前回、正立プリズムのダハの稜線を回避して解像度を上げるための光軸シフトをおこない、それなりの結果を得ていましたが

良像範囲が狭いのと、そのままでは剛性が弱く、ちょっとした衝撃で光軸がずれてしまうのが不満で、ここしばらく、手直しのモデリング → 3D印刷 → 問題発生 →手直し、を繰り返しておりました。
IMG_2126
累々たるボツ造形の数々です(笑)。

しかし、各部の干渉、バックフォーカス、光束のケラれによるイメージサークル限定、等のさまざまな問題を乗り越え、ついに最終形態が完成! 結果として、真ん中にMAKSY60の正立プリズムをはさんだ2ピースの造形となっております。
IMG_2118
バレルとスリーブをシフトさせた部品が2つあるという形ですが、組み上げるとこうなります。
IMG_2120
ドローチューブ側はスリ割りになっていて、これをドローチューブ内に差し込みます。
IMG_2122
スリ割りはネジで突っ張って内側から広げることで固定します。
IMG_2127
プリズムとアイピースがだいぶ離れていますが、これを近づけてスリーブ内に収まるような位置に置くとプリズム部分で視野の片側がケラれてしまいましたので、プリズムとアイピースの距離を取ることでそれを防ぎました。ドローチューブの繰り出しはギリギリですが、これによりCZJの25-H、36倍の実視界1.3°でもケラれのない視野が実現しています。
IMG_2129
光軸のシフト量は7㎜、後はこれでダハの稜線の影響が実用上問題ない良像範囲がどれくらいになるか、ですね。
IMG_1865
とりあえず地上の風景では問題なさそうです。やはり裏像にならない正立は気持ちいいですね。
IMG_1880-2
五藤光学H7㎜129倍で碍子のディフラクションリングも良く見えました。

さて、問題の月面です。五藤光学H25㎜36倍。
IMG_E1972
おお、よさそうですね!
H25㎜36倍の実視界は約1.1°、7㎜のシフトによって生まれる「完全にダハの稜線の影響を受けない範囲」は計算上ですと約0.13°に過ぎませんが、月を視野内でいろいろ動かして確かめると、視野の50%くらい、実視界で言うと0.5~0.6°? は実用上シャープな結像に思えました(もちろんこれはあくまで主観的なもので数値的な裏付けはありません)。と言うことは視野中心に月を置くと全景が(主観的な実用上の)良像範囲にすっぽり収まることになります。初期の目標達成です!

さらにH7㎜で129倍に拡大しますと実視界は約0.3°となります。
IMG_E1971-2
この倍率では、視野の半分弱がダハの稜線を回避した光束で占められますが、9割方はシャープに見えました! これなら惑星用としてはもう完璧ですね!
これは大成功と言えるのではないでしょうか!?

今回、いろいろな部分の最適化に時間がかかりましたが、最終的には偏心スリーブ×2という非常にシンプルな形で一般的な正立プリズムのカスタマイズができました。高倍率が今一つスッキリしないという正立プリズムの弱点を克服しつつ最低限のイメージサークルを確保、それによりテレパック60-ALを正立90°対空にできたので期待通りの結果が得られたわけです。玉砕が多いわたくしの企画の中では成果が出た部類と言えましょう。

あえて言おう、プアマンズEZPは成った、と!(笑)

と言うか、こういう正立プリズムのダハ回避アダプター、どっかの販売店で出してくだされば便利なのじゃないかと思うのですが・・・?