

この二吋半望遠鏡も非常によく見えるので、6㎝F15のテレパックと見え味を比較してみよう、というのが今回の企画です。はからずも「五藤光学対決」ということになります。
IMG_1150
まずは地上風景から見ますが、この二吋半もテレパックと同じく、対物レンズがハイゲンスに特化した設計? で、ルーペアイピース(スタインハイル3枚玉)や普通のプローセルではわずかに色収差が出ますね。五藤のハイゲンスやCZJの25-Hとの組み合わせでは非常に端正な見え味で、電柱の碍子に反射した太陽光のエアリーディスクやジフラクションリングも確認できました。

ただ、テレパックと比較するとわずかに解像度が落ちます。テレパックの方はエッジがカリッと立つのが少し軟調な描写になる感じですね。さらにテレパックはピントの山がはっきりしているのですが、二吋半では少しルーズな感じです。

たまたま電線にムクドリがとまっていたのをテレパックでコリメート撮影したのを載せておきますね。
IMG_E1159
この後飛び立ってしまい、二吋半の方では写せませんでしたが、羽毛の毛羽立ちまではっきりわかりました。
はっきり言って、地上風景では明らかにテレパックの方が解像度が高かったです。しかし、問題は天体を見た時どうなるか。特に自分にとっての最重要事項は「月面キラキラ」がどのように見えるかです。

とりあえず今日は月齢4なので月もまだ「キラキラモード」にはなってないですね。その上、天気も薄曇りですが、一応見てみます。
IMG_1204-2
あ、今日は月と木星が接近してるんですね。

まず月面ですが、やはり二吋半はテレパックと比べるとシャープネスが一段階は落ちます。
h25
(こちらは、テレパックに五藤H-25㎜38倍によるコリメート画像)

テレパックでは荒々しくそそりたって見える山脈の部分が二吋半ではなだらかな感じになってしまいますし、黒い点のような小さなクレーターも二吋半では数が減る気がします。

ちなみにテレパックも二吋半もアイピースがハイゲンスの時は月の輪郭に色は出ないのですが、プローセル等ではわずかに色が出てしまうのも地上風景の時と同様でした。

続いて木星ですが、テレパックでは、2本の太い縞(SEB、NEB)の南側にある細い縞(STB)がはっきりわかるのですが、二吋半では、ある・・・? かもしれない? くらいに判然としない状態。ちなみに大赤斑はこちらを向いてなかったので見え方の違いは確認できてません。

というわけで、少なくとも当方の所有する個体では6㎝F20の二吋半望遠鏡より6㎝F15のテレパックの方がよく見える、という結果に思えました。F20に光学的なアドバンテージがないとなると重くてかさばる二吋半望遠鏡の立場が非常に微妙なものとなってしまいますが、とりあえず個体差もあるかもしれないので、今日の結果だけで鏡筒の優劣までには言及できないと思います。月面が「キラキラモード」になるのを待ってさらに比較検証を進めたいところです。ただ、二吋半には少し分の悪い勝負になりそうな予感・・・

***おまけ***

ジャンク箱の片隅に、メーカー不明のこういうハイゲンスが転がっていたのですが・・・
IMG_1217
これをテレパックに取り付けたところ、非常にシャープな結像を示しました。テレパックの対物レンズがハイゲンス前提の設計であるかも知れない証拠がまたひとつ確認できたかもしれません。

やはりアクロマートとハイゲンスの組み合わせは最高ですね!