2023年10月27~29日にかけて行われた小海星フェスに行ってきました。まずは斎藤さんはじめ関係者の方々のご尽力でこのイベントが開催されたことに深く感謝したいと思います。

さて、当方在住の高知から小海までは片道約730㎞、今回ボランティアとして登録していて27日(金)の13:00には会場設営のお手伝いをすることになっているので前日の26日(木)14:30ごろに出発しました。休憩をはさみながら9時間後の23:30ごろには長野県の諏訪湖SAに到着し、車中泊。翌朝9時出発、12時に会場のガトーキングダム小海に到着しています(車を運転している時間は合計10時間くらいだったでしょうか)。

一回メイン会場の「エーデルワイス」方面に車で向かいましたが、ホテル横のトンネル(?)内でホテルの車が搬入作業していて通れず、下の地図の白で〇をつけた部分「第二駐車場」まで戻ります。
駐車予定場所
IMG_6125
ここで井戸端さんと遭遇、一緒に徒歩でメイン会場方面に向かいました。

その途中、ホテル宿泊者の駐車場でutoさんが100円ショップ虫メガネ望遠鏡のデモをしておられたので同席していたNickさん、utoさん長男のTaito君、も含めしばし歓談。星まつりではこういった旧知の方々との交流も大きな目的の一つとなります。
IMG_6130
100円ショップ望遠鏡には同じくutoさんの製作された5㎝トラス反射、2.5㎝反射(ヘール望遠鏡ミニチュア)などが同架され「望遠鏡ツリー」という様相。
IMG_6133
(この望遠鏡ツリーは片手で持てるほど軽量です)
ケーブルカー乗り場の横を過ぎ、ホテルから坂を下ったところにあるメイン会場に向かいます。
IMG_6134
金曜日はケーブルカーが動いてなかったのですが、翌土曜日は稼働するとの事でした。

13時からはメイン会場であるエーデルワイス内の机を並び替えて出展者ブースを作りますが、その作業前に、すでにミザールさんや国際光器さんは見えられていました。

奥の望遠鏡があるところがミザールさん。
IMG_6136
国際光器さんはすでに営業!
IMG_6138
「星もと」でもそうでしたが国際光器さんはどこよりも早く設営されますね。さらに星まつりでは最終日を待たずして切り上げ撤収する企業ブースが多いのですが、国際光器さんは最後の最後まで営業しておられます。この姿勢は大いに評価したいですね!

さて、作業開始。エーデルワイスの中央に何列か机を集め、そのまわりを企業ブースが囲むように机を配して行きます。
IMG_6143
そのままではレイアウト図どおりにならなかったので、大きな机と小さな机を組み合わせることでスペースを調整するなど、臨機応変な現場対応もあって14時ごろに何とか並べ終わりました。机も椅子もけっこう重く作業の指示もない一種のカオスで始まった作業の序盤は不安でしたが(笑)自分を含めボランティア・シルバー人材の方々などでかなり従事する人数が多く(20人以上くらい?)、個々の積極性も高いため何とかなりました(しかしシルバー人材の利用というのは、こういった地域へのかかわり方もあるんだな、と勉強になりました)。

ただ、なまじっかうまくいったからと言って、このような作業者のモチベーションに依存した「結果オーライ方式」が今後踏襲されるのはイベントの持続性を考えると大きな問題で、来年以降も室内でやるのなら絶対に作業の指示をする人が必要だと思います。一例として、事前に「準備の際には机やイスをクロスの上で引きずらないよう手で持って移動してください」と聞いていたので自分はそうやってましたが、かなりの人が引きずってました。何人かには注意しましたけど、皆さん御存知なくピンと来てなかったようなので途中から言わないようにしました。しかしこれでクロスが痛んだりすると来年貸してくれなくなる可能性があるので、借りる立場としては作業方法の管理も必要と思います。さらにその役割まで斎藤さんがやるのは無理なので、主催側で会場設営の担当責任者を設けるべきかと。

さて作業を終えたばかりですが、自分は14時30分に神奈川のTUMさんと「第二駐車場」で待ち合わせをしているので、急いでそちらに戻ります。

メイン会場から第二駐車場までは600mくらいある上に昇り坂のため、相当息が上がりながら到着(笑)。今回、TUMさんからは15㎝F15アクロマート屈折フォールディッド式の自作機を譲っていただくことになっているのです!
IMG_6209
BACKYARDプロダクツ製のFRP鏡筒が使われ一見反射望遠鏡のような外見ですが、
15cmF15光路図
2枚の平面鏡を使って光路を4の字に折り返したフォールディッド式となっており、15㎝F15としては非常に短い鏡筒を実現しています。鏡筒が短いと振動やたわみの面でも有利ですしね。


15㎝対物レンズは iSTARr-opticalの15cmF15アクロマートですが、見え味の面から2回交換し、3回目で高精度の個体を得られたようです。このレンズではありませんが同社のサイトでは測定結果も公開されています。


さらに第一反射鏡はAntares Opticsの4インチ1/20λの斜鏡、第2鏡はNinja320用ロシア鏡80㎜斜鏡と、光学エレメンツには一切の妥協がなくTUMさん渾身の一作とも言える唯一無二の自作機ですが、当方が長焦点アクロマートに特に思い入れを持っている点を見込んでいただき、託される運びになりました。

架台はiOptronのiEQ45Proを経緯台モードで使用。
IMG_6388
この画像でもわかるように垂直軸と接眼部が同軸になっているため鏡筒の仰角が変わっても接眼部の高さは一定になり、子供さんや車いすの方も観望しやすい仕様です。

これは経緯台の中でも「山崎式」という方式で、これは日本人として最初に彗星を発見し、日本に最初にガラス製反射鏡の研磨の方法を伝えた山崎正光氏がコメットシーカーの架台として使っていたことからこの名があります。氏が20㎝ニュートン式反射で使用されていたオリジナルでは
(写真)山崎正光氏と8吋(20cm)彗星捜索機
https://www.domenavi.com/ippin/2022/31_12.html より転載させていただきました)
重量バランスのため筒先にカウンターウエイトが必要となっていました。しかし、TUMさんが製作されたようなフォールディッド屈折の場合、それなりの重量物である対物レンズが筒先にあるためバランス調整のウエイトが最小限で済みます。はからずも山崎式とフォールディッド屈折の相性の良さが証明される形となりました。

さて、TUMさんからシステム一式の組み立てや使用方法にレクチャーを受け、夜はにはいよいよ観望です。この日は曇りがちなものの時折晴れ間があり、土星、月、木星などを楽しむことができました。
IMG_6196-2
その見え方ですが、シーイングはあまり良くなかったものの、特に惑星面のコントラストが素晴らしく、さらに木星の大赤斑がオレンジ色、縞模様はベージュとグレーと言った具合に色表現も豊かで、以前原村で見せてもらったTOA150による木星像を彷彿と・・・
いや、違うな。厳密には3枚玉アポとは違った、アクロマートF15だけの世界がある
そんな感じがしました。

アイピースですが、F15なので普通のオルソやプローセルでもとてもよく見えます。しかし一番解像度やコントラストに優れていたのはNikonのルーペアイピースと組み合わせた時で、TUMさんも「色が出ない!」と驚いておられたほど。ただ、倍率が70倍程度なので今後はテレセンバローとの組み合わせで高倍率での実用性も探っていきたいところです。

個人的に残念だったのは6㎝F15アクロマートのように「ハイゲンスが最高の相性」って感じでもなかったことですね。しかしこれについては、今後各種ハイゲンスを試した結果により検証することになると思います。

さらに、アポダイジングマスクの効果も大きかったです。
IMG_6461
アポダイジング・マスクとは上の画像のように網を同心円状に配したもので、これを筒先に置くと惑星像の周りに放射状に虹色の光条が出ますが(だから月面ではコントラストを落とすだけで使えない)惑星表面のコントラスト・彩度・シーイングすべてを一段階向上させるというアイテムです。
なぜそうなるかは自分も良くわかってませんが(笑)、屈折のような中央遮蔽のない光学系では特に効果が大きいようです。詳しくは下のリンクにて。

作用原理はともかく、惑星観望ではもはや「付けないと損」と言い切ってしまえるぐらいこの15㎝F15では明らかな効果がありました。当日は木星の大赤斑が真ん中に来ていて、シーイングが止まった瞬間にそれを囲む詳細な模様も見え、まるで「一つ目小僧」のような景観になっていました(笑)。

というわけで、時折訪れる晴れ間に何やかやで盛り上がりながら0時過ぎまで観望。
IMG_6199-2
この日はメインブース会場とはかなり距離のある第二駐車場での展開でしたので、TUMさん、すぷーんさんminoruさんカンシさんなど一部の限られた方々としか体験が共有できなかったのが残念でした(今考えたら到着直後から第二星空サイトに車を置いて望遠鏡を設置したらよかったのですが、事前情報では「望遠鏡を一般参加者に見せている時間帯以外はここに車を置かないように。夜が明けたらすぐに車を出すこと」とありましたので、昼間は車を置いちゃいけないんだなと思ってそれを守ってました)。

さて、明日の土曜日は15㎝F15をいったん分解して車載し、第二駐車場からホテル横の第二星空サイトに移動して再度組み立て、一般参加者向けの観望を行うことにします。

小海星フェスの公式サイトより転載)
・・・この望遠鏡で惑星を見たらみんなきっとビックリするぞ?

いやがおうにも期待は高まりますが、一般の方が初めて望遠鏡で月面や惑星をご覧になった時の感動は一期一会で何物にも代えがたく、こちらのモチベーションも相当上がると思われとても楽しみです!

・・・続く!
IMG_6158
(観望中、月齢14の月を横切る飛行機雲)