10月末にTUMさんから15㎝F15フォールディッド鏡筒を譲り受けたのですが、iOptron、iEQ45赤道儀(経緯台モード)のセッティングに30~40分かかるため、ほとんど稼働できていませんでした。光学系の性格上、自動導入でDSO観望するというより「月・惑星スペシャル」という側面が大きいため、セッティングの簡便な架台にスイッチするほうがいいかなと思い、ドブソニアン式のフリーストップ架台を製作することにしました。

12㎜厚の「塗装コンパネ」で架台のロッカーボックス部分を作ります。
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15㎝F15は垂直軸と接眼部が同軸になっている「山崎式」なので、このような縦長のロッカーボックスが必要になるのです。
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接眼部側は自転車のリムをテフロン2点支持、反対側はボルト1点の計3点支持にしており、鏡筒をのせるとこうなります。
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「塗装コンパネ」は12㎜厚ですが、実際に星を見てみるとかなりフニャフニャで、何より振動がまったく収まりません。
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これではいかんなあということで、U字型の板で補強したりX(旧Twitter)上でutoさんからいただいたアドバイスを実行したりしつつ

ロッカーボックス部分の剛性をアップ!
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その他にも細かい手直しを繰り返し、現状はこのような形になっています。
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右にあるのは酒居さん製作の汎用赤道儀台で、これに載せることで高倍率観望には必須となる日周運動の追尾ができます(そもそもこの赤道儀台を使うことでフリーストップ架台でも惑星の高倍率観望ができると考えたのが製作のきっかけ)。さらにシンプルなコントローラーにて倍速・停止も可能なので実質的な「赤経微動」として使用可能!
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水平回転は中華テーブル用のφ18inchベアリングでおこないますが、動きが軽すぎてピント合わせ等でも動いてしまうほどだったので軍手を4枚はさんで適当なフリクションを持たせました。
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この赤道儀台にロッカーボックス部分を載せ蝶ナットで固定。
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さらに鏡筒
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最後にU字型の板をM6ネジ4点で取り付けロッカーボックスの開放部分を閉じると全体の剛性が劇的にアップします。
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これで架台部分のセッティング終了! 剛性や振動収束の点でも実用性のある架台となっています。

ファインダー取り付け部分も汎用型ですがとりあえずクイックファインダーを使用。
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筒先ウエイトの部分はサブスコープで代用可能にしてあります。
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長焦点アクロマートなのでアイピースは当然ハイゲンスを採用!(笑)
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多頭式のターレットで倍率の違うアイピースを同焦点気味につけておくととても便利ですね。
バーローをつければ双眼装置運用もできなくはないです。
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まあ、これはあまり使わないかな。

最後に取り付けるU字型の板は、水平から垂直まで仰角を変えても鏡筒と干渉しないようになっています。
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望遠鏡一式を使用可能な状態にセッティングするまでの時間は約5分。普段6㎝屈折を使う時は30秒でセッティング終了しているので5分でも長く感じてしまうのですが(笑)、それでも稼働率は相当上がりました。
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赤道儀台による追尾で惑星が視野から外れないので高倍率観望でもまったくストレスはありません。また山崎式なので仰角によって接眼部の高さが変わらないのも楽ですね。

最終的な重量は

鏡筒部15.2kg (鏡筒単体:12.6kg ターレット+接眼4個:0.4kg 筒先ウエイト:2.2kg)
架台部12.2kg (ロッカーボックス:10.8kg 開放部補強版:1.4kg)
赤道儀台8.6kg
総重量36.0㎏

となります。15㎝F15屈折としてはかなり軽量・コンパクトと言えるのではないでしょうか?

というわけで、世が世なら公共天文台のドームくらいでしか運用できなかったアマチュアにとっては特殊なスペックの望遠鏡を自宅で簡便に使うことが可能になったわけですが、それを実現できた要素としては

1 フォールディッド光路によるコンパクトな鏡筒

2 分解・組み立て部分が少なく初期設定不要なフリーストップ経緯台

3 赤道儀台による高精度追尾(詳しくは省きますがピリオディックモーションやパルス振動が実用上皆無)


の3つがあげられると思います。

率直に言って今まで所有した望遠鏡の中で一番惑星が良く見えるので、条件の良い日には自宅での観望を数多く楽しんでいきたいですね! 欲を言えば高倍率で視野中央に惑星を入れる動作を速くするための微動装置あたりも追加したいかな。

最後にこのシステムの3D画像です(平行法でお楽しみください)。
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ふう、しかしこんな木の箱なんかチョイチョイでつくってやるぜ、って思って作り始めたのだけど、ここまでできるのに二ヵ月もかかちまったぜい・・・(笑)